小学校
学年部長の櫻井先生の話は無駄に長い。ていうか、無駄な話が多いのかもしれない。さっきの話だって、先生は「明日は正装です」と言ってくれれば良かっただけなのに、前置きに20分も使っていた。しかもその前置きはいつも一緒。「人生って何でしょう。なぜ今、君たちはここにいるのだろうか。どうして私たちは巡り会えたのでしょうか」いくらこの話題と関係なくても、毎回毎回この文章から学年部長の話は始まる。そして先生はこう言う。
「10分間時間をあげるから、考えてみなさい」
もちろん、ここで喋るわけにはいかない。櫻井先生はこう見えて、意外と怖い。先生の話を聞いていなかったり、喋っていたりしたら、いつの間にか通知表の「授業態度」の欄が10点満点中5点とかになっている時がある。どうやら、先生の話を聞いているときに喋っていたりすると、毎回0.5点引かれるらしい。恐ろしい。
櫻井先生の話が終わると、一斉に生徒は休み時間気分になり、話始める。俺だって、友達と喋る。そして校庭でサッカーしたり、ドッジボールしたり、とにかく家ではできないことをする。学年部長の話以外は、学校生活に不満はなかった。
少し遅いかもしれないが、自己紹介をしよう。俺の名前は竹原徳弘、友達が勝手に決めたあだ名が海苔、ノリ、のり子ちゃん(は?)。自称学年で一番頭がいい。3000人に一人の「女子に興味ない奴」として有名(?)だ。無口ではないが、女子とはあまり喋らない。喋る話題もないのに、無理矢理喋っても意味がないのに、なぜ皆無理に喋ろうとするのか、さっぱりわからない。「彼女欲しい」「彼氏欲しい」とか言ってる奴いるけど、考えてみなよ。六年生のうちに彼氏・彼女作ったっていつか別れるのはお見通しなんだよ。とにかく、俺は女子とは本当に重要な時しか喋らない。どちらかと言うと、クールな性格なのかもしれない。
櫻井先生は特に素晴らしい訳でもない。なのに、俺はあの先生の話に魅力を感じる。ただ情報を知らせているだけなのに、何かが引っかかる。はっきりしない。だから櫻井先生の話は嫌いだ。