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愛の歌  作者: Dust
1章
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9話

夢だ。

これは夢だ。

雨が降っている。

手を握られ走っていた。

あれは・・・あれは過去の自分だ。

雨が降っている。

1人で、走っていた。


「・・・。」

目が覚めた舜は今の夢をよく思い出そうとする。

いつの間にかいなくなっていた手を握っていたあの子は・・・。

どんなに考えても思い出せない。

"大切な人"なのは分かる。

この前夢の中でおめでとうと言ってくれた子。

だが結局思い出すことは出来ず、仕方がないので舜は伸びをして日課の朝練へと向かった。


午後

舜はある場所に呼ばれていた。

それは久々に来る場所で、出来れば遠ざけたかった場所。

眼鏡を外せばねじ曲がった光景で酷く吐き気がする場所。

アウナリト朝廷は今日も汚らしい存在で埋め尽くされていた。

政治を執り行うのは妙に若い連中。

それもそのはず、魔力者の登場により勢力図が大きく変わっていた。


舜は来たことを見張りに伝え、朝廷の扉のすぐ外のホールで呼ばれるまで待つ。

そこに1人の男が外へ出てきて話しかけてくる。

若いメンバーの中でもとりわけ若い。

「弟君の舜様とお見受け致しました。少しお話したい事が・・・。」

「手短にな。」

適当に舜は言い放つ。

「もはや貴方様の兄上、ネビロス様には先がありません。周りが国の為にと話し合ってる中顔すら見せない事が多々あります。それに比べ舜様は国を憂い外へ出てはローグと鎬を削るというこの国の鏡。アウナリトには舜様以外王に相応しい人はいないと言えるでしょう。」


隙を見て眼鏡を少しずらし、舜は歪みを確認する。

(ああ・・・俺が王になった暁に色々褒美貰おうとしてる系の奴だ。)

酷い歪みを確認した舜は一芝居打つ。

「実はその話を進めてる人がいる。呼んでくるから少し待っておれ。」

いつもと口調も違えば尊大で知ってる人が見たらすぐにバレるような演技だった。

それでもちゃんと知らずに権力を求める道具にしようとしてる相手を騙すには十分だった。

舜は再び見張りの男に話しかけ、とある人を呼べないか聞いてみる。

しばらく経って、1人の男が出てきた。


「悪いね、レ・・・左大臣殿。」

「弟君でしたらレアスで構いませんよ。」

レアスは身長はそれなりにあるが細く、中性的な男だった。

「忙しくなかった?」

「どうせ結論など出す気がない議論ばかりですから。」

舜は話をしながらさっきの若い男の所まで向かう。

若い男は思わぬ大物の登場にクーデターの成功を確信したのか食い気味に自身の考えをレアスに話すのだった。

「なるほど、それでは後ほど2人でまた話しましょう。舜様、ひとまず私はこれで。」

レアスは一通り聞くと朝廷内に戻っていき、その若い男も戻って行った。

(これで一安心・・・と。あいつはまあ、最悪死ぬかなぁ。)


実は前にも似たような事が起こったことがある。

それは舜が12の時だった。

ラースが病死し、当時16だったネビロスが思った以上に思い通りに動かないと分かるや否や義理とはいえ王族の舜を傀儡にしようと企んだ事件が起きたのだ。

ネビロスは元々面倒見のいい義兄だったのだが、王になるや否や冷徹と言われる人になってしまった。

色々兄の悪い話も聞いたがそれでも舜は自身が代わって王になろうという気は全くなく、ハッキリ断ってはいたのだが。

舜が賛同しなくても事は動きそうになっていた。

この時、いち早く舜の無実を証明しながらこの事件を公にせずに対処したのが文官で唯一歪みが少ないレアスであった。

大量の死刑者を出したこの件の時、既に政治に関わってた人はこれ以降舜を持ち上げることはなかった。


(力を持ってねじ曲がっちゃうのはローグも他も同じかぁ。)

とはいえアウナリト首都内の政治は今はまともである。

だから舜は自分が巻き込まれない限りはどうこうする気はなかった。

それから少し時が経ち、ようやく舜は朝廷内に呼ばれた。

ネビロスは居らず、右大臣のポロス―舜が一番信頼してない文官が話を進めた。

「この前舜様が捕らえられた捕虜の発言についてなのですが、どうも錯乱してて事実確認が取れませんでした。下手に噂を流して混乱させてもいけないので、捕虜の存在そのものを口外しないようお願いしたくお呼びしたのです。」

「・・・分かりました。右大臣殿の御考えなら間違いはないでしょう。」

話は、それだけだった。


部屋に戻った舜は考えを整理する。

(ローグが警戒してた時点で特殊部隊にバレるのは時間の問題で・・・そもそもローグがあそこまで警戒してた時点で目撃者がこの前の1人だけとも思いにくいけれど・・・。)

それでも口外はするなと言われた。

(・・・警戒されてた、かな。)

たったあれだけの理由で呼ばれた事を舜はそう結論づける。

成長した自分が文官たちを脅かす存在にならないかどうか。

魔力者の登場以降、立場は簡単に変わる世の中になってしまった。

貴族ですら魔力者がいなければ荒らされ、廃れた。

ラースの死後、元々の文官はみな殺された。そしてその殺した魔力者を倒した魔力者が文官として残っている。

(念の為・・・匿ってくれそうな人を増やしとかないと。)

今のところ文官で頼れるのはレアスしか居ない。

義兄のネビロスは微妙なところだろう。

となると・・・武官のメンバーになるだろう。

幸い元帥のレイガとの関わりはできている。

(しばらくはまあ・・・大丈夫かな。)

舜はそんな事を考えながらうとうとと眠りの世界へ誘われるのであった。

topic アウナリトの政治状況

アウナリトでは文官と武官で分かれている。

文官は基本朝廷内で政治の議論をし、武官はそれぞれ持ち場で行動している。

週に1度、文官と武官の代表が集まりこれからのアウナリトの話を進めていく・・・という感じ。

どちらも今は魔力者しか存在していない。

文官の方はかつて前王ラースの死後、血なまぐさい事件を経ているが武官の方は自然と魔力者じゃないと対応出来なくなった為今に至る。


正直あんまりこういうの詳しくないのでツッコミどころがあれば修正されていくかもしれない。

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