01話
初投稿です、筆が遅いためスローペースになると思いますが宜しくお願いします。
「ああ、今日もよく働いた。」
今年で32歳になるおっさん、大森智也は妻子と暮らす極々平凡な会社員である。
深夜1時、その日智也は突発的な仕事のトラブルで帰宅が遅くなってしまった。
なに、よくあることだ…よくあっては困るのだが…ひとりごちて自宅までの通勤路を歩く。
妻と子はもう寝ているだろう、自分も早く寝て明日に備えなければ・・・そう考え大きな溜息をつき、帰りを急ぐ。今日はもう晩御飯は食べずに寝てしまおう、そんなことを考えながら。
自宅についた、ごく普通の平屋の一軒家だ。電気はもう消えていて妻と子が既に寝ていることを示してくれた。
大きな音を立てないように家に入り風呂に入る、今日はシャワーだけにしておこう、汗と疲れを洗流して寝間着に着替える。
寝室に向かう前に子供の部屋へ行き、寝顔を眺めて起こさないように頬をつつく。ふふっと笑い部屋を後にする。
寝室に入り、ベッドに潜り込む。妻も疲れていたのだろうか、私に気づかず眠っている。
妻の寝息を聞きながら目を閉じた。
いつもは寝付きが悪く、布団に入ってからは暫く眠れないのだがその日は何故か沈むように意識を手放すことになる。
そんなに疲れていたのだろうか、まあいい、明日からまたいつもの生活だ…
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気が付くと全く知らない宮殿のような場所に立っていた。
「ん…?何だ此処…?夢か?」
手を握り離し、腕を回してみる。驚いたことに自分の意志で動くことが出来る、明晰夢というやつなのか。
服も寝間着ではなく何故かスーツになっている、深層心理まで会社員であるということが刻みつけられているのかと少し落胆する。
あたりを見回す、宮殿にしては開放的な場所で、朽ちるより遥か以前、全盛の神殿のようにも見えた。
そして此処は謁見室だろうか、5m程先に段差があり、空の玉座が鎮座している。
無人なのだろうか、何故こんなところにいるのかも解らないまま呆然としていると。
「う…うぅん…ここ何処?」
と背後で妻では無い若い女性の声がした。
振り返って姿を確認してみるとやはり若い。年は10代か20代前半といったところだろうか、私服に身を包んだ普通の若人である。
「あの、此処何処だか解りますか?」
「いや、俺も気付いたばかりでなにが何やら」
自己紹介でもしておいた方が良いだろうか、と声を発しようとした時。
「ようこそ、アーガスへ」
と、玉座の方から声がした。
馬鹿な、さっき誰もいなかったはずなのに。声に驚き慌てて振り向くと金髪の女性と黒髪の女性、2人が玉座の傍らに立っていた。
そして玉座は、尚も空のままである。
金髪の女性が柔らかに微笑み、話し始める。
「貴方達に、この世界を救って頂きたいのです―」