2.セクシーポーラ
「やっぱりここにいたんだ」
「アイビ、戻ったんだ?」
「うん、一時間位前かな? こんな朝からここにいるって事は、マリーは仕事は今日からお休みか」
「うん、そうだよ」
彼女、アイビは私の友人で同室。
仕事の貢献具合で変わるらしい。
けど、私は二年前から、二人部屋を与えられている。
そこに同時期に入ったのが彼女、アイビステス。
アイビの説明だと、私達はペスト帝国イキン傭兵団所属。
と言う事になるらしい。
私やポーラさん、マイーラさんが内勤担当。
だとすれば、彼女は外勤担当。
彼女は元々は別の傭兵団にいたらしい。
だけど、その傭兵団が壊滅したそうだ。
その後、イキン傭兵団に拾われた形だと言ってた。
お互いの担当している仕事。
詳細ついて話しをする事は余り無い。
でもきっと、傭兵団にいた彼女。
武具の扱いに馴れているのだろうな。
外勤が何をするのかは私は余り知らない。
けど、アイビから聞いた話しから予想は出来る。
死ビトを確保して運んで来るのが仕事のようだ。
今ここに常駐している帝国兵。
第二騎士団と第五騎士団だそうだ。
アイビ達と今回一緒に行動したのは第二騎士団のはず。
だってしばらく姿を見てなかったから。
「今日戻ったって事は、アイビは二日か三日お休みなのかな?」
腰に差している剣に皮の鎧。
部屋に戻った後、着替える事もない。
ここに花壇を見に来たのだろうな。
「そうなるかな?」
「でも着替えてから来ればいいのに?」
「いやー、マリーが休みだなんて知らなかったし。それに一週間近く留守にしちゃったからさ。お花達を早く確認したかったんだよね」
私達は戦況の推移に伴って移動する。
だけども、傭兵団としての本拠地は固定だ。
それが今私がいるここになる。
アイビから聞いた話し。
三年前帝国が戦争を開始。
ある程度の範囲を占領。
すると、支配地域を拡大するのをやめたそうだ。
戦争とか戦略とかについての知識。
ほとんど持たない私には、理由はわからない。
アイビが言うには、一気に拡大し過ぎると統治が行き届かなくなる。
だからじゃないかとの事。
それでも帝国周辺の国は、そうもいかない。
占領された領土を取り返そうとする。
だから未だに戦争は継続されているんだそうだ。
「でも、この様子だと、今回も皆が協力してくれてたみたいだね。後でお礼言わなきゃ」
「そうみたい。私も気になってたからさ」
ここには、二年前からアイビが趣味で始めた花壇がある。
ちゃんと傭兵団の団長さんにも許可を貰った花壇だ。
いつしか皆の癒しの場所にもなっていた。
アイビがいない時は、休みでここに残っているメンバー。
率先して世話をするようにしている。
アイビは植物の育て方についてとても詳しい。
だから、休みの時や時間がある時に、アイビに色々教えてもらった。
彼女も自分がいない時にどうするか考えてなかったみたいだった。
快く私達に色々と教えてくれたのだ。
それが花壇が今も問題なく存在している結果となったんだと思う。
少なくとも、私はそう思っているんだ。
「これがアルスーロメーアでこっちがセートポーラ、あれがセッコーだったよね?」
「うん、そうだよ」
「コーオーソーがこっち」
「ちゃんと覚えてくれているね。嬉しいよ」
アイビ本当に嬉しそうだ。
「さて、花達も問題ないようだし、着替えてこよう」
「あ、アイビ朝ご飯は?」
「実はまだなんだよね」
「どうするの?」
「料理長にお願いしたから大丈夫」
「そっか。それじゃ一緒に部屋戻ろう」
「うん、お互いに無事なのもわかったしね」
「ちょっと、物騒な事言わないでよ?」
「あは、ごめんごめん。まぁ、行こうよ」
私とアイビは花壇から自分達の部屋に向かう。
途中で傭兵団の人や騎士団の人とすれ違った。
傭兵団の人達とは、気さくに挨拶する。
けど、騎士団の人達との挨拶はどうしても堅苦しくなる。
それでも、今常駐している騎士団は私は嫌いじゃない。
私がここに来た時の騎士団。
明らかに私達を見下していた。
何か気に食わない事がある。
そうするとそれが難癖でも剣を抜いて私達を威圧する。
斬られて怪我人が出た。
そんな事も、手の指で数えるのでは足りない。
幸い、傷口は浅かった。
けど、私も一度斬られた事がある。
余りにも何度も起きたからなのだろう。
私が来て半年程経過した頃だった。
たぶん騎士団よりも偉いんだろう人達が何人も訪れた。
偉いんだろう人達。
たぶん一つ一つの騎士団との諍い。
その事実について調べに来たのだと思う。
だって、私もいろいろと話しを聞かれたから。
最初の騎士団と違った。
高圧的ではなく、とても好意的だったと思う。
しどろもどろだった私。
急かす事なく叱る事もなかった。
それどころか、私の事を気遣ってくれる。
落ち着かせようとまでしてくれた。
その上で、私の心配をしてくれていた。
数日後に私が話せるかどうかの確認までしてくれたのだ。
こんな親身になってくれる人達。
今度は迷惑は掛けたくないと思った。
本当は怖くて思い出したくなかった。
けど、がんばって思い出して話した。
怖いのに話してくれてありがとう。
そう言われた時は、思わず泣いてしまったぐらいだ。
結局、私が落ち着くまで慰めてくれた。
なので、迷惑を掛けてしまったのだけども。
それからしばらくして、騎士団は違う人達に変わった。
今ここにいる騎士団がそうだ。
前の騎士団がどうなったのかはわからない。
でも、二度とここに配属される事はないって言ってた。
「マリーちゃん、おはよ。アイビちゃん、戻ってたのね。おかえり」
「ポーラさん、ただいまです」
ポーラさんが微笑んでこっちを見ている。
「あ、アイビ、おかえり」
「え? 今更なの?」
「そういえば言ってなかったから」
「そうだけどさ。今更過ぎる。まぁいいけどさ。ただいま、マリー。ところで何してるんです?」
ポーラさんは、ドアのノブを押さえてる。
内側から誰かが開けようとしているようだ。
「いやー、マイーラの奴が突然部屋に来てさ。私をおめかししようとか言い出したんだよね。だから閉じ込めた」
「閉じ込めたって・・・」
アイビが苦笑いになってる。
「おめかししてもらえばいいんじゃないんですか?」
私の言葉に、何故かポーラさんは渋い顔になった。
「いやね。あんな破廉恥な格好は無理。失笑されるのが目に見えている。すけすけで露出過多なのは無理だよ。着せる相手間違ってるでしょ?」
服を見てない私には何も言えない。
アイビも同じようで、微妙な顔してる。
そんな事を話している私達。
ドアノブがゆっくりと回される。
僅かに開いたドアからマイーラさんが見えた。
幽鬼のような表情のマイーラさんが、妖しげに微笑む。
「ポーラ、着るまで私は諦めないよ」
仕事中のマイーラさん。
そこからは考えられないオーラを感じる。
「ポーラさん、マイーラさん、が・・がんばって。マリー行こう」
「まて!? まてってぇ!? お前達助けてはくれないのか?」
ポーラさん、本気で懇願してるよ。
でも、アイビに手を握られた。
私にはどうする事も出来ない。
ポーラさん、ごめんなさい。
「着ればマイーラさんも満足するでしょうし、着てあげるのが大人の心意気だと思いますよ」
ポーラさん、そんなにアイビの言葉がショックだったの?
泣きそうな顔しないでよ。
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アイビは朝ご飯を食べにいった。
私は今部屋で一人でいる。
ぼーっと窓の外を眺めていた。
ドアがノックされる音が私の耳に聞こえて来た。
「はーい」
「マリー、マイーラだ」
ドアを開ける私。
満足顔のマイーラさん。
背後には彼女の軍門にあえなく下ったポーラさん。
ポーラさんの顔は紅潮している。
「おめかしポーラをとくと見よ」
ポーラさんの服装に唖然としていた私。
マイーラさんの言葉に何も反応出来なかった。
まず目に入るのは、私のとは比べものにならない双丘。
思わず自分の貧しい胸元と見比べてしまった。
ポーラさんの今着ている服。
体の中心ラインが、臍の下まで丸見え。
赤い生地で、外側が半透明になっている。
肩も露出していて、胸は丸い生地で中心だけが隠れていた。
その下側から、太腿の外側を隠すようになっている。
けど、脇腹の部分は半透明だ。
股下からVの字に伸びているパンツ。
「やっぱ恥ずかしいって」
マイーラさんの手をひっぱるポーラさん。
部屋の中に入ってきた。
その後に、私に背を向ける。
後ろもVの字だ。
半分以上お尻が露出している。
背中もX字状に紐で結ばれているだけだった。