フェウイル……??
フェル……??
──って……どっかで聞いた事のあるような……。
何処だったかな??
うぅ〜〜ん……思い出せないや…。
オレには思い出せないぐらい他人でも、あの家族にとっては、かけがえのない誰かだったんだろうな……。
大事な家族を予期しない不慮の事故で亡くしてしまうのって、身を引き裂かれるぐらい辛いんだろうな…。
命を奪い過ぎてるオレなんか、麻痺しちゃってるだろうから誰かを亡くしても悲しみが込み上げて来ないんだろうなぁ……。
嫌な気持ち,悔しい気持ちは多少は芽生えるだろうけど……。
オレは歩く速度を上げて、足早にセロの元へ向かった。
──*──*──*──*──
オレだけの愛しいセロの姿が見えた!
セロは「〈 器人形 〉に指示を出します 」みたいな事を言ってたけど──、オレが見たのは椅子に腰掛けて読書に耽っている姿だった!!
やる事が一杯あって、〈 器人形 〉に指示を飛ばしてたんじゃなかったのかよ?!
何で暢気に読書して寛いでるんだよぉぉぉおおおおおおッッッ!!!!
何かムカつく!!
マオ
「 ──セロ!
何で本なんか読んでるんだよ!
今は読書なんてしてる場合じゃないだろ!! 」
セロフィート
「 マオ、お帰りなさい。
回復魔法の熟練度は上げれました? 」
マオ
「 多分上がってるんじゃないのか?
オレの事はいいんだよ!
セロに聞いてんだけど!! 」
セロフィート
「 段取りと根回しさえ出来ていれば、簡単な指示だけで済みますし。
マオが戻って来るのを待ってました 」
マオ
「 セロ〜〜〜〜 」
セロフィート
「 そんなに怒らないでください。
ワタシは『 人間助けしない 』と言った筈ですけど? 」
マオ
「 それはそうだろうけど……。
こんな状況の中で読書なんて不謹慎だろ… 」
セロフィート
「 知った事ですか。
──さて、正午を過ぎた事ですし、出発しましょう 」
マオ
「 セロ… 」
まぁ……、言うだろうとは思ってましたけどね!
セロだしな!
セロフィート
「 後は〈 器人形 〉に任せれば良いです 」
椅子から腰を浮かせて立ち上がったセロは、何時の間にか本じゃなくて杖を持っていた。
マオ
「 ──セロ、本当に《 ライナノット 》を出るんだよな? 」
セロフィート
「 出ますけど。
嫌です? 」
マオ
「 そんな事ないよ。
また当分の間、セロと2人旅が出来るんだし。
オレは嬉しいよ!
次は何処を目指すんだ? 」
セロフィート
「 ≪ 市都 ≫の《 エメンカルダ 》を目指しましょう 」
マオ
「 此処から南みなみに向むかうんだっけ?
次つぎの≪ 街まち ≫に着つくまでには、6 〜 9つの≪ 村そん落らく ≫に立たち寄よるんだよな? 」
セロフィート
「 そうです。
≪ 王おう都とダンタンディレル ≫にも寄よりましょう 」
マオ
「 ≪ 王おう都とダンタンディレル ≫かぁ。
王おう様さまに会あえるかな? 」
セロフィート
「 暗あん殺さつされてなければ、謁えっ見けんは出で来きます 」
マオ
「 暗あん殺さつ……。
そ、そう言いえば王おう様さまは命いのちを狙ねらわれてるんだったよな?
毒どく殺さつ……だっけ? 」
セロフィート
「 マオ、心しん配ぱいしなくて良よいです。
利り用よう価か値ちのある内うちは国こく王おうの安あん全ぜんは守まもりますし 」
マオ
「 利り用よう価か値ちって……。
王おう様さまなのに… 」
セロフィート
「 所しょ詮せんは仮かりの王おうです。
偽ぎ王おうは駒こまに過すぎません 」
マオ
「 …………セロにとってはそうだろうけど… 」
セロフィート
「 マオにしか言いいません。
マオが胸むねに秘ひめてくれていれば、国こく王おうが知しる事ことも、ショックを受うける事ことないです 」
マオ
「 オレ次し第だいって事ことか? 」
セロフィート
「 そうでもないです。
直ちょく接せつワタシが国こく王おうに言いえば── 」
マオ
「 それは止やめよう!
黙だまってた方ほうが絶ぜっ対たいに良いいよ!
御ご老ろう体たいの国こく王おうに鞭ムチを打うつようなもんだし!
オレは誰だれにも言いわないし!
セロとオレだけの秘ひ密みつにしとこうよ!
別べつに良いいだろ! 」
セロフィート
「 ふむ?
マオがそうしたいならワタシは構かまいません。
マオとワタシだけの秘ひ密みつ──。
“ 夫ふう婦ふ共きょう有ゆうの秘ひ密みつ ” ですね♪ 」