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愛の歌  作者: Dust
5章
128/229

125話

「おや、いつもとあんまり変わらない衣装じゃないですか。」

早くに来ていた舜にサナスが話しかける。

「そっちも服変わってないじゃん!」

「私ですか?私はまあ・・・そんな事より。何してるんですか?」

見事な手さばきで包丁を動かす。

「何って・・・料理?」

「報告で乱入してきたって言われた時は驚かされましたよ・・・全くもう。」

材料は全て自前で持って来て、場所を空いてる時にと早めに来て邪魔にならぬよう端でやっている。

「もしかして料理の為に粧すのもやめました?」

「それは普通に興味無いだけ。」

「元王族がここまで色々興味無いのはいい事か悪い事か・・・。」

今の舜を見て政治利用しようと思うような人間は現れないだろう。

「終わったら来てくださいよ。折角ですしパーティの前に2人で乾杯しましょ。・・・とびっきりの物もあるので。」

舜はサムズアップで返し、また料理に戻った。


「お待たせ。」

「ええ、待ちました。」

サナスの手が指した椅子に舜は座る。

「それでとびっきりの物って?」

「これですよ。2人で乾杯しようと思いまして。」

真っ赤なワインを2つのグラスに注ぎ始める。

「これはあなたがラース王に養子に迎えられた時、ネビロス様がねだってラース王に準備してもらったワインです。あなたがお酒を飲める歳になった時、共に飲もうと。」

アウナリトでは18からお酒が飲める。が、しかし

「・・・俺が18になった時にはもう義兄上は忙しかったからな。」

そしていつの間にか国外へ逃げる事になり、ついにその想いが叶う事がなかった。

「あの人の魔力である私が代わりに付き添います。どうか、ネビロス様の想いを。」

「ああ・・・乾杯。」


「・・・まずっ。」

「いやそういうこと言うなよ・・・。」

顔をしかめているサナス。

「いやーすみません。あ、でもネビロス様も、子供の頃とりあえずワインをねだったけど大人になってワインが口に合わなくてどうしようって悩みを私に打ち明けたりとかしてたんですよ。ネビロス様が飲めないから私もワインダメなんですってば。」

「・・・義兄上らしいな。ふふっ。」

ネビロスもサナスも見た目だけならワインが似合うのに、と舜は笑う。

大人のように見えてそうなりきれていないというか。

「・・・正直言うと俺もワインはイマイチかな。」

「お、兄弟っぽいエピソードじゃないですか!」

「血は繋がってないけどね。・・・いやそれよりさ。」

舜はまだ半分以上残っているボトルを見る。

「どう処理しよっか。」

「まあパーティで飲めそうな人に飲ませればいいんじゃないですかね。」

「それでいっか。」

捨てるよりは雑に誰かに飲ませようか、と血の繋がってない弟と、兄の魔力から出来た半身のような存在は結論付けだ。

そういった所もまた似通っている兄弟だった。


「あー!なんか大人の雰囲気出しながらもう飲んでるっす!」

準備が終わり、少しずつ人が集まってくる。

あくまで雰囲気だけだが、ワイングラスと2人はかなり絵になっていた。

「よっ、ムルシー。ワインいける口?」

「えっ・・・そんな上等なもの口にした事無いっすから・・・。」

「ちょっと飲む?」

舜はグラスをそのままムルシーに渡す。

「これ・・・か・・・関節キッス・・・ゴクリ。」

「あ、ごめん。気にするタイプ?新しいグラス出すね。」

「いいっす!いいっす!むしろいただきます!」

むしろ?と首を捻る舜を尻目に目をぎゅっと瞑って震える唇でグラスに口を触れ、飲んでみる。

「・・・なんか・・・土の味?」


「え?土!?」

反応したのはおずおずと近付いて来ていたトワだった。

「飲む?はい。」

新しいグラスに入れられたワインをトワは45°に傾けその濃い色を眺め、果実のくっきりとした匂いを嗅ぐ。

グラスを回して空気に触れさせ、グラスから落ちていく速度をじっと見たあと舌全体でゆっくり転がすように味わった。

「いや・・・これめっちゃ上等じゃん・・・。」

舜とサナスは顔を見合せて、しっかりと頷き合う。

「残りいる?」

「え!?いいの!?」

「違いが分かるみたいだし。どうぞ遠慮なく。」


サナスは時間を見て立ち上がり、奥の方へと去った。

その後、そちらからどんどん料理が運ばれてくる。

優美な音楽が流れ始め、再びサナスが姿を見せる。

「あーあーマイクテスマイクテス。」

一瞬高音が響くが、あとは綺麗に声が聞こえるマイクで。

「さて、みなさん。お集まりありがとうございます。あとは自由に食べ、自由に飲み、自由に交流し、自由に踊る時間です。本日は無礼講、そこにいる元王族の人にもバンバン失礼なことしちゃってください。」

「・・・やれやれ。」

サナスからの振りに肩を竦めたあと、舜は笑う。

「それでは皆さん、乾杯!」

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