✔ 7.商店街 2 〜 セロッタ・カンパニー 2 〜
何かを手に入れる為には、相応の何かを手離さなければ手に入れる事は出来ない…。
何に対しても対価は必要不可欠なんだ。
対価を払わないで手に入れれる物なんてない。
無駄遣い駄目、絶対!!
今後は気を付けよう。
セロと居ると正常なオレの金銭感覚がズレるどころか、崩壊しちゃう危険性が高いからな!
財布の紐は此迄以上にギュギュッとキツく結んどかないといけない!!
もう、無駄遣いなんてしないんだ!!
セロフィート
「 マオ、刺繍した事あります? 」
マオ
「 全然ないな 」
セロフィート
「 6点も買って作れます? 」
マオ
「 ………………。
初心者向けのクッションキットだから大丈夫だよ!
完成させてみせるさ!
オレ、裁縫は得意だからな!
ボタン付けも出来るし、衣類の解れも直せるし、穴あきだって布で塞げるし、雑巾だって縫えるんだぞ!
其の気になれば、簡単なエプロンぐらいなら1人で作れるし!! 」
セロフィート
「 はて?
そう言うのは “ 得意 ” とは言わないのではないです? 」
マオ
「 …………全く出来ないよりマシだろ!(////)」
セロフィート
「 そうかも知れませんけど… 」
マオ
「 買った以上は、ちゃんと作るよ。
最初に出来たクッションはセロ用だからな! 」
セロフィート
「 有り難う、マオ。
楽しみにしてます♪ 」
マオ
「 おう!
期待して待っててくれよな! 」
セロフィート
「 そろそろ《 占いの館セロッタ 》へ向かいましょう 」
マオ
「 そだな。
奥の部屋に入れないのは残念だけどな〜〜 」
創立者のセロに向かって態と嫌味を言ってみたけど、セロには微笑まれただけで、何の効果も無かった。
人形のセロには皮肉も嫌味も通じないんだっけな……。
忘れてたよ…。
名残惜しそうに店内の商品を何と無〜〜〜く見ていたら、セロカ君のイラスト入りエプロンがオレの視界に入って来た!
ほ…欲しいっ!!
セロカ君のエプロンを付けて料理したいっ!!
セロとお揃いのエプロンは未だ持ってなかった筈だ。
お揃いのエプロンを付けて、セロと一緒に料理しぃ〜〜たぁ〜〜いぃ〜〜〜!!
ハッ──!!
女子かよっ!!
オレは成人した大人の男なんだぞっ!!
オレは乙男じゃないんだから、お揃いのエプロンなんて要らないんだ!!
此処で誘惑に負けてエプロンを買ったりしたら、オレは大事な “ 何か ” を失ってしまいそうな気がする!!
何を失うのかは分からないけど、後戻りが出来なくなる気がするっ!!
其にだ、ついさっきオレは自分自身に “ 無駄遣いしない ” って言い聞かせて誓ったばかりじゃないか!
オレは欲望に忠実な雄猿とは違うんだっ!!
オレには理性がある!
オレは、発情期の猿じゃないんだ!!
自分に厳しく、己を律するんだ、オレ!!
セロフィート
「 マオ、どうしました? 」
マオ
「 何がだ?
どうもしないけど? 」
セロフィート
「 ははぁ…。
其のエプロンが欲しいです? 」
マオ
「 ──へ??
エプロン??
何の事だよ。
エプロンなんて欲しくないけど?? 」
セロフィート
「 ………………。
大事そうに胸に抱いてる其は何です?
買わないなら売り場へ戻してください 」
マオ
「 へ??
胸に抱いてる??
何を言って……──うぉわっ?! 」
オレは無意識の内に売り物のエプロンを抱きしめていた?!
何時の間に……。
無意識って怖いっ!!
マオ
「 こ…此は其の…… 」
セロフィート
「 大人用エプロンの2.800Uと子供用エプロンの2.000Uですか。
2枚も買います? 」
マオ
「 ち…違うよ!
違うんだ!
此は違くて…… 」
セロフィート
「 違います?
買わないなら売り物へ戻してください 」
マオ
「 分かってるよ! 」
オレは2枚のエプロンを売り場に戻そうとしたけど、オレの意思に反して手がエプロンを離そうとしない。
コラッ、オレの手ぇっ!!
何でエプロンを離そうとしないんだ!!
どうやらオレの本能はエプロンを欲しがってるみたいだ。
どうしよう……。
此じゃあ……何時迄経っても此処から動けないよ……。




