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研究日誌  作者: 山石尾花
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八月八日

 八月八日


 菌の培養からH-NMRまでの工程を三回繰り返し、ついにC-NMRスペクトル分析に必要な質量のL-13を分離することができた。

 試料溶液には適切な濃度が必要だ。薄すぎても濃すぎても、美しい化学シフトは得られない。


 残念ながら、ここから先はこの研究室では行うことができない。別の研究室に分析を依頼するのだ。

 分析結果が出るまで、およそ二週間かかるという。この時期は他の研究室からも依頼があるとのことで、それ以上の時間がかかってしまうこともあるそうだ。


 私は試料を託すと、珍しく早めに帰宅した。普段は九時ごろまで居残っているのだが、今日はその気になれず、七時になる前に研究室を後にした。



 早く、早く会いたい。

 誰に……? そう、L-13に、だ。



 帰宅後、食事を済ませ、床に着いたが……眠れない。居ても立っても居られない。

 気づけば私はスウェットのまま、部屋を飛び出していた。


 走る、走る、走る──。


 汗をあまりかかない私が、汗だくになって走っていた。

 この行き場のない気持ちをどこに吐き出せばよいのか。

 皮膚が紅潮する。沸騰しているのではなかろうか、と思うほど、体内を巡る血は熱く、意識を高揚させていく。

 熱が冷めやらないまま、私は部屋に戻り、浴室のシャワーで冷水を浴びた。


 この日誌を書いている現在、深夜の二時だ。八月八日付けになってはいるが、いつの間にか日を跨いでいた。

 明日も早いが……眠れそうにない。

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