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勿忘草に約束を  作者: 岡田夕遙
3/3

信用

「友達にならない?」

 

「は?」

 突然小学生のようなことを言ってきたので、私の頭は混乱した。

「僕、さみしくってさ。さっきいったように、妖怪のくせに受肉したから誰も寄ってこないんだよ。それが十数年も続いたらさ…。正直、キツイんだよ、精神的に。」

「その十数年で友達を作ろうと思ったことはないの?」

「あるよ…。でもみんな僕を気味悪がったんだ。キミはその眼のある環境に慣れているみたいだけど、他の子はそうもいかないんだ。子供っていうのは、キミの眼がなくても僕らのことを少しだけ感じ取れるんだ。だから、みんな僕の後ろに何かを感じて…ね。」

「友達になってどうするの?私を食べる?」

「まさか!さっきも言ったろう?僕はヒトに危害は与えたくないって。」

 優しくしてくれている彼には申し訳がないが、正直、ヒトも、妖怪も…、この世の全てが、信用できない。ヒトには妖怪女だの気味が悪いから近寄らないでだの。友達になったと思ったら裏切られて。私を不幸にするこの眼のせいで、妖怪たちには人生を荒らされて…。

「僕が受肉してるから警戒してるのかい?」

「…それも、あるかな。」

 本来、妖怪は肉という可視の殻を持っておらず、霊魂と呼ばれるヒトの怨念や想像の念などから生み出される。そして、その妖怪たちが肉を得るためには、ヒトの肉を食べるという行為が必要になる。

 今目の前にいるのは妖怪・人狼、それも受肉した。信用できないのは当り前だろう。

「受肉には人肉が必要なのは知ってるんだよね?」

 私はこくりとうなずいた。

「確かにその通りなんだけど、僕が捕食したのは、死人の肉なんだ。」

「!?でも、死人の肉じゃあ…。」

「うん、不完全なんだ。だから服でごまかしてるし、臭いも無理やり消してる。ただ受肉しただけじゃあ嫌われる対象にはならない。僕には死人の臭いや念が取り憑いているから、嫌われているんだ。」

「見せて。」

 私はその不完全な体というものになぜか興味が湧いた。

 彼は上半身の服をめくる。それは確かに、酷いものだった。肉という肉は落ち、いや、溶けて、肌もやっとのことでつながっているくらいのものだった。そして、

「う…。」

「酷い臭いだろ?僕は、この臭いと死ぬまで寄り添わなきゃならない。」

 それは、腐卵臭を何倍にも濃くしたようなもので、何か嗅いだ事のない悪臭も混じっていた。私が嫌な顔をするのを見て、彼は服を元に戻す。

「これが僕の呪い。一生離れることのない、ね。」

「確かに死人の肉みたいね。」

 妖怪が生きたヒトに手を出さないのは珍しい。受肉するためにも、呪いを受けることを知っていてなお、死人にしか手を出さない。

「…あなたの、名前は?」

「!僕の名前は、シュン。キミの名前は?」

「私は、中村希ナカムラノゾミ。私は、あなたの唯一の友達。そして、」

「僕はキミの唯一の友達だ!」

 自分でも信じられない、まさか、久々にできた一人の友達が人外で、それもヒトを傷つけないで生きようとする、正直者。

 彼が私を呼んだのだろうか。それとも、私が彼を呼んだのだろうか。

 どちらでもいい、この出会いは二人の孤独な子供を救った悲劇に他ならないのだから。

日を開けてしまい、申し訳ありません。

正直、展開をどうしようか困っていました笑

勿忘草、ここまでが序章の序章、まさにプロローグですね。ここまでが一つでもよかったですね。

次回、お楽しみに(まだ考えておりません笑)

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