中学
俺たちは中一になり、映画もなんとか完成した。そして、外国でも放送され、なんと1億人も映画を見に訪れたという。入学式は次のドラマの撮影で海外に行っていて参加できなかったが、沢山の新しい友達ができた。で、全員が俺たちに聞いてくる。「付き合ってる人いるの?」って。
中学一年生というのはこういう年だとはわかっている。でも結構しつこく聞かれる。
「ねぇ、彼女いる?」新しい友達、水上裕太に聞かれた。
「なんで?」
「俺作りたいからさ、なにかアドバイスがあればと思って」裕太が応える。裕太は俺の友達だ。こういうときは、本音を言って、助けた方がいいのかもしれない。
「いるよ」
「誰?」
「裕太は誰が好きなんだよ」
「ん~...誰にも言わないって約束する?」
「する」
「近藤梨央」えぇ...。やっぱり俺の彼女が誰か言わない方がいいか。
「へぇー」
「で、誰?」
「まだ言えないな。また他に好きな人ができたら教えろ。そしたら俺も教えてあげる」
「えぇ...」
折角教えてくれたのに、俺が応えなかったのはちょっとずるかったかもしれない。でも、あいつが俺と付き合ってると聞いたら、絶対に悲しむだろう。もう、陸みたいに人生を終わってしまう人は一人もだしたくない。
そういえば、陸の死は"自殺"と報道では流れているが。俺たちは知っている。あれは決して自殺なんかではない。陸は自分の命を、俺と近藤を守るために犠牲にした。というよりも、近藤を守るために、といった方が正しいのかもしれない。そう、最初に俺らが屋上に来たとき、陸はいなかった。多分、コンビニかどこかにいたのだろう。そして、下から屋上を見上げたら、なんか騒がしかったから、屋上に来た。それで、俺たちを見つけた。恐らく、陸は俺たちがいつか絶体絶命の危機に合うことを予測していたのだろう。そして、その場で遺書を書き、自殺に見せかけた。近藤のために命を犠牲にしたと聞いたら、近藤は立ってもいられなくなるだろうと思って。でもないと、あの強盗に気づかないはずがない。そして最後に、陸は強盗が俺の手を凶器で切ろうと、構えているところを見つけ、二人で落ちていった。そのお陰で、俺の怪我は擦り傷ですんだ。そう考えると、陸は俺にも助かってほしかったのかもしれない。なんと言っても、俺らは友達だからな。
本当に、人生ってなんだろう。
中学の先生は、その質問を一切しなかった。なんか、小学校の先生が恋しい。