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愛の歌  作者: Dust
4章
106/229

103話

槍を床に突き立て、体勢を整える。

何に吹き飛ばされたのかは見えなかった。

漣はじっと何も無い一点を睨む。

我が思いはかの如く(フェニックス)!」

炎が宙を包む。

虚空から巨大な腕が現れ、漣のいた場所へ拳が振り下ろされた。が、既に漣はそこにはいない。

「・・・フォルファクス、盾。」

腕をかけ登り、飛び降ると同時に上から槍を放った漣の攻撃を、虚空から現れた宝石が防ぐ。

後方へ着地した漣とは別に、上に残した炎が鳥となりて宝石へと飛びかかる。

「おっと、危ない。透明能力を消したのもその鳥ですよね。厄介なのはやめて欲しいんですが。」

宝石を消しながら漣の方を向き、バックステップで鳥から距離を置く。

「・・・・・・。」


漣は無言でサルガタナスを眺めている。

「お話しましょーよ。」

「時間稼ぎの為に?」

「ええ、その通りです。本気、出したくありませんから。」

漣は素早く踏み込み、槍を突き出す。

「ヴァレファール、盗れ。」

槍がすんでのところで消え、サルガタナスの手元へ。

炎の鳥は背後から隙を伺う。

「上手ですねぇ。あなたの動きから鳥をどう動かしてるか予測出来ませんもの。このまま加減させて欲しいんですがね。」

「・・・だって私それは放置してるだけだもん。」

炎の鳥はその発言にアクションを起こそうとしたサルガタナスへ襲いかかる。


サルガタナスはほんの30cm程、まるでワープしたかのように位置がズレた。

正面から標的が消えた鳥はそのまま漣の頭上まで飛んでいく。

「・・・嘘、ですよね。そうじゃないと困るから嘘であって欲しいんですが。」

「どうかな・・・。」

火の鳥はけたたましく鳴く。

漣は新たに槍を作り出す。

「・・・はぁ。恨まないでくださいよ。あなたが本気を出さざるを得なくさせたんですから。」

まっすぐ立ち、漣を見つめた。

ずっと同じ立ち方をしていたのに、さっきまでとは違い威圧感を感じさせる。


「ロレイ。射ろ。」

(来る・・・!)

漣は猛然と突っ込みながら上から放たれる矢を掻い潜っていく。

サルガタナスはそれに対し、受け止めてやらんと言わんばかりに身構えた。

ふっと一瞬サルガタナスが消えた。

「・・・あ!?」

サルガタナスの後方から放たれていた矢が、漣の前に現れる。

「・・・痛ぅ!」

身を捩りかわそうとした左腕を矢は掠って行った。

しかし突っ込むその勢いは止めず、槍を一旦浮かせ持ち方を変えて叩きつけるように右腕だけで突き出した。


サルガタナスの剣とぶつかり合う。

激しく甲高い音が鳴る。

炎が槍から吹き出しサルガタナスを襲わんとして。

突如、ガクンと漣が倒れた。

壊死地獄(オール・ネクローシス)

炎症を起こした皮膚が青白くなり、ゆっくり広がっていく。

その色が赤く変色すると、ぶくぶくと泡が立つように蠢き。

そして黒くなっていく。

「あっ・・・がっ・・・!?」

その青白さが、赤と泡が、そして黒が広がっていく様に漣は苦しみながら顔を歪める。

「ごめんなさい。すぐ終わらせますから。」

もう反撃が無いと判断したサルガタナスがその首を掻っ切った。


「・・・殺したくはなかったんですがね。まあ・・・戦争ですから、覚悟はしてきてた事を祈りますか・・・。」

サルガタナスは死体を見たくないと言わんばかりに顔を背ける。

ふと、まだ火の鳥が飛んでいる事に気が付いた。

「・・・本当に別行動できるんですか。能力ではなく魔物?・・・・・・違う。」

小さな火が、舞っている。

パッと振り向くとあったはずの死体が無くなっている。

火の粉が重なり合い、炎となりて渦巻いていく。

「・・・ゴホッ!ガハッ!?」

咳き込む声が渦巻く炎の中から聞こえ―

炎が消えると共に青ざめた表情をし、お腹を押えながら膝をついている漣が現れた。


「・・・・・・不死鳥、ですか。とはいえ痛みも苦しみも残っている様子。・・・もうやめましょう。苦しみ続けるのはあなたも嫌でしょう。」

「・・・くぅ、ふぅ。・・・やめてくれるならそのまま通り過ぎるけど?」

槍を杖代わりに何とか漣は立ち上がる。

「・・・そんな事よりここでお話しときましょうよ。向こうの勝敗が決まるまで。」

「じゃあ話しながら一緒に行く?向こうの戦いに参加しながら。」

サルガタナスは困ったように目を右上に逸らし、その後下を向いた。

「はぁ・・・こんな感情になるなら次の戦争からはパスしましょう。・・・先に謝っておきます。ごめんなさい。」

そして2人は、戦闘を再開した。




「あらかたやったか。」

シュヘルは小さな魔物を踏み殺しながら、穴を見る。

「シュヘル先輩・・・なんか寒くないですか?」

「私の方が寒いんだけど!?」

ムルシーの服が1部溶けたからとシィラから無理やり上着を渡すよう迫られ、軽装になっていたムスルスが叫ぶ。

「・・・いや、確かに悪寒がするな。バルトリーニ、クローヴィス!念の為援護を呼んできてくれ!」

「・・・何かまた、来ると思いますか。」

シィラの確認にシュヘルは頷く。

東と西の穴から1つずつ、大きな白い何かが落ちてきた。


「驚いたな。地上には脆弱な人間しか残っていないと思っていたが。」

東の方ではダゴンの顔の高さ辺りで止まったそれがマジマジと見つめる。

落ちる際身体を包んでいた白い4枚の羽を広げている。

大きさは邪神形態のダゴンよりは小さい。

が、人よりは大きくダゴンの肩に掴まっているトワを見下して笑う。

「・・・そこの、共闘しにきたぞー!」

ふと下から大きな声が聞こえる。

シャロンとイームが降りてきた白いのを見て駆けつけていた。

「・・・共闘?愚かな種族だ。このノフ=ケーに人間如きが叶うわけなかろう。敵となりうるは貴様だけだ。」

「あまり人間を舐めない方がいいですよ。私はダゴン。人を守る神です。」


ノフ=ケーの羽が変形し4本の白く太い腕のような形状になる。

「・・・私はこの戦いに集中します。他のことは任せていいでしょうか。」

「・・・他の?」

シャロンが聞くと同時に穴から第2陣がやってくる。

「―撃ち抜く!」

イームが落ちてくる間に何匹も消し飛ばす・・・が、数が多くその着地を防ぎ切る事は出来ない。

「・・・オーライ、あんまり多人数戦得意じゃないけどそっちは頼むよ。」


シャロンの言葉にダゴンは頷き、ノフ=ケーの方を向き直す。

「トワ、降りた方がいいですよ。」

「・・・あの魔物の中を?どっちにしろ危険ならここでダゴン様のナビゲートでも・・・いや、役には立たないかもだけど。」

「・・・分かりました。でも気を付けてくださいね?しっかり掴まってて。」

ノフ=ケーは白い腕で殴り掛かる・・・が、空から水分をかき集め作られた円形の水のシールドに防がれる。

「あらまあ・・・仲間との会話中は襲っちゃ駄目なんですよ?」

「こういう挨拶は気に入らなかったかね。残念だ。」

雨が降り始める。

ノフ=ケーの周りには小さな氷が、ダゴンの周りには雨が降り注いでいた。

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