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愛の歌  作者: Dust
4章
110/229

107話

魔力が溢れ出んばかりに集っていく。

「良い仲間と出会い、別れ、それで強くなったようだな・・・我が弟よ。」

「・・・・・・。」

ただそこに堂々と存在しているだけで、押しつぶされそうな程の圧を感じる気。

「・・・王となり、心を打ち解ける相手がいなくなったこの身に、唯一友と呼べる者が2人いた。元は俺の魔力だったのだがな。だからこそ波長があったのかもしれん・・・。」

「・・・ふっ!」

舜はさっき怪物の素質を齎すもの(ティフォン・アネモス)で食べた魔力を放つ。

(急げ・・・!)

時間が無いという直感が、舜の身体を動かしていく。

「今・・・2人と別れを告げた。」

放たれた魔力は振り払った手の圧だけで消し飛ばされた。


その隙に乗じて音もなく近寄っていた舜の剣が強く振り払われる。

「・・・。」

舜の剣は素手で受け止められていた。

「嗚呼・・・お前が強くなったのも頷ける。誰かを想うこの気持ちこそが強者への道なのだろう。―そして。」

距離を取った舜の目をネビロスはしかと見る。

「今一度宣言しよう。俺は、俺の唯一残された家族であるお前の為に・・・お前がこれ以上苦しまず済むようにこの剣を振るおう!そして舜の魔力(お前)と共に世界を救ってみせよう!我が想い、越えられるか!!」

「・・・・・・死ねない理由は貰った。・・・・・・共に守り合う仲間も、振り返ればいつもいてくれた。みんなもみんなの想いも、そしてそれを背負う俺自身も・・・大事なんだ。義兄上、いやネビロス!俺は越えてみせる・・・!守りたいものを守るために!」


我が膝元で永眠せよメルセゲル・イルシャード!」

舜が先に仕掛ける。

「1度見せた技を使うなら工夫をしてみせよ!」

ネビロスの動きは確かに止まる・・・が。

「その技が他に魔力を使った途端に効力を無くすのは見抜いている!」

ほんの一瞬の隙、それを舜の前に晒せば常人なら殺されるだけであろう。

だが、ネビロスは舜の動きを見極めすぐ様防御態勢に入って見せていた。

怪物の素質を齎すもの(ティフォン・アネモス)!」

しかし、舜もそこまでは見抜いていた。

防ぐための剣を顎を準えた腕で消す。


(そのまま―!)

舜は食べた剣を出し、その剣でネビロスを斬り裂かんとする。

「ふっ、流石だ!」

ネビロスはその腕に宝石の盾を作り、舜の剣と鍔迫り合う。

「・・・っぅぉら!!」

振り切ったその剣はほんの少しネビロスの胴に傷を付ける。


「・・・今が!」

「止まりなさい。邪魔をしたら駄目。」

隙を見て飛び出そうとしていたリーンを雪乃が止める。

「・・・確かにこの戦いに入れるかは微妙だけど、それでも―。」

「いいえ、入れるか入れないかではなく。―必要な戦いに、なってしまったから。」

1番口惜しそうにしているのは雪乃であった。

リーンはその様子を見てもう何も言えなくなってしまった。


戦闘は続く。

2つの技を巧みに扱い、押しているのは舜の方ではあった。

だが―

「ガハッ・・・ふぅ・・・。まだ・・・持ってくれよ・・・!」

舜の魔力切れもまた迫っている。

ネビロスは所々斬られてはいるが、まだ大きな傷は付いていない。

(火力だ・・・もっと火力が無いと・・・この魔力で纏魔は使えるか・・・?いや、危険だ。何か・・・。)

舜は必死に打開策を探っていた。



魔力が溢れんばかりに集っていく。

両の穴から真ん中の穴の何者かへ。

「んー・・・あっちの穴には多分まだ愛花がいるよね。」

「そだねー。・・・ねぇ、気になってたんだけど寒くないの?」

「寒いよ。めっちゃ。」

ムスルスとムイムイは行く素振りすら見せず、喋っている。

「・・・行かないのか?・・・・・・。」

咲希はその様子を見ながら少し怒りを覚えたが、敵を助けに行くほど彼女らもお人好しでは無いと思い直し自分1人でも助けになれるかを考える。


「なんだ・・・出迎えは1人のみか。」

それは今まさに地上へと降臨してきていた。

6本の脚。脚の先はハサミのように尖っており、地面に突き刺さる。

3つの目をギョロりと動かし、毛のようなものが生えた細い触手が蠢いている。

「まあいい。これよりこの地上はこのラーン=テゴスのものとなる。愚かな魔界の支配者共は己の蓄えた魔力でゲートを出る事が出来ぬ。その間にこの我がこの世界の魔力を独占し魔界も奪い取ってやろう。」

その間に2匹のノフ=ケーの魔力が完全に1つとなった。

「いい気分だ。完全体では無いが、ゲートを越す際にわざわざ魔力を化身共に分け与え3にした甲斐があったというもの。ふっ、知能すら持ってしまっているこのラーン=テゴスが相手であるのが気の毒だ人間よ。・・・どうした?震えて声も出ぬか?」


「あっ、待って待って咲希ちゃん。行く必要は無いよ。」

「・・・何を言っている?」

「え?いやいや、だって向こうにいるのは愛花ちゃんでしょー?・・・あ、もしかして仲間になって浅くてあの子の本気見た事ない口?」


「行く必要はないな。」

「うん、イーム。私もその意見。むしろ邪魔だよね。」

「・・・・・・まああの子なら何とかなりますか。」

「え?ホントに?ホントに行かないのダゴン様?」


「どうした?手を前に出して。ああ、来ないで欲しいという意思表示かな?安心したまえ、君如きここから近付かなくても―」

「密度・最大。」

小さな魔弾が真っ直ぐ飛んでいく。

「何をするかと思えばこんなちい―」

止めてやろうと前足の1本を器用にその魔弾の通り道を塞ぐように置いたラーン=テゴスを前に。

その魔弾は目の前にある全てのものに進路もスピードも影響されず真っ直ぐ走っていった。

斜めに構えられた前足の内部を通り過ぎ上から突き破り、胸から心臓を通り背中へ。

「・・・きさ・・・ま・・・まさか・・・アザ・・・」

その言葉はまだこの世界では許されていない。

だから消える。消えろ。消えた。


「・・・あれ?霧散した・・・?」

愛花はただポカンとしていた。

この戦場に現れた空の3つの穴は、これを最後に閉じて行った。

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