表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

5.ミニャオン

 昨日、怖い夢を見たせいなのか?

 それともアイビと一緒に眠ったからなのか?

 いつもよりも遅い目覚めだった。


「マリー、おはよ」


 寝ぼけ眼で声のした方を見る私。

 アイビが自分のベッドに座って微笑んでいた。


「おはよ。アイビ」


 空よりも青い髪を梳かしていた。


「私もさっき起きたところなんだよね。朝ご飯の時間過ぎちゃってたね」


 苦笑いのアイビ。

 体も頭も覚醒し始めた私。

 徐々にお腹が空いている事に気付いた。


「マリー、ちょっとまだ御飯残ってるか見てくるね」


「え? それなら私も行くよ」


「あるかどうかわからないし。それにマリー起きたばっかでしょ。女の子なんだからさ。まずは身嗜み整えなよ」


 そうだ。

 私は寝起きなんだった。

 髪の毛とかちゃんとしなきゃ。


「じゃ、そゆことで行ってくるね」


 私とアイビは、何とか朝食を食べる事が出来た。

 黒パンと豌豆(エンドウ)のスープだ。

 厨房の料理長は、しょうがないな。

 そんな感じで笑って許してくれた。


 そんな感じで、朝ご飯を食べた私達。

 花壇で花の手入れをしている。

 花の手入れは楽しいと思う。

 毎日ずっとやってるわけじゃない。

 だから、そう思うのかもしれないけど。


「休みの日に花壇の手入れか。がんばるねぇ」


 声がした方を振り向く私とアイビ。

 ポーラさんが普段着で微笑んで私達を見ていた。


「休みの日じゃないと、中々時間ありませんからね」


 私が思った事を、アイビが先に口にした。


「団長が明日仕入れとかに、町にいくんだけどさ。第二騎士団団長様の口添えで、マリーとアイビも許可下りたんだけど来るかい?」


「えっ? いいんですか?」


「いいってさ。いくのは団長、私、マリーとアイビ、第二騎士団団長様と部下二名かな? マリーにアイビ、騎士団団長様にちゃんとお礼いってね」


「はい」


「うん」


「明日の朝ご飯終わった後に出発すると思うから。あぁ、で向かうのはミニャオンって町ね」


 ミニャオン?

 何か聞き覚えあるな。

 あぁ、そうか。

 ここから一番近い町だ。


「馬でゆっくりで北に二時間って所でしたっけ?」


「さすが外回りだ。そうそう二時間ぐらい。もっとも私やマリーは、乗馬なんざした事ないからね。人数の関係もあるけど、マリーは騎士団の馬車に乗せてくれるってさ」


「凄いじゃない。私も乗ってみたいなぁ」


 騎士団の馬車?


「もしかしてあの凄い馬車ですか?」


「マリーの凄いの意味がわかんないけど、たぶんそうじゃないかな?」


 町に行く事、騎士団の馬車に乗れる事。

 どちらも私の心をワクワクにさせてくれた。


「マリー凄い嬉しそうな顔してる」


「ほんとだね。アイビもだけど。まぁ、それこそ騎士団団長様様様だね」


-----------------------------------------


 その日は興奮のあまり、眠気がこない。

 中々眠りに付く事が出来なかった。

 ここに来て、いい意味でこんなに興奮した。

 そんなのは始めてかもしれない。

 アイビに興奮し過ぎと苦笑いされるのも当然だ。

 でも、興奮しちゃうものはどうしようもないよ。


 次の日、私はアイビに朝起こされた。

 起こされなかったら、そのまま寝てたもしれない。

 朝ご飯を食べた後、私とアイビは町へ行く準備をした。


 私は水色のエプロンドレス。

 髪の毛はポニーテールにした。

 アイビはピンク色のエプロンドレス。


 集合場所に向かう私達。

 スキンヘッドの屈強な男性が、馬を撫でていた。

 メモーア・イキン、傭兵団団長だ。


 馬車は二台ある。

 一台は傭兵団の荷物運搬用。

 木製の質素で大きな馬車。

 メモーアさんとアイビ、ポーラが乗る。

 傭兵団団長自ら御者をするようだ。


 私が案内された馬車。

 騎士団の紋章が刻まれいた。

 とても優雅な感じがする。

 中も広々として清楚だ。

 四人乗っても狭く感じる事はなさそうだった。


 でも、それよりも一番驚いた事がある。

 第二騎士団団長がアリスメリアさんだった事だ。

 一昨日の状況から、騎士団の中では偉い人だろう。

 そうは思っていた。

 だけど、まさか団長だったとは思ってなかった。

 でも、思い出してみれば、納得出来る。


 お礼を言う私とアイビ。

 アリスメリアさんは何故か謙遜していた。

 何でだろう?

 照れていたのかな?


 メモーアさん達の乗る馬車が先頭を走る。

 その次が私とアリスメリアさんの馬車。

 アリスメリアさんの部下二名は、馬に乗って最後。

 臨機応変に、周囲を警戒するそうだ。


「マリーちゃん、具合悪くなったりしたら教えてね」


 私と対面して座っているアリスメリアさん。

 とても柔らかい微笑みだ。


「乗り心地悪いかもしれないけど」


 そんな事ないと思う。

 数えるぐらいしか馬車に乗った事はない。

 けど、座席はフワリとしてる。

 振動もほとんどない。


「そんな事ありません。座り心地も悪くないですし、振動もほとんど感じません。数えるぐらいしか馬車には乗った事ないですけど、たぶん一番です」


「そう言ってもらえるとありがたいかな」


 アリスメリアさん、何だか嬉しそうだ。


「あの。アリスメリアさん、変な事聞いていいですか?」


 第二騎士団団長様の口添え。

 ポーラさんから聞いて疑問に思った事だ。

 それが、アリスメリアさんだと知る。

 疑問への知りたいという欲求が高まった。


「私とアイビの同行の許可に口添えしてくれたみたいですけど、どうしてでしょうか? ありがたい事で、とても嬉しいんです。でもなんでかなって気になって」


「んー? 何だろう? 一昨日怖い思いしたから、気晴らしをさせたいって思ったからかな? いや、違うな。もちろんそれもあるんだけど」


 気晴らしをさせたいか。

 確かに一昨日は凄い怖かった。

 たぶん、アイビが一緒に寝てくれた。

 そうじゃなかったら、一人震えてたんじゃないかな。

 あの後一人で眠る事は出来なかったと思う。


「私には下に妹が二人いるんだ。戦時だし、騎士団の団長なんてしてるからね。もう三年以上顔を合わせていないかな?」


「はい」


「手紙での遣り取りはしてるんだけどね。どうしても、届くのには時間がかかる」


「はい。そうですよね」


「たぶん、アイビとマリーは雰囲気が妹達に似てるんだな。改めて考えてみると、二人には迷惑かもしれないけど、妹達とだぶらせてしまっているのかもしれないな。だからかな?」


「迷惑だなんて、そんな事ありません。正直、嬉しいです。私には兄と姉、妹がいました。でも二人とも私には冷たかった。むしろ妹に優しかった。だから、アリスメリアさんみたいな姉だったら大歓迎です」


「そっか。マリーちゃんもいろいろあったんだね。剣を振るしか能がない姉だけどな」


 私とアリスメリアさん。

 どちらからともなく、微笑みあった。


-----------------------------------------


 ミニャオンは、壁に囲まれている町だった。

 壁の上には、騎士様らしき人達がいる。

 私達は、ほぼ素通りだった。

 けど、町の出入口には並んでいる人達がたくさん。

 帝国の中での騎士団の力はやっぱ凄いんだろうな。


 私達は、そのまま馬車で町の中に進んでいく。

 馬車の窓から見えている景色。

 木造の家が立ち並んでいた。

 大きなお城のようなところに入る。

 私達の馬車は、そこで停止した。


 降りると、騎士様が並んでいる。

 騎士様達は、皆アリスメリアさんを知っているようだ。

 一人一人順番に、挨拶していく。

 最後の一人の挨拶が終わる。

 そこで、アリスメリアさんが挨拶以外の言葉を口にした。


団長(アイツ)は今日はいるか?」


「いえ、現在視察の為、不在にしております」


「そうか。ありがとう」


「何か伝言をお残ししますか?」


「いや、久々に顔を合わせようと思っただけだから気にしないでくれ。呼び止めて悪かったな。自身の仕事に戻ってくれ」


「はっ。失礼します」


 騎士様のうち、何人かが走る。

 馬の手綱を引いて連れて行った。

 他の騎士様は、傭兵団の馬車に荷物を積載していく。


「搬入まで手伝ってもらって申し訳ないな」


 メモーアさんがスキンヘッドの頭を撫でている。


「いえ、お気になさらないで下さい。持ちつ持たれつですよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ