九月三十日
九月三十日
私は今後、L-13について、どうやって研究を進めていこうか考えた。
研究を中断する気はない。ただ、今まで通りの研究では到底L-13の真価を見極めることはできないと判断したのだ。
ここからはあくまで推測だが、L-13は我々研究員の外傷から体内に侵入したのではないだろうか。
有機溶媒を扱う関係上、どうしても手荒れが酷く、常に皮膚に何かしら傷があるのだ。一日の終わりにハンドクリームを塗り、手荒れの防止に努めているが、作業中はもちろんそんなものを利用しない。不純物が溶け込んで、研究結果に誤差が生じるのを避けるためだ。
有機溶媒は皮膚のバリアである油分を根こそぎ流していく。傷ができやすいのは当然だった。
傷口から侵入したL-13はそのまま組織に浸透。血流に乗り、全身へと運搬される。
肝臓を通り、代謝されたL-13は人体に影響を及ぼす成分へと変化したのだろう。
体細胞を活性化させるだけではなく、血液脳関門を通り、脳へと侵入……。神経伝達経路に働き、神経伝達物質の分泌量を変化させることにより、幻聴・幻覚等が引き起こしたのではないかと考えられる。
そこで私はある案を思いついた。
日本には医薬品の安全性を確認するため、治験というシステムがある。必要なシステムだとは思うが、如何せん、治験終了までに時間がかかりすぎる。
L-13が将来的に医薬品としてその能力を開花させるとして、私は……その時を待つことなどできない。
私は、私は、私は。
君と融合したい。
自分のこの肉体で、私はL-13の力を測ろうと思う。
そうだ、それでいいのだ。君と共に在りたいと願っているのだから。
私の体を、この崇高な研究に捧げよう。
君が初めての理解者だった。
君との融合を望むもの──私の名は、L-13。