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研究日誌  作者: 山石尾花
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五月二十四日

 五月二十四日


 75%クロロホルム溶媒で溶出した成分を、高速液(H)体クロ(P)マトグ(L)ラフィー(C)でさらに分離する。シリンジで試料をインジェクターに注入。先日行ったカラムクロマトよりも、さらに精密な分離が可能だ。


 試料を注入した後、私はじっと機器の脇のグラフ用紙を見つめた。検出器が成分を検出すると、用紙にピークが描出される。過去のノートによれば、注入後、33分でピークが現れるはずだった。


 その33分間がどれほど長く感じられたことだろう。早く、早くと気ばかりが先走る。

 空き時間でH-NMRの利用予約を入れに行く。化合物の大まかな構造を把握する目的で用いられる分析機器だ。高額な機器であるため、他の研究室と共用しているのだ。

 運が悪ければ、朝から予約はいっぱいで、その日の実験は進まない、などということもあるらしい。しかし、私は運良く使用枠を確保することができた。午後から二枠。それだけあれば十分だ。


 研究室に戻り、再び機器の前に座る。33分まであと5分、というところだった。

 該当時間になると、検出器が反応した。

 ガリガリガリ、と引っ掻くような音を立て、機器のペン先がグラフ用紙に尖ったピークを描く。


 分離成分を重水に溶かし、NMR用の試料とする。超電導マグネットのエジェクトボタンを押し、試料のチューブを挿入。分析を開始した。


 NMR室は空調が効きすぎるくらい効いている。機器が熱を発するため、低めの設定温度でちょうどいいそうだが、それにしても寒い。今度からは何か羽織るものを持参しようと思う。


 パソコンの画面に、化学シフトが映し出された。それをプリントアウトし、研究ノートに貼り付ける。過去の記録と合致することから、L-13と見て間違いないだろう。


 再び菌の培養に戻り、前述の操作を繰り返す。一定質量のL-13が分離され次第、C-NMRを行い、最終的に二次元NMRでL-13の構造決定に移る。


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