♥♥ セロフィートside 1
──*──*──*── アレンカルダ大陸
──*──*──*── 朝霧の街・ライナノット
──*──*──*── 宿屋街
──*──*──*── 宿屋・カラクザ亭
──*──*──*── 宿泊室
──*──*──*── 滞在1日目
──*──*──*── 5月19日・木曜日( 夜 )
────何時ものようにマオを超熟睡魔法で寝かし就けたセロフィートは、幸せそうな寝顔でスヤスヤと寝息を立てて眠っているマオの黒髪を優しく撫でる。
暫く撫でた後、セロフィートは古代魔法を発動させた。
マオが自ら望んだ『 いいこと 』を実現させる為にだ。
マオが自分── と言うか、マオにとっての “ セロ ” は自分ではなく、あくまでも入れ替わる前のセロフィートなのだが ──としたがっている『 いいこと 』が、自分の望んでいる『 いいこと 』と中身の内容が全く異なっている事をセロトは知っていた。
マオが “ セロ ” としたがっている『 いいこと 』とは、親密な男女の間で行われる “ 互いの愛を確かめる為の愛し合う行為 ” である。
〈 久遠実成 〉に依って作られた人形であるセロトには、マオが望んでいるような行為は出来ない。
凸も無ければ凹も無いのだから、いかせん無理な話だ。
そんな事はマオ自身も承知の上だと言う事は知っている。
マオはただ何等かの繋がりが欲しいだけなのだ。
目に見えない心の繋がりがよりも、目に見えて直に体感が出来て、安心感を得られる身体の繋がりが────。
マオの望む形で繋がる事は出来ないが、それに近い形でならば、出来ない事はない。
気分が乗らないからしてあげないだけで……。
マオはあくまでも玩具なのだから、マオを優先する必要等何処にもない。
気が向いた時にだけ、暇潰しに構ってあげるだけだ。
ついこの間までは────。
どうやら自分はマオの事を想像以上に愛しく思っているらしい。
玩具ではなく、ペットぐらいには……。
マオが望むならば、少しぐらいは構ってあげても──と思うようになっていた。
マオを “ 可愛い ” と思うのは確かで、別の意味で構いたくなるのは変わらない。
だから、今夜も「 “ セロ ” と『 いいこと 』したい 」とねだったマオを睡眠魔法で寝かし就け、古代魔法を発動させた。
セロトが古代魔法を発動させた事により、5月19日──木曜日の深夜に “ とある事件 ” が起きた。
起きてしまった “ とある事件 ” が判明したのは、滞在日2日目の5月20日──金曜日の夕方だった。
被害に遭ったのは、一般人女性であり、22歳の妊婦と妊婦のお腹の中に宿っていた胎児だ。
マオの望みを叶える為の『 いいこと 』──と言うか、セロトの “ マオで遊ぶ為に必要な段取り ” なのだが────。
セロトの『 いいこと 』の被害者となった妊婦は、不憫だろうか?
可哀想だろうか?
不運だろうか?
自業自得だろうか……。
【 妊婦殺害事件 】を起こさせられた犯人は、不憫だろうか?
可哀想だろうか?
不運だろうか?
巻き込んだ仲間と共に5月29日の日曜日以降に《 ライナノット 》で公開処刑される事が決まった犯人達は、自業自得だろうか……。
何はともあれ、セロトの『 いいこと 』は人間を不幸にしかしないのだ。




