✔ 3.山頂 〜 約束を破った代償 2 〜
──*──*──*── とある山頂
魔法陣の光が消えると、其処はもう宿泊室じゃなかった。
篦棒に眺めの良過ぎる光景を見るからに、何処かの山の頂上かも知れない。
寒そうだけど、魔法陣の中に居るお蔭で寒さは全く感じない。
マオ
「 セ、セロ〜〜〜。
こんな見晴らしの良過ぎる場所で何をするんだ? 」
セロフィート
「 見ていなさい 」
セロは古代魔法を発動させた。
そしたら、遠くの大地が宙に浮かんだのが見えた。
宙に浮かんだ大地は、どんどん空高く上がって行く。
遠くに見える大地は大きいから、実際の大地はもっと大きいのかも知れない。
マオ
「 セ、セロ……。
何で大地を浮かせてるんだ?
なぁ、何する気だよ?! 」
セロフィート
「 黙って見ていなさい 」
何時もの優しくて温厚な声色でセロはオレの頭を優しく撫でながら言う。
空高く上がって行く大地を黙って見続けていると、大地が急にひっくり返った。
上下が逆転した大地は物凄い早さで真っ逆さまに落下してしまった。
マオ
「 な…………何が起きたんだ? 」
セロフィート
「 逆さまにして落下させました 」
マオ
「 どゆこと?? 」
セロフィート
「 空に上がった大地は、とある国です。
国全体を古代魔法で浮かせました。
其のまま落下させても芸がないですし、ひっくり返して落下させました 」
マオ
「 …………国??
あれって国だったの??
じゃあ、国で生活してる大勢の国民はどうなったんだよ! 」
セロフィート
「 見たら分かるでしょう。
ひっくり返って落下したのですから、国民全員落下死したに決まってます 」
マオ
「 落下死?!
死ん──?!
死んだ??
全員?? 」
セロフィート
「 当然です。
──マオ、ワタシとの約束を破るとどうなるか、解りました? 」
マオ
「 ………………酷いよ… 」
セロフィート
「 はい?
君が言いますか。
酷いのはワタシとの約束を破った君でしょう。
被害者ぶらないでください 」
マオ
「 …………其は…でも……そうかも知れないけど……。
だけど、其でも……さっきのはないだろ!!
罰ならオレに直接すれば良いじゃないか!! 」
セロフィート
「 マオ……。
君はワタシの特別。
君に直接、酷い事はしません 」
マオ
「 セロ…… 」
セロフィート
「 マオ、あまりワタシを見くびらない事です。
マオには無害でも、 “ マオ以外には有害 ” だという事を忘れないでください 」
マオ
「 セロ…… 」
セロフィート
「 ふふふ。
宿泊室に戻りましょう。
楽しいお茶の時間したいでしょう 」
マオ
「 ………………はい… 」
オレはセロにYesとしか答えられなかった。
あんな衝撃的過ぎる光景を見せられた後に、セロからの誘いを拒否するなんて出来ない。
オレは臆病者だ。
セロは、ほんの僅かな数分の間に、一国を呆気なく甚も簡単に丸ごと滅ぼしてしまった。
セロは人間の命を奪っても全然平気な顔をしている。
道端に落ちて転がったプチトマトを踏み潰すみたいに、 “ 悪い事をした ” なんて微塵も感じてないんだと思う。
人形だから……。
オレは久し振りに人形と言う存在に恐怖を感じた。
あれだけ大勢の命を奪ったのに、オレに優しい笑顔を向けて微笑んで──オレとお茶の時間をしたがっている。
オレが悪いんだけど……。
オレの所為で一国が滅んでしまったんだ。
国があった場所は、大地で埋まってしまっている。
動物とかはどうしたんだろう……。
きっとセロの事だから、人間以外の地球に無害な生物は何処か安全な場所に避難させてしまっているんだろう。
セロは自然を破壊して地球を蝕む有害な人類以外には慈悲深いからだ。
魔法陣が光を放つ。
山頂の景色が光で見えなくなった。