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人生という恐ろしいもの  作者: オムライス
10/15

ライフ

「何してんの?」

「はっ」ようやく気づいたかのように、陸が振り返っていた。

「...」

「お前ら、何やってんだよ」

「陸こそ、何やってんだよ」

「俺は...。それよりも、もう十時半だろ?早く戻れ」

「だから陸を迎えに来たんじゃん」

「俺のことはどうでもいい。さっさと帰るんだ」

「て言うか、警察まだこないの?」

「なんか忙しいらしいよ。最近強盗事件多いからね」

「いいか、お前ら。すぐにここから出ていけ。ここは俺のすんでいるマンションだ。お前らは向こう。わかったな?」

「陸のお兄ちゃんに頼まれて来た。そのまま帰る訳にはいかない」

「じゃぁ伝えておいてくれ。俺を探すのをやめろって」

「ていうか...」

「...なんで自殺しようとしてんの?」

「君たちには関係無い。さっさと帰るんだ」

「上から目線だな」

「ねぇ、日記読ませて」

「いいけど、いくら説得しようとしても、俺は決めたことは最後までやりとげるからな」

「何々...」

「..."振られた。

とられた。もうチャンスはないのか。

受験落ちた。他にいいところは受からなかった。二年生からあんなに塾に通っていたのに。他のやつらも受かってんのに。紀明だって受かった。近藤も。

嫌になってきた。俺の塾代のせいで赤字だし。私立の年間100万の学校に通うことになったし。もううんざりだ。俺がいなければ、赤字にはならないだろう"」

「そんなこと思ってたの?」

「思ってて悪いか」

「命を無駄遣いにして...。私の姉ちゃんだって...」

「お前の姉さんのことは思い出すな。俺らだって恋しくなる」

「陸が死んだらどんだけみんなが悲しむか分かってるの?」

「分かってるさ。お前らは別に生きれるだろ。悲しむのは親ぐらいだ」

「お前なんにも分かってねぇんだな」

「俺ははっきりいって、お前より頭がいい。お前が俺にアドバイスするのは無駄だ」

「陸、ただ強がってるだけなんでしょ?」

「...」陸が飛び降りた。

「ちょっ...」

「なんとかつかんだよ」

「離せ、近藤」

「私一緒に落ちそうなんだけど...。ノリ、ちょっと手伝って」

「お前体重なんキロ?」

「前量ったときは28キロ」

「そんなんじゃ全然足りねぇ」

「とにかく、お前らは引っ込んでろ」

「その前に、強盗をどうにかしないとね」

「強盗...?」

「知らないの?さっき私たちが縄で縛っといたけど、いつ切れるか分かんないからさ」

「警察がくるまで、一緒させてもらうぜ」

「はぁ」陸は深くため息をついた。その時だ。

「お前ら、覚悟しておけよ...」背後から声がした。あの強盗だ。

「な、縄が切れたか」

「甘いぜ、お前ら。覚悟しておけよ」襲ってきた。また同じように転ばせたい...が、今俺は手を離せない。

「近藤、お前だけでなんとかできるな?」

「やってみる」

「かかってこい!」

「ん?」

「どうした!早くかかれ!」

「俺から先にかかってでもほしいのか?」男がかかってきた。

「お前なにやってんだよ、近藤!」

「ちょ、こいつ、凶器持ってる!」

「は?!」

それでも近藤はかかった。頭をなんとか蹴り、男を倒した。ちょっと見直した。俺だったら、凶器持ちの男にはかからないと思う。

「な、なんとかやったけど、これからどうすんの?」

「さ、さぁ」

「ねぇ、ノリなんか考えてよ!」

「そんなこと言われても...」

「紀明、お前は俺と近藤、どっちが大事なんだ。大事な方を助けるんだ」

「お前だって、そんなに近藤が好きなら、俺が引き上げてあげるから、少しでも手伝ったらどうだ!」

「...」

「ほら、行くぞ」

「おぅ...」やっと陸がその気になったか。

「え、陸、やめたの?」

「最後だけ助けてやる。そしたらお前は俺のこと、一生忘れないだろ?」

「そんな、忘れるわけないじゃん」

「ほら、行くよ」

「三人か。どうでもいい、かかってこい!」

「ど、どうするんだ」

「とりあえず転ばす。警察が来るまでは」

「で、警察が来たら、俺は飛び降りるからな」

「...」

「...」

「なにやってんだ、早く行こうぜ」

「かかってこい!」

そのあとはあんまり覚えてない。確か、何回か転ばして、一応セーフだった。でも、最後ははっきり覚えている。


「まいったか?」

「そんなはずねーじゃねぇか」

「まだやる気か?」男がナイフを取り出す。殺す気だ。

「...」

「勿論だぜ」男は俺と近藤を追いかけた。逃げきろう...と思ったが、屋上は狭い...。もう逃げる場所はない。もう、終わったのか?

「へへ、もう終わりだぜ」

「ノリ...」

「もう、俺もどうすればいいのか分かんないぜ...」

「な、なんかあるはず。なにかある...」

「お、おい!」突然強盗が叫んだ。

「なんだ?」

「なに?」

「は、離せ、お前!」陸だ。陸が強盗の足を掴んだ。そして飛び降りた。俺と近藤は強盗の手を掴む。なんとか大丈夫だ。でも、さすがに俺と28キロでは強盗と陸を一生おさえることはできない。

「は、離せ、ノリ、近藤!」

「あ、手すりに掴まれば、なんとかなるかも」

「あっ!」俺が強盗に引っ張られ、ぶら下がった状態になってしまった。

「近藤!お前、一人で三人も持てるのか?」

「無理に決まってるじゃん!」

「が、頑張れ!」

「手、手が...」

「もう少しだ」その時だ。屋上のドアが開いた。やった、警官だ!

「強盗はどこだー!」

「警察だ!手を挙げろ!」警官が来て、強盗は俺まで振り落とそうとした。そしたら、なんとか助かるだろうと思ったのだろう。


「さいなら、近藤、紀明」陸が呟いた


後ろを振り返る。俺の足が少し引っ張られたような気がした。そして、鋭い痛みを感じた。もう、俺の足は誰にも引っ張られてなかった。

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