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愛の歌  作者: Dust
5章
134/228

131話

四凶の中で戦ってる所を見られていない男がいる。

長年に渡り四凶に付き従った者でも、その戦い方を知られていない男がいる。

その男、カオスは頭だけで四凶の名に連ねたと言っても過言ではない。

そして、その四凶そのものがカオスの計画により作られ機能している。

彼の頭脳は決して全ての想定が百発百中想定通りだったという訳では無い。

全ての想定を当てていたとも言えるし外していたとも言える。

彼はありとあらゆる可能性を考え、その一つ一つの可能性に対してそうなった時の対応をし、更にそこから伸びていく無数の可能性にも対策を立てていた。

無数の策略、それこそが彼の恐るべき実力である。


たとえばクロムによるアウナリト侵攻。

その1番の目的は―実は舜の殺害であった。

カオスの目に映る彼は様々な可能性を秘めていた。

クロムが舜を殺せれば、そのままクロムを主軸に世界を救う。

そして、もしクロムが敗れることがあれば―。

舜を主軸にするか、またはクロムを殺した舜を殺せるほどの別の主軸を作るべき。

カオスにとって舜は、まだ敵にも味方にもなりうる駒である。

「だからこそここで仕留めて俺が主軸になるんすよ。空いた四凶の3つを埋めるのはこのシュネール様だ!」

「私は反対だな。もし次に舜が来たとして・・・我々のやるべき事はその実力の視察と無事生還をする事。わざわざ戦いを挑んで危険と隣合う必要は無い。」

むーっとシュネールは唸る。

「いいんすか、フーロちゃん!ここで舜を倒せればカオス様は喜ぶはず!」

「命令通り確実に遂行する事もあの方は喜ぶ。悪いな、手は貸さんぞ。」


様々な可能性に策を立てるカオスにとって最も起きてはならない可能性は何か。

それは、策を立てる人物―自身の死の可能性である。

故にカオスにとって自身が出るのは最終手段。

つまり・・・"彼が戦っている所を誰も見た事がない"という事は、"一度も最終手段を切った事がない"という事に他ならない。

「だからこうして俺もお前をボスに据えて裏にいる。・・・10人死んだ、そしてこれからもっと強いのが来る。俺は再びお前ら2人を軸とし、迎え撃つよう命令しよう。無論破られた時の策も立てるが・・・期待しているぞ?」

ローグ残党を先程まで指揮していたボスとその側近が、奥の部屋で誰かからの指示を聞いている。

「はっ、大ボス。」

2人は指示を聞き終えると敬礼をして去っていった。

「カオスと同じやり方で、空いた四凶の座に俺が入る。ふっ、四凶の名があれば後は・・・ククク・・・。」


「へー、4人だけで行くんだ。まあ一応名目は視察だもんね?」

先に待っていたムスルスが言う。

「名目上って・・・一応言っときますけどローグ残党が集まってる理由次第では殺さなくてもいいんですからね?」

見送りに来たサナスが不安げに呟いた。

「安心して、サナス。」

「お、舜さんは話が分かる。」

「全員ちゃんと殺すから。」

「分かってませんでしたね。」

舜の横にシィラが付き従い、後ろには愛花が着いてきていた。

「分かってるよ・・・わざわざアウナリトがごたついてる今のタイミングで名乗り、暴れてる連中はどうするべきか。」

「・・・・・・。」

愛花は無言で立っている。


「・・・大丈夫?愛花。別に3人でも何とかするよ?」

「ううん・・・思ったより多いって話だし私も行くよムスルスちゃん。」

愛花は決意し、前を向いた。

「さて・・・急ぐよ。」

その声に誰よりも先に愛花は走り出す。

「えっ・・・あーなるほどね!」

ムスルスも理解して走り出した。

「行ってくるね、サナス。」

「わっ!急に抱えるなんてびっくりしました舜兄様!」

右手でシィラを抱え、舜も走って行く。

「はーい行ってらっしゃい。・・・さて、私は家庭菜園の本でも読んどきますかね。」


「一番乗・・・。」

「どうちゃーく!」

ローグ残党のアジトに舜とムスルスが同時に駆け込んでくる。

2人は視線を合わせ、口元だけで笑みを浮かべた。

「お、おいもう敵襲だ!ボス帰ってきてないぞ!」

「落ち着け、配置につくんだ!」

2人は視線を敵に戻し、辺りを瞬時に観察する。

「どう思う?」

「罠!」

「だよね!で、どうする?」

「ゴリ押す!」

答えると同時に舜は1歩踏み出し、剣を地面にぶつけ反動で空高く跳びあがった。


「地衝―」

「今だ、撃てー!」

視界を阻む閃光。

腕や肩の関節などを狙い撃ちにし、技の阻止にかかる魔弾。

溝や喉、目や耳などの急所目掛けて放たれる魔弾。

更に、背後では別の魔力が準備をしていた。

完璧な連携によるその滅多打ちにも、舜は止まる事は無い。

「烈牙―!」

「守衛よ!」

閃光の目眩しを喰らいながらも放たれたその斬撃に盾を持ったローグが立ちはだかり―


そのローグごと、背後で準備されてた魔道具が引き裂かれていた。

「それが、君たちの頼みの綱でしょ?」

ぺっと血を吐き捨てて舜は笑う。

「無茶しやがりますね舜兄様!」

「いやほんとほんと。結構痛い被弾してるじゃん。」

ムスルスは剣をブンブン振る。

そして威嚇するように1歩、わざとらしく強く踏み込んでみせ・・・驚き1歩下がった1人が背後に置かれた斬撃に斬り裂かれた。

「ムルシー以上の2人ってのが今のところいないからね。早めに片付けときたいんだけど・・・。」

奥の部屋から2つの影が現れる。

「怖気付くな!あの兵器が無くてもこの布陣はこういう化け物を処理する為のものだ!持ち場に戻れ!」

「ボ、ボス!はっ!」

「そうだ、この布陣はクロムすら破る為のもので・・・!」

部下の1人の何気ない一言だった。


その一言で辺りが禍々しい魔力に染まった。

「・・・お前ら如きが、クロム様を?寝言は寝て言え・・・です。」

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