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愛の歌  作者: Dust
5章
138/229

135話

「あの馬鹿・・・。奴に思考の隙を与えるなと伝えたのに。」

上から魔法陣をいくつもふよふよ動かしながら浮かせて、戦いに割って入れる可能性のあるムスルスの動きを刺すように見てるフーロが呟く。

(ヘンっ、俺の事を馬鹿にしてるなら引っかかるだろ。思慮深いらしいがドツボにハマってる間に潰させてもらうぜ!)

また、双剣でシュネールが素早く斬りかかる。

その剣を同じく舜は受け止め―先程よりも早く後ろへ。

(そうだよな!お前に与えられた知識は腕に遅れて連動する魔力の刃が襲いかかること!それを前提に次の思慮に移る!)

舜が後ろへ飛び跳ねた場所へ向かって、シュネールは魔力の刃を真っ直ぐ突き刺すように飛ばした。

(それこそがドツボ!この魔力は別に必ず連動しなくちゃいけないわけでも、1本ずつしか出せない訳でも無い!)

仮に舜がなんとか反応できても2本目でぶった斬ってやらんとシュネールは準備をする。


舜は―分かってましたよと言わんばかりにその刃を胸元に置いた剣で受け止めた。

我が膝元で永眠せよメルセゲル・イルシャード!」

(しまっ!いやこれが止めるのは音が鳴る行為だけ!)

「あの馬鹿・・・!だから言ったのに!」

シュネールは準備したもう一本の魔力で斬りかかり、フーロは魔法陣の1個からレーザーを放つ。

全てを壊すもの(ラグナロク)!」

体勢を低くした舜は左手で正面のレーザーを、右手で上からの剣に触れ、消した。

そして、勢いそのまま右足でシュネールを蹴飛ばした。

(くっ・・・!肋が3本持ってかれた・・・!パワーまであるとはこの化け物め・・・!)

シュネールは忌まわしげに舜を見つめる。


「さっきの、結局は身体である程度隠して、こちらに読みにくくした魔力の動きと合わせて武器で攻めてるだけ。そう考えたらじゃあ純粋に魔力使うのと同じ使い方出来るなってところまでは読める。そして、人と同じ戦い方だなってところまで。さて問題、今俺はどうしてそこまで推測が出来たことを教えてあげたでしょうか。」

「・・・っ。しゃーねぇ、本気で行くか。あんたが何企んでようがすり潰してやんよ!」

シュネールの魔力が高まっていく。

「じゃあこっちも・・・纏魔―」

「はーい!そこまでー!」

「「!?」」

気配もなく間に飛び降りてきた女に舜はすぐさま本能で殺さねばと考える。

一瞬で異常な程にまで増大した殺意に対してその女―Y9は飄々としていた。


「ごめんね!戦うつもりはまだないしこの子達を失うつもりもないからさ。」

「・・・Y9さん!?」

反応したのはシィラであった。

「お、シィラたんお久ー!」

「舜お兄様!駄目です!その人とまともに戦ってはいけません!Y9さんも戦うつもりがないと言ってますしどうか・・・!」

シィラに止められる前から、本能で殺そうとしてたはずの舜の動きは止まっていた。

Y9の視線はあちこち動き回っている―それなのに舜は自分の目を真っ直ぐ射止められてる気がしている。


「あんにゃろ!俺とやり合う時はそこまで殺意出してなかったのに!舐めてやがったんだ!俺を!」

「そりゃまあシュネールたんが敢えて向こうに知恵勝負挑んたりするからだよ。最初から有無も言わさず殺すつもりで能力を使ってたら、向こうもあの殺気で殺し合いしてた。・・・そして、Y9ちゃんが乱入する前にどっちかが死んでただろうね。」

Y9に雑に小脇に抱えられ、暴れているシュネールが憤慨する。

「当然死んでたのは向こうだ!そうっすよね!」

「うーん・・・7割向こうの勝ちかな・・・いや、6割・・・うーん・・・。」

「なんで向こうのが勝率高いんすか!!!」

Y9はふっと舜を見つめた。


「高いよ。だって今わちゃわちゃしてる間も、Y9ちゃんが舜たんの事を観察してた事に気が付いてる。殺そうと思いながらも今攻撃をする危険性についても、ね。なるほど、殺し合いの天才って評価を聞いた時は変なのーって思ってたんだ。殺し"合い"なのに自分は殺されないなんてそれは本当に殺し合いの才能なの?殺しじゃなく?って。でも。」

Y9はその目を細め、そして舜の殺意と同等の威圧感を放った。

「こりゃ殺し合いの天才なわけだ。自分が不利な殺し合いになる動きは本能でしない。自分が不利になる条件は本能で察知する。殺し合いの前にアドバンテージを取れる、まさに天からの授かり物。だから殺し"合い"ながら相手だけが死んでいく。殺しの才能じゃなく、殺し合いでのみの才能。ずるいなぁそれ。」


Y9は無邪気に笑った。

麗しいそれは今の状況とあまりにかけ離れすぎて恐怖すら覚えさせる。

「・・・お前は?」

「ん?あ、こっちにも興味持ってもらえる?ふふっ、嬉しいな。私はY9。終点に到達出来ぬ、1足りぬ者。覚えておいてねん!」

そしてY9はシュネールを抱えたままビュンと飛んで消えていった。

どさくさに紛れてフーロの気配も消えている。

舜はまだ剣を握ったまま暫く立っていたが、ようやく警戒を解いて汗を拭いた。


「あ、あの!何とか狙い打とうって思ってたんですけど、あまりにも速くて的が絞れないし絞ろうと思ったら対応出来てる舜兄の邪魔になるかもって思ってたら何も出来なくて・・・ごめんなさい。」

「いや、いいよ。あの男もなんやかんやで強かったし。上のもちゃんと強かった。・・・けど、最後のY9が1番やばかった。」

愛花は疲れ果てた表情をしながらも聞く。

「そんなに・・・違ったんですか?その・・・私にはその2人も結構迫れてたように思えたというか・・・。」

「魔力だけならね。むしろ同等位はいけてたかもしれない。だけど・・・なんて言えばいいんだろう・・・。ちゃんと・・・強くなる理由があっての強さだったというか・・・いや・・・なんだ・・・?あの2人も強さだけなら同格かもだけど別の強さがあるというか?・・・いや・・・分かんなくなってきた・・・。」


「・・・とりあえず、目的は果たしたって事で帰らない?3人ヤバいのが居たけれどアジト捨てたし居座るかは不明!でさ。一時的に捕虜にしてた人もなんか名前聞いてようやくピンと来てたっぽいしそもそも残党組じゃなさそうだよね。」

ムスルスが2人にそう声をかける。

「賛成!2度も殺し合いしようとするとこんなに疲れるんだなぁって。・・・まだまだだな私。」

「そんなもんまだまだで構わないと思いますよ愛花姉様。」

シィラも寄り、4人でアウナリトへ歩き始める。

こうして一時アウナリトの抱える問題となっていたローグ残党組の件は解決となったのであった。

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