✔ 8.宿屋 13 〜 宿泊室 1 〜
──*──*──*── 宿泊室
セロと夕食を堪能したオレは、ベッドの上に寝転がっていた。
本日の収入額は8.000万Uか──。
オレがベッドの中で爆睡している間、セロは宝石店の店主から8.000万Uもの大金をせしめていた。
“ せしめていた ” って言うのは語弊があるか…。
幾ら稀少価値の高いブルーオアシズの塊が欲しいからって、8.000万Uなんて大金を直ぐに用意出来るなんて、宝石店の店主ってのは凄いんだな。
宝石店って儲かるんだ…。
8.000万Uも稼いだセロは相変わらず分厚い本を読んでいる。
また詩歌の本かな?
マオ
「 セロ〜〜〜、本なんて読んでないでさ、『 いいこと 』しようよ 」
セロフィート
「 しません 」
マオ
「 何でだよ〜〜 」
セロフィート
「 何故だと思います? 」
マオ
「 何故って… 」
セロフィート
「 考えてください 」
マオ
「 …………オレが寝こけてデートをすっぽかしたから…か? 」
セロフィート
「 どうでしょう? 」
マオ
「 セぇロぉ〜〜〜 」
セロフィート
「 パズルでもしてみます? 」
マオ
「 パズル? 」
セロフィート
「 ジグソーパズルです。
マオの為に1000ピースのジグソーパズルを用意しました 」
マオ
「 1000ピースぅ??
オレ…、初心者だけど! 」
セロフィート
「 気晴らしになります 」
マオ
「 気晴らしって…… 」
急過ぎるんだよな。
何の前触れもなく『 ジグソーパズルしてみます? 』だもんな。
全く──、人の気持ちも知らないで!
どんなジグソーパズルだよ。
オレは身体を起こして、ルームシューズを履いてから、ベッドを離れた。
テーブルの上には、バラバラにされたジグソーパズルのピースが箱の中に入った状態で置かれていた。
ピースを入れてる箱は、ジグソーパズルを買うと好きなサイズを選べて貰えるサービス品だ。
オレはジグソーパズルのケースに描かれている絵を見た。
マオ
「 ──オレの描いた絵じゃないかよっ!! 」
セロフィート
「 はい♪
初心者向けのジグソーパズルとして販売しようと思ってます 」
マオ
「 止めろォォォオ!!
恥ずかしいから止めろよォォォオオオオオオ!!!!(////)」
セロフィート
「 誰もマオが描いた絵だと知る者は居ません。
安心してください 」
マオ
「 出来るかよ!!
大体、初心者向けって何だよ!
初心者向けのジグソーパズルなんて他にも出してるだろ?
何で── 」
セロフィート
「 “ 今更 ” です? 」
マオ
「 そうだよ!
今更だよ!
納得出来ない! 」
セロフィート
「 マオの絵は見ている相手に勇気を与えます 」
マオ
「 はぁ?
どゆことだよ? 」
セロフィート
「 絵を描くのは好きだけれど、人に見せれる程上手く描けない。
自信を持って絵を描く事を打ち明けられない──。
其の様な悩みを抱える人は沢山居ます 」
マオ
「 其とオレの描いた絵に何の関係があるんだよ? 」
セロフィート
「 絵心皆無な少年が、美的センスも才能の欠片も感じない壊滅的な絵を描き続けている。
“ 絵を描くのが好き ” と言う其だけの原動力で彼は絵心のない絵を描き続けている。
絵を描く為に大事なのは、美的センスでも、才能でも、絵の上手い下手でもなく、ただただ “ 絵を描くのが好き ” だと言う純粋な気持ち──。
人の目を気にする事なく、己の心に感じたままを真っ白いキャンバスに絵を描き続ける勇気を持ってほしい──。
と言うコンセプトで売り出す予定です 」
マオ
「 オレは絵を描くの好きじゃないし、色々と盛り過ぎてないか? 」
セロフィート
「 売り出す為に脚色するのは良くある事です。
絵を描くのが好きなのに勇気を出せずに悩んでいる人達が居ます。
彼等の為に犠牲となってください。
マオの尊い犠牲が “ ガッポリ ” に繋がります。
嬉しいでしょう? 」
マオ
「 嬉しくないわ!
オレの絵を勝手にジグソーパズルのイラストに使うなよ! 」
セロフィート
「 マオの描いた絵はワタシの私物です 」
マオ
「 酷い扱いだよ!! 」
セロフィート
「 デートをすっぽかした君が言いますか 」




