セロフィート
「 可能性の話です。
断言は出来ません 」
マオ
「 うん…… 」
セロフィート
「 殺人鬼も1人ではないかも知れません 」
マオ
「 えっ?
殺人鬼が複数居る??
何でそう思うんだ? 」
セロフィート
「 娼婦を殺害した後の行程が多過ぎます 」
マオ
「 行程?? 」
セロフィート
「 そうです。
娼婦の衣服を破り、身体を切り裂き、臓器を引き摺り出します。
乳房を切り取り、子宮を摘出し、眼球を抉り抜きます。
眼球の代わりに睾丸を入れ、首の回りにストロー風の細い棒を刺し込み、胸元にメッセージカードを置く──。
仮に娼婦に恨みがあるとしても殺害からの行程が多いでしょう?
殺すだけなら身体を切り裂くだけで十分です。
被害者は、か弱くひ弱で無抵抗な女性です。
殺すなら刃物で首を切るだけでも十分です。
なのに、殺人鬼は余計な行程を多々してます 」
マオ
「 …………確かにな。
此も謎だよな… 」
セロフィート
「 若しかしたら、女性の乳房,子宮,眼球を集めているコレクターの仕業かも知れません 」
マオ
「 コレクター?? 」
セロフィート
「 そうです。
コレクターが連続殺人鬼である線も否定出来ません 」
マオ
「 ………… 」
セロフィート
「 コレクターから依頼を受けた玄人の犯行かも知れませんし 」
マオ
「 …………推理の幅が広がるよな 」
セロフィート
「 推理…です?
可能性を上げてるだけですけど? 」
マオ
「 可能性でも何でも、捜査の視野が広がるのは良い事だろ?
選択肢が増えれば、事件解決に役立つと思うし! 」
セロフィート
「 そうです?
──ならば何故、変態露出狂達が複数居り、殺人鬼達の犯行を手助けする為、故意に犯行現場から街民達を遠ざける為の誘導犯をしてると思います? 」
マオ
「 へ?
何だよ、突然?? 」
セロフィート
「 ワタシが殺人鬼も変態露出狂も複数犯だと言う理由があります。
確かな理由がなければ言いません。
マオ、判ります? 」
マオ
「 ………………オレに推理しろって言うのか? 」
セロフィート
「 はい♪
そろそろ夕食の時間です。
続きは戻って来てからしましょう。
其の時にマオの考えも聞かせてください 」
セロに “ エレファント・ザ・リッパー事件 ” の話を一方的に切り上げられてしまった。
まぁ、夕食の時間になったのは確かだけど…。
何で殺人鬼と変態露出狂が複数犯なのか──??
「 理由を考えろ 」って言われても、オレは探偵じゃないんですけど!!
そう言えば、おっ屋やちのゃ主しゅん人じんが、「 事じ件けんの事ことで知しりたい事ことがあれば教おしえる 」とか言いってたよな?
新しんライナノット聞ぶん・タイムズの記き事じだけじゃ明あきらかに情じょう報ほう不ぶ足そくだと思おもうし、お宿やどっ屋やちのゃ主しゅん人じんに聞きいてみよう!!
うん、そうしよう!
セロフィート
「 ──マオ、何なにしてます?
食しょく堂どうへ行いきましょう 」
マオ
「 あ、うん。
御ご免めん…直すぐ行いく! 」
セロが持もっていた新しんライナノット聞ぶん・タイムズは丁てい寧ねいに折おり畳たたまれて、テーブルの上うえに置おかれていた。
チラッと見みた窓まどの硝ガラ子スには水すい滴てきが付ついている。
マオ
「 雨あめ?? 」
セロフィート
「 マオ、どうしました? 」
マオ
「 ん……。
雨あめが降ふってたみたいだから… 」
セロフィート
「 そうです?
雨あめの中なか、夜や間かんに事じ件けんが起おこるかも知しれませんね 」
マオ
「 ………………天てん候こうを気きにしない犯はん行こうだもんな 」
今こん夜やか明後日あさって土曜日ンーアルの夜よる、≪ 街まちライナノット ≫の何ど処こかで──、先せん週しゅうと全まったく同おなじ手て口ぐちで娼ひょう婦ふが殺さつ人じん鬼きに殺さつ害がいされてしまうのかな…。
セロが其その気きで居いてくれたら、助たすけに行いけるんだけどな…。
オレは浮うかない気き持もちになった。
いけない!
セロを待またせていたんだった!
オレは急いそいで宿しゅく泊はく室しつを出でた。