表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
反対車線のヤクモ  作者: 火薬
2/5

その2







電車の揺れなのか、はたまた窓から注ぐ琥珀色の夕焼けのせいか俺は目を覚ました。

「如月くん・・・。」

隣に座る女子が、神埼日和が話しかけてきていた。

俺も日和も高校の制服を着ている。加えて髪の毛が腰まで伸びていて眼鏡をかけている。

なるほど、これは走馬灯ってやつだな。

「なんだよ?」俺はそう気だるく聞いた。

「私も『トウヤ』って呼んでもいい?」と聞いてきた。

「そんな事いちいち聞いてくんな。お前の呼びやすい呼び方で呼べよ」

俺がお前の事を『日和』って下の名前で呼ぶみたいにさ。そう言った。

そう言ったのを覚えている。

 

そうか、この時から付き合ってたんだよな。

この頃から恋人だったんだよな。

 


「後悔してますか?」

目の前のそいつはそう聞いてきた。

揺れる電車の中、ただ物静かで窓の外はまるで底のない井戸みたいに真っ暗闇。

「アンタ・・・誰?」

目の前の黒服に聞き返した。

そしたらバインダーを片手にケタケタと馬鹿笑いをした。笑い過ぎて過呼吸を起こしそうな有様だ。

「何がそんなに可笑しい」

「いえいえ、実にテンプレな回答いえラリーだったもので。失礼をお詫び申し上げますよ。『如月くん』」

そいつは妙に俺の苗字を強調して言った。わざとらしく。

「おっとそんな怖い顔しないでください。」どうも俺が気に入らなかったのを察したらしい。

「ワタクシ共は、貴方担当の一役員で御座います。そう、簡潔に言えば『死神』というやつで御座います」

共というのは役職、組織だからって事だろうか・・・。

「あぁ、やっぱり俺って死んだんだな。」残念な事になのか、順調にというか・・・。

「そうですね。無事にお亡くなりになりました。喉を包丁でブスりと突き刺してね。あ、何かお飲みになりますか?」

また、眉間に皺がよったのか、目の前の死神は「ただの死神ジョークですよ」とぼかした。


「それで、後悔してますか?選択肢によってはもっと別の人生もあったかもしれないのに・・・。

例えば、ちゃんと結婚して子供作って全うな人生を歩んだり、例えば事業を起こして大儲けしたり、それならそれで私共に焼肉とは言わないまでもジュースの一本くらい奢っていただきたいくらいですね。」

そう再び訊いて来た。尋ねてきた。まるでそういう風に、マニュアルでもあるかのように訊いてきた。

後半少しだけ私欲が混じっていた気もするが・・・。

「そんなもんねぇよ。そんなもんあったら、あんな派手な死に方しないだろ。」

包丁で喉を突き刺すなんて、よく考えたら死に方なんてもっと色々あっただろう。

例えば海に飛び込んで溺死とか、例えば首に縄をくくって絞死とか、

例えば部屋に火を放って焼死とか、例えば練炭焚いて窒息死とか、色々あっただろう。

まぁ、包丁で喉を刺すなんて別に派手でもないかもしれないけど、

「自殺に派手もクソもないでしょう。」死神直々にそう言われた。

「貴方にはまだ、チャンスがあります。」直々に言われた後、急に真面目な顔でそう言われた。

まるで仮面でも被っているような貼り付けたような真面目な顔だった。

「人間には寿命というものがあります。ですが貴方は自殺した事によりまだ猶予が残されています。

現世で残した事への後始末をするチャンスがあります」

所謂、コンテニューのようなものだろうか・・・。


チャンスね・・・。

「今ならまだ、現世に帰る事が出来ますよ」と真面目な面が疲れたのかヘラヘラした顔に戻っていた。

「帰って仕事をしお金を稼ぐもよし、今まで通り怠惰な生活をするもよし貴方の好きな人生を楽しむ事が出来ます」

バインダーをペラペラと捲りながらヘラヘラ顔でそう言う。

恐らくあのバインダーには俺の情報か何かが記載されているんだろうか・・・。

「アンタ、俺の人生がどういうもんなのか知ってるんだろ?今更帰ったって何もねぇよ」

「いえいえ、そんなはずないじゃないですか。ワタクシ共が知っているのは渡された書類上の事だけですよ。」

そうですねぇ・・・。

死神は難しい顔なのか笑顔なのか底の知れない表情を浮べる。

赤縁メガネで少しオシャレ感を出しているのが、なんだかムカつく。


「ふむ、悪い事を思いつきました。いえ、いい事を思いつきました。」

ワザとらしく本音をぶちまけた。

アンタ絶対友達居ないだろう。


そして、死神は言ったのだ。その『いい事』であり『悪い事』を・・・。

「如月トウヤさん、貴方たお医者さんやってみてはどうでしょう?」






2話目を読んでいただきまして、実にありがとうございます。

最近になってようやく手がすいてきたので更新が早くなるような気がします。

否、なったらいいなぁ・・・。きっとこういうのは気持ちが大事なのです。

あにはからんや、うっかり別の趣味に浮気とかしたら

「魔が差した」とか言って誤魔化すかもしれません。それでもゴマすりをしつつ読者様の目の前で頭を垂れるのです。


別の趣味というと皆さんは音楽はお好きですか?

私は多分何でも聴きます。ロック、クラシック、ハウス、カントリー、ファンク、フュージョン

一番好きなのはカントリーなんですが、

そうそう、この作品のタイトルに含まれている『ヤクモ』ってワードなんですが

列車にも『やくも』っていうのがあるんだそうです。その『やくも』の車内チャイムのクラシックが

昔、母親が子守唄で口ずさんでくれていたので好きなんですよね。

「知らない国々」だったかなぁ??

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ