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愛の歌  作者: Dust
5章
137/228

134話

「紫電―」

見えぬ速度で突っ込んできた何かに遅れて衝突音が鳴り響く。

土塊と砂煙が跳ね上がる中、そこには突っ込んできた人影しか居ない。

「へぇ!消えた!」

「一閃!」

先程までそこに居たはずの舜が、逆にその人影に恐ろしい速度で背後から剣を突き出した。

「なるほどね、聞いてた通りあんた強ぇや。」

更にその舜の背後からシュネールは話しかけた。

「俺程じゃねぇだろうけどそれなりに速い相手ともやり合ってきたわけね、その身のこなし。」

「あんたより速くて強い短剣使いに教わって、あんたより厄介な野生の勘持ちのやつと殺し合いしてきた。さっきの技もあんたより頭が切れる人の技だよ。」

舜は淡々と振り返りながら言い返す。


「はっ、でまかせでビビんねぇっすよ!このシュネール様より速くて強い奴などいるわけが無い!なぜなら俺は四凶の座にいずれ座る男!」

「みんな四凶の座を狙ってるけどセール中なの?身の程に合うものを買わないと維持費で痛い目見るかもよ。」

2人の視線がぶつかり合う。

「・・・シュネール?」

「おや、情けない降将さんが知ってるんですか?シィラ達に情報を流せばその後の待遇有利になるかもですが。」

シィラがシュネールの方を警戒しながら、ローグ残党の腹心だった男に近付く。

「確か・・・カオスの―。」

「シィラ!」

ムスルスはシィラへ全力で駆け寄り、シュネールがいる方向とは違う方向を向きながら抱き寄せる。

次の瞬間、大量のレーザーが3人の元へ降り注いだ。


「・・・痛ぅ、全部は消せなかったか。21歳は無事?」

レーザーはムスルスに数発かすり、そこから血が垂れ落ちていた。

「シィラは・・・無事です。シィラは・・・。」

ムスルスが剣で庇えたのはシィラだけだった。

男は穴だらけで地に倒れ伏している。

「・・・見ない方がいい。それより警戒してなさい。」

「ええ、シィラの事は気にしないでください。自分の身は自分で守ってみせます。」

その声を聞いて舜はその方向の上を見た。

「・・・上か。」

「そんなわざとらしく隙を作っても次は仕掛けてやんないっての。」

「馬鹿そうだから引っかかってくれると思ってた。」

ぴくりとシュネールの眉が動く。


「・・・頭もいいから引っかかんないの。分かる?俺の凄さが。」

「分からないな・・・速さが売りなのは分かったけど残党組が全滅してから来てるようじゃ四凶の座を買うには足りてないし。むしろ売りにできないほど遅いんじゃない?」

「よーし、そこに直れ!直々にぶち飛ばして・・・わふっ!?」

シュネールの足下にレーザーが一発飛んでくる。

「ごめんごめんフーロちゃん、ちゃんと冷静さを保ったままやるからさ!」

「あ、上にいるのフーロって名前なんだ。わざわざ教えてくれてどうも。」

「うぐっ・・・。」

シュネールは一瞬バツの悪そうな顔をしたが、開き直る。

開き直るなと言わんばかりに足下にレーザーが飛んだ。

「うわっ、ごめんってフーロちゃん!でも名前だけでバレるメンツもうここにいないわけだし!」


舜はその様子を眺めながら石を1つ取り出した。

「おっと、今取り出したのはどの邪神だ?はっ、驚いた顔してるな。いや、表情変わってねぇけど、というか少しは驚いた顔しろよムカつくな。」

「・・・。」

「誰が呆れた顔しろって言・・・うおっ!・・・気を取り直して、あんたの情報はこっちに筒抜け。あんたの弱点もしっかり分かってるしそれを突くために少し遅れてきたってわけ。この手札の多さもビビってもらって構わねぇぜ!」

舜は石をポケットに入れ戻してから、勝ち誇ったような表情をする。

「それって要するにさ・・・そういう準備しなきゃ俺に勝てる自信が無いってこと?」

足下にレーザー。

「フーロちゃん!まだキレてない!まだキレてないから!」

「優秀な保護者がいるせいで挑発が全部不発になっちゃうな・・・相手自体は幼子当然なのに保護者が優秀なせいで・・・。」

レーザー。


「ごほん!それじゃああんたの弱点付かせてもらうっすよ!」

シュネールは双剣を手にまた素早く動き始める。

全速力で動いてる人間は他の動作を器用に振る舞うのは難しい。

だから怜奈から教わったように単調で決めていた動きをしてくる。

か、最初に突っ込んで来た時よりは全速力ではない。

その為、ある程度複雑な動きもしてくるだろうと舜は構える。

シュネールは右手の剣で舜に横一閃、斬りかかる。

舜はそれを剣で受け止め、そして一息遅れて後ろに下がった。

ポタポタと脇腹から血が流れる。


「経験が豊富な人程癖も付きやすい。特に決まった型を作らずやってきた人間こそ。あんたは確かに対人の経験は豊富だ。人間相手なら無敵かもしれない。だからこそ、弱点がある。」

シュネールは魔力を器用に扱って右腕の下にもう一本、右腕に連動して動く先端が刃となっている塊を作り出していた。

「あんたは対人に慣れすぎるが故に、知らぬ間に人のできない動きや有り得ない形状相手への対応を捨てている。今こうして言われても対応出来ないほど、あんたの戦い方は人型にのみ凝り固まっている!そうだろ?」

舜は1粒、冷や汗を流した。

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