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オーバーセンス  作者: 茜雲
零章 星が灯す道
5/71

相談




「はい、これであがりっ! これでまた私達の勝ちね」


 アリンが天使の微笑みを携えながらそう宣言すると、相対していたトリウスとオルトは浄化された悪魔の様に燃え尽きていた。


「ぐっ、あそこで8を出してりゃあ……」


「過ぎたことを言うなオルト。戦略で僕らは完敗したんだ、潔く認め――」


「はーい、出すもの出してねー」


「ぐっ……」


 無駄に悲壮感を漂わせる悪魔にむけ、天使が微塵の容赦もない命令を突きつける。仕方なしと悪魔から天使に銅貨が差し出された。


「面白いね! この……数札、だっけ? 私も一つ買おうかな」


「お買い上げどうも……。それにしてもアリンが初めてでここまで出来るとは思わなかったぜ……」


「全くだ。初心者だからってティオと組ませたがここまでとは……」


 宴会の翌日、アリン達は約束通り集まり、領主邸で数字の書かれた札を使ってゲームを楽しんでいた。


 その遊具はとある小さな村で子供のアイデアから偶然生まれた、数字を駆使して戦う遊びに、イグス達が目をつけ明確なルールと札という媒体を与えて生み出した数札というものだ。いまやマグナー商会の目玉商品の一つでもある。


 アリンがまだ全快ではないため、室内で遊ぶことになったのだが、室内での遊びといっても限られてしまう。流石に年齢や性別的にままごとなどはお断りだった為、宣伝も兼ねてトリウス達が持ち込んだのだ。


 そしていざそれで遊ぼうとした際、アリンは初心者だということで、一番数札が得意なティオと組ませた。だが予想外なことに、ルールを教えて1,2戦行うと、十全にルールを理解したアリンは容易くトリウスとオルトを出し抜くようになった。ティオのサポートもあり、連勝記録を伸ばしていく。


 ちなみに、あくまで盛り上げる為のチップ代わりとして硬貨を使用しているが、決して賭け事をしているわけではない。全てトリウスの財布から出ている硬貨である。


「さぁて、次はどうする? もっと難しいルールでもいいよ? すぐに覚えて勝っちゃうし」


 アリンは分かり易く調子に乗っているようだ。パワーバランスが崩れてしまった以上、チーム変えした方がいいのだろうが、アリンの気持ちを察してティオと組ませたまま何も言わないトリウス達は空気が読める人間である。オルトに関しては負けっぱなしが嫌なだけかもしれないが。


「そうだな、次は別のゲームにしようか。なにか希望はある?」


 アリンはトリウスに促され、数札に付属されている用紙を眺める。そこには数札を使った多種多様な遊び方が記載されていた。


「んー……じゃあこれとか」


「数並べか、わかった。オルトとティオもいいか?」


「いいぜー」


 オルトから若干怠そうな返答が返って来る。だが声質とは裏腹に、その眼には『今までの分取り戻してやるぜ!』という意思が燃えていた。


 年下相手にむきになる弟に若干の呆れを浮かべながら、ティオからの返事がないことに気付く。


「はは。…………ティオ?」


「……」


 なおもティオからの返事はない。ただじーっと手に持った数札を眺めている。


「ティオくん? 大丈夫?」


「あっ、ごめんなんでもないよ。数並べ、だよね? 僕もそれでいいよ」


 一応話は耳に入っていたようで、慌ててルールの変更を了承する。だがその不自然を流されはしなかった。


「おいおいティオ。お前ほんとうに大丈夫かよ」


「昨日の別れ際もそうだが、商隊に戻ってからも何度かぼーっとしてたろ?」


「ティオくん……」


 3人から『心配です』という視線をこれでもかというほど浴びせられる。昨夜に引き続き、心配させてしまったティオの失態である。それでもティオはこれ以上心配かけないようにと、安心させようと必死に言葉をひねり出した。


「だ、大丈夫だってば。体調だってもう全か――」


「じゃあ何が原因で悩んでるんだ?」


 ティオの言い訳を遮ってトリウスが切り込む。体調が問題でないのならそれ以外で悩み事があると自白しているようなものだ。言葉を詰まらせるティオに他の2人からも追い打ちがかかる。


「正直めんどくせぇからさっさと吐いちまえ」


「……」


 オルトはからかう様に促す。口は悪いが、それは確かにティオを気遣う言葉だ。アリンは何も言わず、ただじっとティオを見つめている。


 兄と友人から言葉や想いを受け取り、申し訳ないような、気恥しいような気持ちになる。ティオは目を瞑って数秒黙り込んだ後、決めた。


「……うん、ごめんね。ちょっと、相談したい事があるんだ。みんなの意見を聞いてみたい」


 そう言うと、3人はそれぞれ安堵したように息を吐いた。それを見て、本当に恵まれていると、ティオは思う。


 ティオも一つ息をつき、ずっと頭の中で渦巻いていたものを整理していく。


「友達の、話なんだけど……」


 前置きをして話し始める。トリウス達は、緊張させないようにとの心遣いか、ある程度楽にしてそれを聴いていた。


「その子には夢があってさ。なりたいものがあって、したいことがあって。その夢に向かって、その子なりの努力をしていたんだ。多分、その子のお父さんとお母さん、それにお兄さんたちも応援してくれていたと、思う」


 3人は黙って、ただ黙って話を聴く。


「でも、実はその子にとても特別な……そう、特別な才能があったんだ。とても稀少で、珍しい才能が。でも、その才能が原因で、周りに迷惑をかけてしまうかもしれない。いや、夢を追いかけていれば、間違いなくかけてしまうと思う」


 言うまでもなく、ティオ本人とルミナ・ロードの事である。昨日の話し合いでは問題ないという結論に至ったものの、ティオはそう楽観視していなかった。


 このまま、商隊に付いて旅を続けていれば、商人となって世界を渡り歩けば、いずれ何かの拍子に秘密が漏れ、ラステナの警告が現実のものになると思っている。そして、その時に被害を被るのは商隊や家族であると。


「――夢を、諦めれば大丈夫だと思う。でも、たぶんその子の家族は許してくれない。……本人も、諦めたくないと思ってる。だけど……それ以上に迷惑を掛けたくないんだ」


 家を捨て、どこか他の国か都市で身を移せばおそらく大丈夫だ。少なくとも家族に矛先が向くことはないだろう。いっそ兵士にでもなってしまえば国の庇護を受けることも出来る。


 大事な家族に迷惑は掛けられない。掛けたくない。そんな想いがティオの心を支配していく。


(……やっぱり、諦めよう。家は兄さん達が継いでくれる――)


 改めて口にしたことで気持ちを整理できたのか、ティオは自分で結論をつけた。未練があるのは確かだが一番大事なのは家族だと、自分に言い聞かせる。


「……うん、やっぱりそうだ。みんな、ありが――」


「掛けりゃあいいじゃねぇか」


 ティオは覚悟を決め、相談に乗ってくれたみんなに礼を言う。だがそれはオルトによって遮られた。


「……掛けりゃあいいじゃねぇか。迷惑くらいよ」


「――オルト兄さん……」


 繰り返すオルトをティオは睨みつける。


 オルトは事の重大さをわかっていない。ルミナ・ロードの件は他言無用とされているので当然であるし、責めることは出来ない。だがそれでも、ティオは思わずにはいられなかった。何を勝手なことを、と。


 オルトは”ちょっとした迷惑“程度に考えているのかもしれないが、現実はもっと深刻だ。ラステナが言っていたような財力や権力で迫られるのならまだ、良い。迷惑は掛けるかもしれないが、あくまで”交渉“の枠内だろう。最悪、自分が相手に従えばそれまでだ。だが問題は実力行使、暴力を伴って迫られた場合だ。その場合、想像したくもない最悪の結果が待っていることだろう。


「だめだよ……、危険なんだ」


「それがどうした? 家族を守るためなら上等だ」


「周りの人も巻き込んじゃうかもしれないんだよ?」


「わかってるさ。あいつらもその程度で――」


「わかってない!!」


 一歩も引かないオルトにティオは声を荒げた。


「全然わかってない! …………――死んじゃうかも、しれないんだよ?」


「…………」


 ティオの言葉が予想外だったのか、オルトが黙り込む。ティオはそれに安堵すると共に、声を荒げたことを反省していた。オルトの反応は詳細を知らない故の、致し方のない反応だからだ。自分の都合で秘密にしておきながら認識の齟齬で責めるのは勝手が過ぎるだろう。


 ティオは心を落ち着けるため、声を荒げたことを謝罪するために胸に手を置いて深呼吸をする。ようやく鼓動が落ち着いてきたティオの心臓は、次の瞬間またしてもオルトの一言で一際大きな鼓動を打つ。


「それでもだ」


「――!!」


 ティオは咄嗟に言葉を紡げずに息を呑んだ。


 オルトの言うことが理解できない。心が理解(それ)を拒否する。理性で抑えつけた夢や希望が暴れ出す。


 仕方ないことだと同意して欲しかった。いっそ冷たく突き放して欲しかった。何故なら叶わない夢や希望は絶望に変わるから。だから心の奥底に追いやった希望(ぜつぼう)にはっきりと止めを刺して欲しかった。


「…………なんで」


 半ば茫然としながら口にしたのは“疑問”だった。おそらく自分の真意も察しているであろう兄の、残酷とも言える仕打ちに対しての疑問。


 オルトは一拍置き、ゆっくりと答えを紡ぐ。


「――俺は、ティオが……ここにいる“誰か”が、犠牲になるなんて許さない。絶対に。それが、家族だと、そう思ってる」


 抑揚なく、気負った様子もなく、当然であるかのようにそれを口にした。その言葉にティオの希望(ぜつぼう)はさらに息を吹き返していく。


 オルトが意見を変える気はないと察したティオはトリウスへ視線を向ける。根っこが直情型で人が良い、悪く言えば感情を捨て切れないオルトより、俯瞰的で、冷静な視点で物事を考えるトリウスなら自分の期待に応えてくれると思ってだ。


「…………」


 トリウスは考え込んでいた。少なくとも手放しでオルトに賛同するつもりは無いようで、ティオは安堵する。トリウスならば冷静に判断してくれるだろうと。


 ティオの視線に気づいたトリウスはその期待(・・)に応え、問いかけた。


「その子の、父上はそれを知っているのか?」


「っ!」


 トリウスはティオの期待通り、冷静に、俯瞰的な視点で核心を突く。


 ここで嘘をついても意味はないし、何よりフェアではない。ティオは正直に首を縦に振った。そしてその結果は容易に察せられる。


「なら、改めて僕から言うことは何もないな」


 父が、イグスが事情を知っている。そして、ティオは先ほど『たぶんその子の家族は許してくれない』と口にした。事情を知っていて、ティオの逃避を許さない。つまりはそれがイグスの出した結論ということだ。


 父が、家族が護ると決めたのであれば、家族としてそれを支えることに異論はない。何より、トリウス自身もそれを望んでいた。


「……で、でも」


 ティオはまだ納得できない。いつか自分のせいで誰かを傷つけてしまう恐怖がそれを許さない。恐怖のせいか、あるいはままならないことへの苛立ちからか、手が震える。しかし横からそっと手を添えられると、不思議とそれは治まった。


「ティオくんは、私を助けてくれたよ?」


「え? それは……ま、まぁ……」


 唐突なアリンの言葉にどもる。ティオとしても、恩を売るつもりなどは毛頭ないが、アリンを直接的に助け出したのは自分だという自負はあるので否定することはしない。無論、他の人間の助けがあったからこそだと思っているが。しかし、そのことをなぜ今言うのか。話の繋がりが分からなかった。


 困惑するティオを優しく見つめながら、アリンは続ける。


「どんな才能や力だって、人を傷つけるばっかりじゃないはずだよ。ティオくんがしてくれたように、その人も誰かを助ける日が来るかもしれない。ううん、絶対来る!」


 力強く言い放つ。そしてティオは一つの事実を思い出す。


(そう……か。この子を助けたのも……この、“才覚(センス)”か)


 アリンを助けたのは紛れもなく、自分が嫌うルミナ・ロードという“才覚”である。家族を巻き込むかもしれない恐怖でそれを忘れてしまっていた。


 もちろん、あれは様々な要因や幸運が重なった結果ではある。だが、確かに星の導き(ルミナ・ロード)が無ければ、間違いなく、結果は変わっていただろう。


(でも、危険は確実にある……。確かにリスクばかりではないけれど、それから目を逸らす訳にはいかない)


 アリンが言ったようにメリットもある。しかし、狙われる危険が無くなったわけでは全くない。ティオの悩みはより深くなっていく。


 ティオが黙り、沈黙が流れる。そして、そういう時に真っ先に空気や状況をぶち破るのはこの男だった。


「ぶっちゃけるけどさぁ……ここで話してて意味あんのか?」


「……え?」


 予想もしていなかったオルトの物言いに、ティオは耳を疑う。オルトは構わず続けた。


「だってそうだろ? おや……じゃなくてそいつの父親……ああもうめんどくせえっ! 親父が決めたことに、俺らが何を言ったってそうそう覆りゃしねぇよ! 俺らも親父と同意見だから尚更な!」


 すごく、ぶっちゃけた。色々と。


 唖然とするティオと、苦笑するトリウスが対照的だった。オルトの言葉を受け継ぐようにトリウスが続ける。


「そうだな。僕も同意見だ。というか、僕らが家族を見捨てるようなこと言ったら思いっきり殴られるだけだ」


「う……」


 ティオの顔が引きつる。その場面が容易に想像できたからだ。ついでに言えば、トリウスとオルトの後、自分もぶん殴られていた。普段は優しいイグスだが、怒らせれば人が変わったように苛烈になる。それは兄弟全員の共通認識で、ソルチェと並び、絶対に怒らせてはいけない人物ツートップだった。


 別の方向に変わった空気に、トリウスは再び苦笑し、諭すようにティオに語りかける。


「ティオ、お前がなんの才能を持っていて、それがどんな才能なのかは知らない。だけど、聞いている限り、すぐにどうにかなるというものでもないんだろう?」


「う、うん」


「なら、ゆっくり考えてみよう。逃げることより、まずは立ち向かうことを、前に進むことを考えよう。それなら僕らは……父上たちや商隊のみんなも、助けてくれる」


「前に……進む」


 トリウスの言葉を反芻する。立ち向かうとは言っても、何に立ち向かうべきかもわからない。あえて言えば現実に立ち向かう、だろうか。この現実から逃げずに立ち向かい、家族を守る。それが、“前に進む”ことではないか。


 ティオは思考する。もう、逃げない。逃げることは皆が許さない。許さないで、いてくれる。


 ティオは思考する。ならば、家族を守るためにはどうすればいいか。


 ――簡単だ。守りたいならば、守ればいい。その力も、可能性も、不本意ながら持っている。


(そうだ、もう、人に頼り切るのはやめよう。逃げて、全部を運に任せるのも、誰かに守ってもらうのも。僕には、守れる力がある)


 元凶であるルミナ・ロードは、皮肉にもみんなを守れる可能性を持っている。少なくとも、大きな助けにはなるだろう。


 自惚れかもしれない。ただ開き直っただけかもしれない。それでも、逃げないと決めたのだ。後は前に進むだけ。絶望も、悲観も、今は必要ない。


「――は、ははっ」


 自然と、ティオから笑いが漏れる。自嘲を含んでいるが、不思議と鬱屈さは感じられない。むしろ晴れやかにも思えた。


(僕は何を悩んでいたんだろう。あの父さんが僕を置いていく訳がないなんてこと、分かっていたはずなのに……)


 ただ、愚痴を言いたかっただけかもしれない。ただ、どうしようもない感情を吐き出したかっただけなのかもしれない。けれど、確かにあったのだろう。目の前の3人が、自分の行き先を示してくれるという期待が、願いが。


 勝手な言い分である。けれども、ティオは自己嫌悪以上に清々しさと誇らしさを感じていた。この3人と家族であることに、友人であることに。


「落ち着いたみたいだな」


 トリウスが優しく声を掛ける。見れば他の2人もやさしく見つめていた。


「――うん。ごめん、ありがとう」


 簡単な謝罪と感謝を口にする。この3人ならこれだけで伝わるだろうから。


「そっか。んじゃ、続きやろうぜ。そろそろ俺の本気を見せてやる」


「ああ、数並べだったな。まずは簡単にルール説明しながらやるぞ」


 ティオの出した結論も聞かずにゲームを再開使用する2人にティオとアリンは苦笑する。聞かないのは信頼の証だ。


 ティオは苦笑した後、決意を秘めた表情でもう一度謝罪を口にした。


「ごめん。これから行きたいところが、行かなきゃならないところが出来たんだ」


「――そうか。頑張ってこい」


「ったく、勝ち逃げかよ」


 全て察しているような表情でトリウスが声を掛ける。続くオルトは不満気だが止める様子はない。アリンだけは口を挟まないものの少し残念そうにしていた。


「大丈夫、アリンだけでも勝てるから。勝ち逃げじゃないよ」


「「「えっ……」」」


 ティオの言葉に呆気にとられる。特にアリンは無茶を言うなとでも言いたげだ。


「へぇ、言うじゃねぇか。いいぜ、アリンに勝ったら次はお前だからなティオ!」


 挑発にのって鼻息を荒くする弟に、トリウスはため息を吐く。アリンはまだ状況についていけず、『えっ、えっ?』と混乱状態だ。そんなアリンにティオはそっと囁いた。


「大丈夫。さっきと同じように、アリンの思う様にやればいいよ」


 不意に、耳元で囁かれてぼはっと沸騰したように顔を赤くする。


 このように普段はごく普通の恋する乙女だが、こと遊戯、特に対人遊戯ではアリンは強かった。アリンは相手の裏を読む、というより相手の行動を読むのが得意なのだ。


 何を言えばオルトがムキになって無理をするか、それをカバーするためにトリウスはどうするか。相手を読み、ゲームを自分の思う様に展開するのが得意だった。いっそ異常なほどに。


(たぶん、アリンに勝てたら僕には楽勝だよ、オルト兄さん)


 そう、オルトの言葉に内心で応えながら身支度を整え、部屋の戸に手をかける。


「あ、帰るならメアリーに……」


「いや、いいよ。大丈夫」


 アリンの言葉に微笑みながら返す。ちなみにメアリー嬢はアリンお付きのメイドである。


「じゃあ。みんな、ごめんね」


「ああ」


「おー」


 ティオが声を掛けると、兄二人は割とあっさり返す。対してアリンは少しばかり名残惜しそうな声色で応える。


「うん。また、遊べるかな?」


「うん。またね」


 簡単に挨拶を交わし、ティオは足早に去っていく。と、思えばすぐに戻ってきた。


「あ、みんな、さっきの話だけど……。僕……の友達の話は内緒にしておいてね」


「ああ」


「はいはい、わかってるよ」


「うん。大丈夫だよ」


 3人は当然とばかりに返す。バレバレの嘘、というより隠す気があるようには見えなかったが、友達の事だと前置きした真意は皆察していた。口外しないように言われているか、無暗に広める話ではないと。話の内容を鑑みれば当然でもある。


「――ん。ありがとう」


 ティオは安心したように息を吐き、簡単に礼を言って再び背を向けた。


数札はトランプ、数並べは七並べを想像していただければ。ただ現実の固有名詞をそのまま入れると雰囲気壊れるかなぁとか思って変えただけなので深く考えないでくださいな。


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