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愛の歌  作者: Dust
5章
118/228

115話

「・・・どうかな?」

気まずい雰囲気が流れる。

しばらくの沈黙。

シャロンとイームはその空気の中、静かに返答を待っている。

「・・・君はそれでいいのかい?君にとって僕たちは目の前で仲間を殺した2人だが。」

対面してる2人の相手、先に沈黙を破ったのはデイムの方だった。

「思うとこはあっても本人が直接誘いに来てるんだ。良いも何も無いだろ。」

イームが貫くかのように答える。

「・・・その思うとこを知りたいんだ。部外者の僕たちが行ってアウナリト組が楽しめなかったら・・・。」

「大丈夫。私たちはこの国の"兵士"なんだよ。戦いで死ぬ覚悟も、仲間が死ぬ覚悟もとうの昔に決まってる。それについて悲しんだりはあっても恨みはしない。」


「・・・俺たちを見て悲しさが強くなるとかはないのか?」

「・・・あるよ。怒りも悲しみもふつふつと。」

ターガレスの言葉に真っ直ぐシャロンは返す。

「僕たちにそう思うならやっぱり・・・。」

「ううん、違う。だってあなたたち悪い人じゃないし・・・私たちも悪い人間のつもりもない。戦争なんてきっとそんなもんなだろうなって。悪い人じゃない同士が殺しあわなきゃ行けない。でもお互い引くこともしたくないなにかがあって。だから怒りも悲しみもあなたたちへ向かっての感情じゃないよ。・・・運命というか、戦争そのものへと言うか。」

シャロンは2人の目を見た。服をぎゅっと握りしめてるのは無意識のうちだろうか。

本人も乗り越えようと必死なのだ。

デイムとターガレスはお互い視線を合わせてどうするかアイコンタクトを取る。


「・・・まだ悩むつもり?」

「ちょっとイーム。・・・簡単な話じゃないのはお互い様なんだから。」

そんな会話の間にデイムはターガレスに頷き、1歩下がった。

「分かった。そこまでの覚悟を見せられたならパーティに参加させて頂こう。」

「・・・!うん!良かった!」

招待状を2枚渡して、彼女たちはその場を後にした。



「・・・ふう。」

舜は1人、帰路に就いていた。

(身体の痛みが増したな・・・数日ははゆっくり出来そうだけども。)

前々からクロムとの死闘、グランの一撃、クトゥルフとの戦いを経てボロボロだった身体。

更に今回の戦でまた傷付いた。

そう簡単に痛みが引くものではない。

(ラグナロク使ったら今度は魔力の方でボロボロになるしなぁ。)

そんな事を考えながら歩いている折。

子供の声が聞こえる。

「・・・保育園か。・・・子供たちが安心して生きれる国になっていけるといいな・・・。」


ふとリライエンスでの事を思い出す。

たまたま子供好きな知り合いと孤児院で出会って恥ずかしそうにしていたな、と。

大窓からは子供と一緒にいる桃色の髪の少女がいた。

(そうそう、そんな見た目の・・・。)

・・・漣本人だった。

舜は速やかに中に入る許可を貰いに行った。


「ふっふっふ。悪い子にしてるとさっき話した鬼に食べられちゃうぞー!」

「「「きゃーー!!!」」」

きゃっきゃっと子供たちと楽しそうにはしゃいでいる。

「・・・鬼?」

「そう、鬼・・・わぁ!びっくりした!!!」

漣の頬は少し赤い。

「しらないのー?このまえのたたかいででた、おにさん。うたにもなってるんだよー!」

漣のそばを陣取っている女の子が歌い始める。


「Yo!悪鬼参上!国の現状!広がり尽くすは悪の横行!ヘーイ?」

「ラップなんだ・・・。」

舜が呆気に取られてる中も曲は続く。

「罪を喰らい、闇を破壊!罰をくだし、兄殺し!」

「この歌詞俺のことだ・・・。」

「割とそれで本当にその人だけのこと初めて見た気がする。」

漣が凹んでる舜の背中を摩る。

「ねぇねぇ!本当にこの鬼っているのー?」

「あー・・・えっとみんな!このお兄ちゃんが来てくれたから―」

無理やり話題を変えようとする漣を遮って。

「いるよ。とてもとても怖い存在。」

舜は脅かそうとおどろおどろしく言った。


「でもさー。悪があるとこに現れてざいにん?を食って悪を無くすんだろ?いい鬼だよなー?」

別の子供の言葉に舜は首を振った。

「違うよ。とっても悪い鬼なんだ。たとえどんな理由があれどただ人を殺して食べてるだけだもの。」

そう、とても簡単な話。

相手が悪だからといってそれに何をしてもいい訳ではなく。

それを理由に自身の悪を正当化していいわけでも、見ないことにしていい訳でもない。

「ふふっ!みんないい子にしてないと食べに来ちゃうぞ?」

「・・・舜くん。・・・・・・。」


悪と認識して、罪と認識して。その上で重ねていく。

それはきっと苦しいことだろうと漣は直感する。

でも決して言い訳はしない。

どんな理由があれど、決して。

「・・・こんな人が安心して生きていけるならいいのにな。」

「?何か言った?」

漣は知っている。

舜の良さを。

仲間のために剣を振るう凄さを。

その為に何かを諦めてることを。

本人が認めないなら。

きっとそれを認められるのは。

「・・・私たちしかいない。」

「・・・何が?」


何かを失ってでも一緒にいてくれるなら。

代わりに何かを与えたい。

きっとそれが、みんなの関係性を表すに相応しい言葉なのだろう。

「仲間・・・絆。」

「・・・何が?」

舜が困惑してる中、漣はスッキリしたような顔で微笑んでいた。

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