──*──*──*── 1階
廊下を歩いて、階段を軽やかに駆け下りたオレは、チェックインとチェックアウトをするカウンターに寄った。
勿論、お土産を渡す為だ。
本当なら昨日の内うちに渡わたしたかったんだけど、其それどころじゃなかったもんなぁ…。
セロの所せ為いで!!
マオ
「 ──おっちゃん 」
オレは宿やど主ぬしおっちゃんに声こえを掛かけた。
宿主
「 あぁ、マオ君くんかい。
どうしたんだい? 」
マオ
「 う、うん。
おっちゃんとおばちゃんにお土産みやげを渡わたしたくて… 」
宿主
「 お土産みやげ? 」
マオ
「 うん。
一昨日おとつい水曜日ウーセスセロと一緒に《 セロッタ・ミュージアム 》へ行いって来きたんだ 」
此こ処こは敢あえて「 連つれて行いってもらった 」とは言いわない。
オレは何い時つでもセロと対たい等とうでいたいからだ。
マオ
「 《 セロッタ・カンパニー 》の中なかにある玩がん具ぐおもちゃ売うり場ばで、売うられてたんだ。
玩がん具ぐおもちゃって言いうよりもインテリアっぽいんだけど… 」
オレはスノードームを包つつんでいる箱はこをカウンターの上うえに出だした。
箱はこは玩がん具ぐおもちゃが入はいっているとは思おもえないお洒しゃ落れな包ほう装そう紙しで丁てい寧ねいにラッピングされている。
リボンも大人おとな向むけのお洒しゃ落れなリボンで、花はなフラワーが咲さいてる様ように見みえる。
センスの良よさと高こう級きゅう感かんが漂ただよう包つつみだ。
カウンターの上うえに置おいた包つつみを見みて、宿やど主ぬしおっちゃんも驚おどろいてる。
そりゃそうだよな。
玩がん具ぐおもちゃ売うり場ばで買かった──って言いえば、誰だれだって子こ供ども向むけのラッピングだって思おもうものだろうし。
宿主
「 …………随ずい分ぶんと立りっ派ぱな包ほう装そう紙しとリボンだね…。
此この中なかに、本ほん当とうに玩がん具ぐおもちゃが入はいっているのかい? 」
宿やど主ぬしおっちゃんは滅め茶ちゃ苦く茶ちゃ包つつみの中なか身みを疑うたがっている。
そりゃそうだろうな。
マオ
「 うん…。
渡わたす相あい手てを伝つたえたら、店てん員いんさんがラッピングしてくれたんだ。
色いろんなラッピングがあって、包ほう装そう紙しとリボンも選えらべる様ようになってるんだ。
開あけてみてよ 」
宿主
「 そうかい?
じゃあ、開あけるよ 」
宿やど主ぬしおっちゃんは緊きん張ちょうしながら不ふ慣なれな手て付つきでリボンを外はずすと、包ほう装そう紙しを取とって、箱はこの上うわ蓋ぶたを開あけた。
箱はこの中なかにはセロが選えらんでくれたらスノードームが入いっていた。
宿主
「 へぇ…?
此これがお土産みやげかい?
随ずい分ぶんと大おおきいんだね 」
マオ
「 うん。
1度ど、逆さかさまにしてからカウンターの上うえに置おいてみて 」
オレが教おしえると、宿やど主ぬしおっちゃんは箱はこから出だしたスノードームを逆さかさまにしてから、元もとに戻もどしてカウンターの上うえにスノードームを置おいた。
透とう明めいな丸まるい球きゅう体たいの上うえに溜たまったスノーパウダーが、ゆっくりと下したに落おちていく。
オーナメントの屋や根ねや飾かざり付つけられてる木クリスマスツリーには予あらかじめ雪ゆきスノーが積つもっている。
下したには雪ゆきだるまスノーマンが3体たいあって、上うえには白しろい袋ふくろを肩かたに担かついだ真まっ赤かな服ふくを着きたお爺じいさんが、煙えん突とつの中なかに足あしを突つっ込こんでいる最さい中ちゅうだ。
…………見み方かたに依よっては、派は手でな服ふくを着きたファンキーなお爺じいさんが煙えん突とつから他た人にんの家いえの中なかへ、まさに今いま、侵しん入にゅうしようとしている光こう景けいにも見みえなくもない。
今いまから泥どろ棒ぼうをしようと煙えん突とつの中なかに入はいろうとしているのか、泥どろ棒ぼうを終おえて煙け突むりから出でて来きた所ところなのか──って光こう景けいにも見みえなくもない。
いかせん、頭あまたのイカれたヤバい危険人物じいちゃんに見みえちゃうんだよなぁ…。
だけど、此このお爺じいさんは、怪あやしい泥どろ棒ぼうなんかじゃなくて、ファンキーなお爺じいさんでもなくて──、1年ねん間かん良よい子こだった子こ供ども達たちにプレゼントを持もって来きたサンタクロースなんだ。
腹はらが出でてて肥こえてるのに、どうやって狭せまい煙えん突とつの穴あなから入はいるんだ──って思おもうんだけど、其そ処れはティンカーベルの妖よう精せいフェアリーの粉こなパウダーのお蔭かげで簡かん単たんに入はいれるらしい。
そんな事ことは置おいといて……。
オレはスノードームの中なか身み、オーナメントの説せつ明めいを宿やど主ぬしおっちゃんにした。
“ クリスマス ” なんて行ぎょう事じのない大たい陸りくに、 “ クリスマス ” を知しらないオレが説せつ明めいするのって変へんな感かんじだ。
宿やど主ぬしおっちゃんは初はじめて聞きく “ クリスマス ” の話はなしに戸と惑まどってるみたいだ。