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ニート、女子とお昼ご飯を楽しむ

(俺はどうしたら・・・)

今、俺は屋上にいる。それも隣に女の子をそれぞれ侍らせながら。

普通の男であれば、嬉しくてしょうがない状況であり、

俺もいつもの状態であればもちろんうれしくて仕方がない。

何なら小躍りしてもいいくらいだ。

「はぁ~」

思わずため息が出てしまった。


「るみぃ!!本当に大丈夫なの!?今日なんかおかしいよ」

「そうだよ~。なんか今日の瑠美ちゃん、ちょっとおかしい気がするぅ~。

何かあった感じ~??」

「もう本当にあなたたちってば、心配なのはわかるけど過剰すぎるわよ。

瑠美、困っているじゃない。」

俺が溜息を吐いてしまった原因でもある3人は、それぞれ心配してくれた。

ここに来るまでの道中で下の名前だけは分かった。

まず俺が教室に入ってきたときに過剰な心配をしていた左隣の彼女は上山佐那。

そして右隣にいる少し抜けたような口調の彼女は茜。

最期に俺の今目の前にいて冷静な態度を取っている彼女は唯。

おそらく、彼女たちはこの瑠美という女の子の友達なのだろう。

お昼休みに入るや否や屋上でご飯しようと提案された俺は、

乗り気はしなかったが、屋上までやってきて、それぞれのお弁当を広げて、

今まさにご飯を食べているところだ。

もちろん俺にも弁当はあった。

彼女の母親が作ったのか、はたまた彼女自身が作ったのかは

分からないが、なんとも美味しそうだ。

ふと、こんなにも美味しそうなお弁当を俺なんかが

食べてもいいのかという想いが過った。

だが、いつまでたっても箸を付けない俺を見て、

彼女たちはますます心配を顔に滲ませていった。


このままでは、また過剰に心配されてしまう。

そんな確信にも似た考えが頭に浮かんだ瞬間、先ほどの考えは打ち消され、

箸を自分の目を一番強く引いた卵焼きに勢いよく、

差し込むとそのまま何の迷いもなく口へと投下した。

瞬間、口に広がる甘さ。

俺が今まで食べてきた卵焼きは基本的にからかったこともあり、正直驚いた。

だがそんな驚きよりもこの卵焼きのおいしさに胸が蕩けるような感覚を覚えた。

(なんだ。この美味しさ!?今まで食べたどんな卵焼きよりも美味しい。

こんなにも美味しい卵焼きがあっていいのか・・・。)

少し大げさだな。と心の中で突っ込むも、俺の食欲は完全に解き放たれたのか、

それからどんどんと箸を食材に差しては口の中へ

投下する流れをすごい勢いで繰り返した。


「え、え、え~!!ななんか、るみぃが

大食いの人みたいになっちゃってるんだけど!!」

「ちょっと瑠美、そんな勢いよく入れたら、のどに詰まるわよ。」

そんな様子を驚きの眼差しで見ていた3人に突っ込みを入れられたため、

(あ、やっちまった)と思ってしまう。

あまりにも美味しすぎて、我を忘れてしまうなんて恥ずかしい・・・。

(というか、今の行動不審に思っているんじゃないか・・・。)


「あはは、瑠美ちゃんそんなにもお腹すいてたの~。

もうびっくりしちゃうでしょ~。ふふ」

しかし、そんな俺の様子を不審に思ってはいないのか、茜はそんなことを言ってきた。

その言葉に心底安心感を覚えながらも、俺の中にまたしても決意が生まれた。


どんなに美味しいものが前にあっても、がっつかないようにしよう。と



そして、そんなこんなで自分の弁当のおいしさに心の中で

何度も舌鼓を打っているうちに、いつの間にか弁当の中は空になり、

他の3人もいつの間にか完食していたようで、弁当に蓋をしていた。


「や~。美味しかったね~。天気もいいし最高に眠くなってきちゃったよぉ~。」

茜はそんな感想を言いながら、なぜか俺の膝に頭を乗せてきた。

(こ、これは噂によく聞く膝枕という奴なのか!?)

恋人同士ならば一度はされるであろう膝枕をされているこの状況。

そして先ほどまでは何も感じなかったが、膝の上という僅かな距離のせいなのか、

茜の髪の毛から漂う甘い匂いに、俺の心は先ほどとは全く違う意味で蕩けさせられた。


だが、その感情を顔に出してはこの瑠美という少女が変態認定をされるだろう。

そう感じてしまうほどに俺の感情は高ぶっていたからだ。


しかし、それだけはあってはならないことだ。

俺は高ぶっていく意識を必死に抑止しながら、言葉を発した

「あ、茜!!くすぐったいよ!」


その瞬間、なぜか3人の顔に驚きが滲んだ。



「え、るみぃが茜のことを呼び捨てにした!?」

俺にはなぜそんな表情を取られたのかがいまいち理解できなかったのだが、

最初に口火を切った上山さんの発言を聞いた瞬間、理解した。



俺が何の気なしに名前を呼び捨てで呼んだことが、

彼女たちにとっては非日常だったということに・・・。


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