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ラブコメのライセンス  作者: 青木りよこ
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初恋

「先生。下着が駄目だって言うんなら今度水着着てきてあげようか?」

「家で水着とかそっちのが不味いだろ」

「スクール水着は運動着ですよ。大丈夫です」

「大丈夫なわけあるか。絶対駄目だからな」

「体育で着るよ」

「授業だろ」

「授業で着るものならお家で着て見せてもいいでしょう?」

「いいわけあるか。やめろ。やめてくれ。頼むから」

「なんならいいの?」

「何にも着なくていいよ」

「何にも?」


蓮が頭を膝から上げ俺を見上げる。


「何にもって何にも?」

「違うぞ。普段通りの恰好でいいって言ってるんだ。水着とかはいい」

「コスプレはありでしょ?」


蓮は俺の家に来るときは基本的にマスクをして眼鏡をかけてくるのだが、今日はピンク髪のウィッグまでしてきた。

顔立ちが整いすぎているので何をしても似合う。


「蓮。床冷たくないか?」

「タイツ履いてるから平気」


蓮は俺の膝に指で字を書いている。

何て書いたでしょうと言わないらしい。

聞かれたら答えられたのに。

あー。

何考えてんだ、俺。


「先生」


蓮が俺の膝に頬を擦り付ける。


「おーい。それやめろー」

「大好き」

「うん。俺も。つーか、お前ずっとそれしてるわけ?」

「駄目?」

「駄目だろ。つーか、飽きない?」

「飽きない。先生にずっと触ってたい。触られたい」

「ああ、そーお」


わからん。

さっぱりわからん。

高校二年生の頃ってこんなか?

男女の差か?

俺その頃何考えてたっけ?

ああ、でも初めて彼女が出来たのは俺も高二だった。

二年上の女子バレー部の先輩で、真面目に練習に取り組む姿に好印象しかなかった。

彼氏になってと言われて断る理由なんか特に思いつかなかった。

一年くらい付き合ったが他に好きな人が出来たからと振られた。

次に付き合ったのは大学入ってから。

その子にも他に好きな人が出来たからと振られた。

そういや振られっぱなしだな、俺。

いつも付き合ってとは言ってもらえるけど、結局は振られてる。

蓮のことだってそうだ。

告白してくれたのは蓮からだ。

何度も断った。

気の迷いだと言い聞かせた。

でも蓮は言い続けた。

俺に断られるたびに蓮は一人で泣いたりしたのだろうか。


「蓮」

「なあに?先生」

「何でもない」

「何それ?先生」

「呼んでみただけだ。気にするな」

「もっと呼んで」

「蓮」

「先生」


こんなの高二の俺が見たら絶望するだろうな。

いい年したおっさんがラブコメ主人公やれやれ属性気取りかと。

でも、例えば今俺が蓮と同じ高校二年生で、同級生だとしたら蓮を好きになっていただろうか。

俺はならないと断言できる。

高校生にこいつは手に負えないと言うか、何というか、蓮は見た目は天使の様に可愛いが、こう、情念が濃い。

簡単に言うと重い。

丸腰のくせに一緒に死んでって笑って言いそうなところがある。

そう言われるくらいなら俺は全力でこいつとラブコメすべきかもしれない。

教師と生徒の道行きなんて恐らく悲劇的展開しか許されないだろうから。


「先生」

「もうちょっとで終わるよ」

「うん」


午前中のぶんは、な。

告白で思い出したが、俺は今まで一度も告白と言うことをしたことがない。

振られる時いつも言われた。

別に私のこと本当に好きじゃないでしょって。

本当って何だって思ったけど、多分それは合っている。

俺はとても失礼な人間だったと思う。

真面目に生きてきたとかどの口が言うんだか。

元々碌でもない人間なんだ。

こうなったのは必然だ。

だから大いに苦しむべきだ。

だけど、こんな人間に蓮は与えられていいものだろうか。


「先生。終わったら一緒にお風呂入らない?」

「風呂なんて一番駄目なやつだろ。入らない。ちなみにどうして風呂ならいいと思った?」

「お風呂なら家族で入ったりするでしょ?将来家族になるならもうよくない?」

「いいわけないだろ。絶対駄目だ」

「じゃあ、私がお風呂入るの見ない?」

「見るか。あー、もうなんかしてあげようとか思わなくていいから」

「何かしてあげたいもん」

「いいよ。何にもしてくれなくていい」

「どうして?」

「いるだけで楽しいよ。お前がいるってだけで、楽しいんだ」


何言ってるんだか。

こんなこと言うとか俺どうかしたんだろうな。

遅すぎるラブコメのせいか。

学生の時に済ませておくべきだった。

でもその頃お前いないもんな。


「先生」

「んー?」

「私も先生が生きてるってだけで嬉しいよ」

「そうか」

「先生。生きててくれて、ありがとね」

「あー」


高二の俺。

大変申し訳ないが、お前の未来は十一歳下の教え子に振り回されロリコンじゃないと儚い抵抗を続けのたうち回ると言う例えようもなく見苦しいものだ。

しかも最悪なことに彼女が初恋だとこの上なく恥ずかしいことに唐突に気づく。

そして頭を抱える。

でも安心しろ。

彼女は世界一可愛いし、俺のこと生きているだけで評価してくれるような娘で、俺はそんな彼女にベタ惚れで、俺は今まで生きてきて今が一番楽しかったりする。

彼女といっても手も繋いでないが。



































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