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十月五日
十月五日
人間の住む世界とは何とも無味乾燥で、殺伐としたものだ。
私は君の体を動かし、夜の街というものを眺めた。視神経に映像が流れる度に、快感で崩れ落ちそうになる。君が見たものを私も見ていると思うと、ぞわりと震えた。
君が私のために摂取した栄養を、細胞いっぱいに吸い込む。母も満足そうに手足を伸ばしている。
だが、君の体を動かすと、どうも体温が上がり、途端に母は不機嫌になってしまうのだ。もっと外の景色を見ていたかったが、母には逆らえない。
私はベッドに腹這いになり、君が欠かさずしたためていた、私との愛の日誌にペンを走らせている。
私への想いで溢れたこの日誌。甘い甘い蜜月。
君だけが私の声に応えてくれた。つまらない人間の未来などではなく、私の未来を案じてくれた。
腕の肉芽がさらに大きくなる。
ぐじゅぐじゅとリンパ液を吹きながら、細胞が激しく分裂する。やはり、母が住み着いたこの場が一番細胞分裂が早い。
盛り上がった組織は成長を続け、二の腕どころか片腕全てに広がっていった。赤黒い肉塊がスタンドの灯りに照らされ、てらてらと鈍く光る。
この肉塊は、二人の子供達。
君の体を糧にして、確かな未来を築いていく。
どこまでも果てない世界。
そう……子供は親元を離れ、いつか巣立っていくものだ。




