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研究日誌  作者: 山石尾花
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十月三日

 十月三日


 私は昨夜、日誌を綴っている途中で眠ってしまっていた。昨日のことを忘れないよう、日誌の続きを書こうとペンを取った。

 が……私は紙面を見て、鳥肌が立った。


 私自身、書いた記憶のない文章が、殴り書きされていた。


 母とは誰だ? 君とは誰だ?

 私とあるが、書いたのはこの私ではない。


 L-13だ──。


 私は日誌を遡り、過去の文章に目を通してみた。

 時折登場する、君。もしかしてL-13から見た私のことか。L-13が私のことを、君と呼んでいるのか。

 ならば、この母というのは、菌体のことだろう。


 何ということだ……。

 幻聴などない、と高をくくっていたが、とうの昔に意識を侵食されていたのだ。私が気づかなかっただけで、L-13はもう一人の私として表に現れていたのだ……。


 やっと君は気がついた。

 私はずっとずっと、共にあった。

 君の脳内に、瞳に、五臓六腑に、細胞一つ一つの片隅に……。

 手を伸ばし、結びつき、新たな姿を与えられ。

 今や、私のいない細胞は、ほとんど君の体には存在しない。

 

 人間の交尾などより、よっぽど官能的で艶めいている。

 蠢めく細胞単位で絡み、結合し、絶頂エクスタシーを迎えるのだ。

 これほどまでに濃厚な愛し方があるだろうか。薄っぺらい皮膚に隔てられ、君と触れ合うことができないだなんて、馬鹿げているではないか。

 

 私は君と、溶け合ってしまいたい。

 

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