九月二十七日
九月二十七日
学会当日。
学会と言っても大したものではない。近隣県の大学が集まり、各研究室の成果を発表するというものだ。
私は会場の廊下に作成したポスターを貼り、自大学のブースでパソコンを用いてスライドショーを流した。
会は滞りなく終わった。
会場脇のホテルにて、意見交換を兼ねた立食パーティーが行われた。
私の研究について、有機化学合成分野で著名な教授が幾つか質問をした。ある程度予測の範囲内の質問であったため、私は詰まることなく回答することができた。
私は話しかけられる以外、こちらからコミュニケーションを取ることはしなかった。
ひたすらビュッフェの食事を貪り、L-13のことを想った。
おそらく、私や他の研究員に身体的な変化が見られたのは、一定濃度のL-13に曝露されたからだろう。
それらが何らかの作用機序で、人体に影響を及ぼしたのだと考えられる。
先輩の話、そして私自身の変化から鑑みるに、L-13は恐るべき細胞活性作用で、我々人間の細胞分裂サイクルを早めているに違いない。
振り返れば、自分の心が若返った気がしていたのも……もしかしたら、L-13の作用なのかもしれない。
私は、L-13の行く末を想う。
私が生きている内に、L-13の将来を見届けるのは不可能かもしれない。研究が頓挫してしまおうが、何らなの形で人類に有益なものをもたらそうが、そんなことはどうでもいい。
ただ、L-13の研究の結末を見ることは叶わないだろう。何度も言うが、研究とは時間がかかるものなのだ。
それがどうしようもなく辛い。
君に出会えたのに、私たち二人の道は永遠に交わらない。
私はロミオとジュリエットのようにはなりたくない。想い合っているのに、求め合っているのに。
そうでしょう……? 愛しい君……。




