──*──*──*── アレンカルダ大陸
──*──*──*── 朝霧の街・ライナノット
──*──*──*── 宿屋街
──*──*──*── 宿屋・カラクザ亭
──*──*──*── 宿泊室
──*──*──*── 滞在9日目
──*──*──*── 5月27日・金曜日( 夜 )
────7日振りにマオを睡眠魔法で寝かし就けたセロトは、古代魔法を発動させた。
マオにとっては望まない『 いいこと 』だ。
セロトが古代魔法を発動させた事により “ とある事件 ” が起きた。
起きてしまった “ とある事件 ” が判明したのは、滞在日10日目の5月28日──土曜日の午前中だった。
被害に遭ったのは街民達だ。
態々古代魔法を発動させ、ライナノットの街中にゼノバ教団のカインを出現させたのだ。
合成昆虫の類いを生み出したのはセロトであり、巨大な合成昆虫とカインをinさせたのもセロトだ。
巨大な合成昆虫と融合したカインを街中へinしたのも勿の論セロトの仕業である。
セロトが囮となり、詩歌を歌ったり、古代魔法を発動させ、複数の魔法陣から詩歌を流したのも、カインが正気に戻らないように混乱させ、マオに “ 敵である ” と認識させる為だ。
面白い事が好きな人形は『 いいこと 』の為ならば、カインですら容赦なく利用する残忍さを持っている。
大剣に閉じ込められたカインは、また何時か別の形で利用される事になる。
不慮の襲撃により、亡くなった街民の中には、《 セロッタ・ミュージアム 》の中にある《 セロッタ・カンパニー 》でマオが出会った少年も含まれていた。
《 セロッタ・カンパニー 》の中にある玩具博物館へ入れなかったマオに、入り方を教えてくれた親切な彼の少年だ。
セロトは一部始終を見ていた。
マオが1人で走って行ってしまった後、古代魔法を発動させ、魔法陣を通してマオの行動を見ていたのだ。
思いも依らない事をして笑わせてくれるマオを可愛く思うセロトだったが、少年の登場に依って、入り方の分からないマオの面白い様子は見れなくなってしまった。
それはセロトにとっては面白くない事だった。
マオに博物館への入り方を自分が教えたかった事もある。
“ 楽しみを取られた感 ” もあった。
マオに対する独占欲は、セロト自身が思うよりも強いようだ。
少年──フェウイルは、困っていたマオに親切心を出した所為で、セロトに目を付けられる事になり、不慮の事故に巻き込まれた風を装い、短い人生の幕を降ろす事となった。
然し、この事実を知る者はセロトしか居らず、マオは言葉を交わした筈のフェウイルの記憶をセロトから忘れさせられており、フェウイルの名前を聞いても思い出せないでいた。
1番の被害者は少年フェウイルだと思うかも知れないが、一切関与してもいないのに巻き添えをくらい死んでしまった街民達だろう。
セロトが『 いいこと 』をすると、多くの被害者が出てしまい、不幸となる人間が増えるのだった。
因みに──、セロトが起こした被害も酷いが、マオが慕っている “ セロ ” が起こした場合は、セロト以上に酷い被害が出ていた事だろう。
セロトと入れ替わる前のセロフィート── セロ ──は、セロト以上にマオを気に入っていたからだ。