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愛の歌  作者: Dust
4章
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99話

舜は首を触れる。

片目が潰れたあともなお、その首取らんと向かった剣。

血が流れる。

もし少しでも油断なぞしていたら、死んでいたのはこちらの方だと言わんばかりに。

「・・・さて。」

舜は部屋を見渡す。

わざわざここまで誘った以上、何か理由があったのではと。

「・・・爺やの部屋、か?」

見覚えがある物を眺めながら、奥の部屋へ入る。


寝室。

「・・・・・・。」

飾ってある、幼い頃の自分の写真。

一つだけ仕舞わずにかけてある綺麗な服は、自身が初めてプレゼントしたもので。

「・・・子として、見てくれてたんだ。」

思い返すと不器用ながらも自分を見ていてくれたこと。

実の親でなくても、血は繋がってなくても。

育ての親としていてくれたこと。

「なんで・・・・・・。」

こうなってしまったのか。

(なんて事、俺が思っていい訳もない・・・よな。)

ふと目線を逸らすと本棚がある。


(読書してるところなんて見た事なかった・・・けど。)

料理の本や子育て用の本など様々な本が並んでいる。

戦場で生き、戦場で死ぬことを望んでいた兵士には似ても似つかわない本。

明らかに自分の為に読み込んだであろう本。

「・・・・・・。」

もし時間があれば物思いに耽っていただろう。

(すまない爺や・・・今は生きてる仲間たちを優先させてくれ。)

死者のために何かをしてる時間はないと舜は切り替える。

その死者のために思う事が自身のために繋がると考えすらしないで。

ボロボロの状態で、それに気が付かず突き進む。

誰かのために、自身すら犠牲にして。


「・・・ん。」

本棚にファイルがあるのを見つけ、舜は取り出し中を見てみる。

「・・・これは、実験の?」

アウナリトが行っていた魔力者の実験。

それについてベリウスは密かに捜査をしていた。

実験は表面上はアウナリト側が『非人道的な実験をしていたメンバー』と抗争、唯一生存した舜を引き取った事となっている。

実際はアウナリト側が非人道的な実験を行っていた訳であり、その密かな捜査は国を敵に回すかもしれないほどのものである。


「・・・俺の・・・ために・・・・・・?」

事細かに書いてあるファイル。

今すぐ内容を読み込みたいが、そうも言ってられない。

「ナチャ、これを保管してて。」

『GYUN!』

石から糸が現れ、包まれたファイルが消える。

「・・・行かなきゃ。」

舜は後にする。

部屋も、何もかも。


必死に走る。

仲間たちの通った道は、すぐに分かった。

死体と、定期的に壁に氷が付着している。

雪乃が残したであろう目印を見ながら、必死に、必死に走る。

ようやく、人影が見える。

槍を構えたピンクの髪の少女。

「・・・漣!」

「舜くん!」

舜は剣を出して2人と戦おうとする。

「おや、弟君ではありませんか。」

「・・・サナスか。」

漣と対面している、そう呼ばれた女性は目を細め、口を緩ませ舜を見る。


「光栄です。覚えておいでとは。」

「気を付けて、漣。義兄上には2人精鋭を配下にしてて、その内の1人・・・。」

「グオオオオオオオオオ!」

獣のような雄叫びが響いた。

「ルガタもいるよなそりゃ・・・!・・・雪乃!」

「舜さん!こちらは大丈夫です!舜さんは中に!」

ルガタと戦っている水色の髪の少女、雪乃が叫ぶ。

「ですって。私としても弟君とは戦いたくありませんし。止めませんよ、この2人は止めさせてもらいますが。」

舜は漣を見る。

「行って!他の人たちが舜くんのお兄さんともう戦ってるはず!」

舜は頷くと、玉座のある部屋へ向かって走り出す。


「強くなりましたねぇ・・・。一緒に研鑽をした事がある身として感慨深い。」

「・・・ねぇ、あなた殺し合うつもりないでしょ。通してくれない?」

漣はサナスに話しかける。

「駄目ですよ。兄弟の殺し合いが終わるまで、厄介そうなあなたは止めないと。どちらが勝っても構わないんですけど・・・あなたが勝敗に関わるのは話は別なので。」

(・・・一旦戦うしかない・・・けど・・・・・・この人強い・・・!)

漣は息を深く吐く。

「しかし面白い子ですね。あなたも殺す気はなく・・・こちらにも無いことを見抜いてくる。・・・だからこそ止めさせてもらうんですが、ね!」

2人の武器が、重なり合う。


「ウォオオオオオオオオオ!!」

「チッ!」

雪乃はルガタの巨体を相手に、腕や足を凍らせる・・・が、馬鹿力で無理やり砕いてブンブンと拳を振るってくる。

「ありがちな言語も話せない巨体馬鹿が、舜さんの援護の邪魔しないで!」

通路一面が銀世界になり、ルガタの全身が凍りつく。

が、次の瞬間その氷は砕かれる。

「・・・別に喋れない訳じゃないですからね?」

「興味無いっっっ!!!」

雪乃の焦りと憤りは増していく。

魔力の感知で勘づいてしまっていた。

舜が戦おうとしてる相手、アウナリト王・ネビロスが。

とんでもない化け物なのだと。

(舜さん・・・急いでこのゴリラ倒して行きますから・・・どうか無事で・・・!)

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