✔ 6.隠れ家 8 〜 迷探偵の華麗なる迷推理 8 〜
ワトスン:マオ
「 オレが聞いてるんだけど!
……仮にヴドゥフ王が約束を破ったって、オレはヴドゥフ王にもヴドゥフ王国にも何もしない。
どうもしないよ。
そりゃあ……一国の王様が約束を破るのはどうかとは思うけど、其は王様のモラリティの問題だろ? 」
ホームス:セロフィート
「 モラリティ…です?
モラリティのない国王が治める国が必要だと思います? 」
ワトスン:マオ
「 色んな国王が居るじゃんか。
モラリティが無いからって酷い事したら駄目だろ! 」
ホームス:セロフィート
「 ワトスンは優しいですね。
人間を止めて1000年は経つのに… 」
ワトスン:マオ
「 ホームスは極端過ぎるんだよ!
兎に角さ、ヴドゥフ王国を滅ぼすのだけは止めてほしいんだけど!
サタラントだとかゼレネスだとか呼ばないでくれよ 」
ホームス:セロフィート
「 考えとくとしましょう 」
ワトスン:マオ
「 其、口だけで考えないパターンだよな? 」
ホームス:セロフィート
「 そんな事ないです。
ワタシはワトスンの思いを優遇します。
ヴドゥフ王国に “ サタラント ” も “ ゼレネス ” も呼びません。
安心してください 」
ワトスン:マオ
「 本当に??
本当に本当だな?! 」
ホームス:セロフィート
「 ワタシは約束を破りません。
信じてくれて良いです 」
ワトスン:マオ
「 ………………信じさせてくれない癖に… 」
ホームス:セロフィート
「 ワトスンがワタシを信じきれば良いだけの事です。
そろそろ、隠れ家を出ましょう。
此所での用事は済みましたし 」
ワトスン:マオ
「 う、うん……。
其で?
此処から出たら何処へ行くんだ? 」
ホームス:セロフィート
「 何処に行きたいです? 」
ワトスン:マオ
「 『 エレファント・ザ・リッパー事件 』と『 貴族令嬢殺害事件 』は放っといても解決するんだよな?
だったら『 妊婦殺害事件 』の現場に行きたいかな。
犯人達が逮捕されたのか知りたいし 」
ホームス:セロフィート
「 良いでしょう。
徒歩で向かいましょう 」
ワトスン:マオ
「 えっ?!
転移しないのか? 」
ホームス:セロフィート
「 地図もありますし。
ワトスン、徒歩は嫌です? 」
ワトスン:マオ
「 別に嫌じゃないけど… 」
ホームス:セロフィート
「 では行きましょう 」
椅子から腰を浮かせて立ち上がったセロは、一瞬 にしてテーブルも椅子も消してしまった。
オレは未だスイーツを食べていた最中だった訳で──。
言わずとも分かるだろうけど、オレは椅子に座っていたよ。
未だ座たままの状態でスイーツを食べていた最中に何の前振りも無いまま突然テーブルと椅子が消えてしまったら、オレがどうなるのか態々言わなくても大体の想像は付くよな??
オレは床に尻餅を付いて、床に背中をぶつけて痛い思いをする羽目になったんだけど!!
其になのにセロと来たら、「 ワトスン、何してます? 遊ぶのは後にしなさい 」って平然な表情でオレに言って来た。
ワトスン:マオ
「 遊んでないよ!
何をどう見たら遊んでる様に見えるんだよ!! 」
セロに文句を言いながら立ち上がったオレは、両手で尻に付いた汚れを叩いた。
ワトスン:マオ
「 オレは尻餅を付いて、痛い思いをしたんだよ!!
誰の所為だと思ってんだよ!! 」
ホームス:セロフィート
「 ワトスンが鈍臭いからではないです?
反射神経が鈍ってますね。
直々に稽古してほしいです? 」
ワトスン:マオ
「 御免なさい!
其だけは勘弁してください!! 」
ホームス:セロフィート
「 おや?
何故嫌がります?
手取り,足取り,腰取り、ワタシが優しく丁寧に稽古を付けるのに… 」
ワトスン:マオ
「 トイチには優しいけど、オレには鬼厳しいじゃないか!!
差別反対だよ!
オレにも優しく稽古してよ。
オレだって、しごかれるよりも、褒めて伸ばしてほしいんだよ! 」
ホームス:セロフィート
「 ワトスン……。
君はトイチと違いますし。
トイチと同じ様に稽古していては強くはなれません。
弱いままで良いです? 」
ホームス:セロフィート
「 良くはないけど…… 」
ホームス:セロフィート
「 ワトスン、そろそろ行きましょう 」
ワトスン:マオ
「 うん…… 」
オレの傍に来たセロは、オレの背中を優しく叩いてくれた。
多分、汚れていたんじゃないかな?