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愛の歌  作者: Dust
5章
140/228

137話

「ダゴン様!あれ何!?どうにかなる!?」

「トワ!残ってなさい!」

異形の元へ向かうダゴンにトワは必死で追いかける。

「やだ!あれを見てるだけだなんて出来ないもん!」

「・・・!よく聞きなさい、トワ。」

ダゴンはその足を止めて追い付いたトワの肩を掴む。

「私達は人によって在り方を定められ、信仰により人を超える力を得た化け物。あなたは私を信じて待っていて。そうすればそれは私の力になるから。」

「・・・でも。でも・・・人が死んでいく。住む場所が失われていく。・・・私だって・・・私・・・どうして魔力を持ってないんだろう・・・こんな大事な時に・・・見てるだけなんて・・・。」

「トワ・・・泣かないで。あなたの光を私に預けて。あなたの意志を私が背負うから。」

ダゴンは白い羽を生やす。

「この形態で私は戦います。邪神の形態ではなく女神として。あなた達の力をも原動力に!」

飛び去っていくダゴンに膝をついたままトワは見送った。

「ダゴン様・・・ごめんなさい。それでも私は私だから・・・。」

ふらふらと立ち上がると敵意と覚悟を目に、天使の元へトワも走っていく。


「くっ・・・このっ・・・!」

群がる異形共に漣は炎になりながらすり抜けていく。

が、あまりの数に抜け出した先でまた物量に押し流される。

(倒していくにも・・・数が多い・・・!一体にかまけてる間に他に捕まるし・・・でもこのままでも本体の元には辿り着けない・・・!どうすれば・・・。)

「こっち!」

上空からの声に漣は空を見る。

必死で気が付かなかったが大きな木がそびえ立っていた。

漣は炎となって一気に上まで上がり、人型になった時に何とか枝を掴んだ。

掴んだまま木をかけ登るように足を持ち上げていき、枝の上へ。


「ふぅ、高いねこの木。」

「セコイアの木だよ。それより、どうやって足止めしようか。」

木を出したシャロンは天使本体を見て、唸る。

下では異形たちが木に殴打を繰り広げていた。

「あの指揮してる奴は叩き潰さなきゃ被害は増える一方かな。」

「本体も止めなきゃだし・・・人手を呼んで・・・。」

漣はふと舜ならどうするだろうかと考える。

「まずは冷静に情報を集めて、それを全体に周知させよう。シャロンさん、あれについて何か知ってそうだけど、教えて貰っていい?」

「あれは・・・私達同期で前の戦で戦死したジャメールって人と契約してた天使だよ。名前は・・・えっと・・・。ジャメールと仲良かった人に聞かないと分からないかも。」

「誰が仲良かったの?」


シャロンは考え込む。

「・・・リーグはもう居ないし・・・除隊した子は今何してるか・・・。・・・リーンなら?」

「あの人って女の子にしか興味無いんだと思ってた。」

「性欲はね。でも一番他人想いだし・・・ちょっとかけてみる!」

シャロンはデバイスを取り出す。

「もしもし!?シャロン大丈夫なの!?今サナスさんとそっち向かってるんだけど何か必要な事があった!?」

「うん!ねぇ、リーン、ジャメールの天使の名前覚えてる?」

「え!?えっと確か・・・何とかエル・・・いや天使だいたい何とかエルだよね。えっと・・・えっと・・・サマエル!そう、サマエル!」

リーンは何とか思い出し、その天使の名前を告げた。


「それで名前知ってどうするの!?」

「え・・・っと・・・。」

シャロンは漣の方を見た。

「誰か詳しい人が居ないか探してみよう。・・・ん?」

天使・サマエルはその動きを止めていた。

目の前には巨大な、羽を生やした女神が相対している。

「ダゴン様・・・そうだ、ダゴン様なら知ってるかも!」

轟音。異形の叫びと共に放たれる衝撃波とダゴンの両手から放たれる水の波動が打ち消し合う。

「・・・あの中に入って、聞くの?」

「・・・他の手も考えよう。手はあればあるほどいいはず。あの天使はなんで人間と敵対しているのだろう。」

「ジャメールが死んで・・・あの天使が本来彼とやりたかった事が出来なくなった?」


漣はサマエルと異形を見比べる。

「・・・腕だ。・・・腕に何かある。」

サマエルの胴体から生えてる大量の腕と、腕の位置がおかしい異形達。

「おっ、良い勘してるねぇ。」

シャロンのものとも違う声に漣は槍を出して振り向いた。

「おっとっと、私私。ムイムイだよ。今イームと帰ってきたところだったんだけど雰囲気が変だったから私だけ先に飛んできたって訳。」

下では異形が遠くからの狙撃で一体吹き飛んだ。

「イームも来たね。とりあえず安全圏から数を減らしてもらおう・・・多すぎて意味あるかは分からないけど。それより・・・。」

ムイムイは天使の胴体を凝視する。

「生えてるのは人の腕なんだね。他の動物の腕はなし。・・・なら、掴むこと、持ち運ぶこと辺りかな。」


サマエルとダゴンの争いはダゴンが押されていた。

大量の腕から放たれる魔弾の物量を全て防ぎ切れず、そしてその被弾がダゴンから仕掛けるタイミングを失わさせる。

「・・・くっ。」

血だらけで息も絶え絶えになりながらそれでも尚、人類の為に立ちはだかる。

そんなサマエルに慈悲もなく、天使の口に魔力が集い始める。

(避ける訳には・・・しかし受け止めるのも・・・!)

背後にある街並みを破壊させない為にもダゴンはその攻撃を何とか捌こうと頭を回す。

「・・・凍りなさい。」

その瞬間、天使の顔が凍りついた。

すぐに割られたものの、攻撃を阻止するには十分な威力の氷。


「助かりました、雪乃さん。」

「いえ・・・あの人の留守の間に好き放題されたくないだけなので。」

雪乃がダゴンの横にある家の屋根の上から剣を構える。

「これだけの相手、無策で挑むべきではないでしょうね。足止めは私が変わります、貴女は何かこの化け物についての情報を。」

「・・・助かります。今のところ分かるのは・・・こいつの原動力は信仰ではなく恐怖かと。恐らく・・・悪魔、・・・せめて名前が分かれば・・・。」

雪乃は六角形の氷の盾をいくつも出してその腕からの魔力を止めにかかる。

「止められて10分ってところですので、どうかそこまでに!」


「・・・今だ。今、ダゴン様のところまで行かないと。」

「・・・いいよ、私が護衛してあげる。」

ムイムイが剣を出す。

「でもこの数。」

「平気平気。今のところどっちにも魂は感じられない。なら・・・私の魔力がよく効く筈だから。道くらいなら作れるよ。」

「私も・・・植物で足止めなら出来るから・・・急ごう!」

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