九月一日
九月一日
引き続き、L-13を分離する。
Y教授に研究の進捗状況を説明したところ、大いに喜んで下さった。
私も研究に打ち込みたいのだが……と呟いていた教授。学生向けの授業や市民講座といった別の仕事に追われ、ほとんど研究に時間を割くことができないと嘆いていた。気の毒な話だ。
私は今度の学会で発表するための、資料の作成に取り掛かった。まだ途中段階だが、発表する価値はある、との教授のご判断だ。
しかし……私はあまり乗り気がしない。
世間の目に、君を晒したくないのだ。
君の利用価値を知れば、他の研究者や企業が黙っていないだろう。共同研究を申し出てくるものが出てくるかもしれない。
細胞活性化する作用……用途は色々と考えられる。医療、美容、あらゆる分野で。
治療法のない病気の特効薬になるかもしれない。若返りの秘薬となるかもしれない。
彼らは何と言うだろうか。
人類のため? 未来のため?
…………くだらない。
人類など淘汰されてしまえばよいのだ。
汚物を撒き散らすだけの、穢れた細胞の塊。
そんな人類のために、君が利用されるのは……我慢がならない。




