第51話 ニート、確認する
そんな表情をされるとは夢にも思っていなかった。
それほどに言ってはいけないフレーズだったのだろうか。
俺はなぜか罪悪感に駆られる。
それと比例するかのように目の前の少女は大粒の涙を流し続ける。
(もしかしてこの娘、さっきの律と逆パターンで男嫌い・・・!?)
男というフレーズが出た瞬間にこうなってしまったのだ。
その仮説は正しいかもしれない。
「ご、ごめんね。そ、そんなふうになるなんておもっていなくて・・・。」
俺はとりあえず、謝ることにした。
まだ慣れない少女の使いそうな言葉を選びながら・・・。
しかし、少女はまだ涙を流し続ける。
俺は彼女のことを全然知らない。
けれども何か彼女の触れられたくない部分に触れてしまったのだろう。
罪悪感と共に俺は少女を抱きしめた。
こんなことをしても逆効果かもしれない。
けれども彼女の涙を止める方法が分からなかったから、
楓さんが自分にしてくれたのと同じようにした。
俺は今のこの状況はこの体であるからこそできることだと思った。
本当の俺はニートで男なのだ。
こんな行為を見ず知らずの少女に対してするというのは
常識的に考えて良くはない。
下手をすれば、児童ポルノで訴えられるかもしれない。
だけど今の俺は女子高生の姿をしている。
いわば女同士で抱きしめあっているのだ。
この状況を見て変に思う人はいないだろう。
じゃれ合っているくらいにしか見えないと思う。
しかし、そんな俺と少女を見て、
楓さんと梓さんは少し訝しげな表情を取っている。
(え、なんだろう。あの二人の顔・・・)
最初から二人の少女を見る顔はどこか冷たかった。
けれどもこれほどまでに涙を流している少女に対して、
慰めの言葉を掛けないだなんて・・・。
先ほど自分が泣きながら浴場から出てきたときの様子と
比較するとおおよそ信じられなかった。
俺は少女を抱きしめる力を知らず知らずのうちに
強めてしまっていたようで、少女の体に自分の手が食い込む。
(うん?あれ??)
手が食い込むにつれて、明らかな違和感が駆け巡った。
確かめるようにその辺りを触る。
少女はいまだに泣いているからなのか、
俺のそんな不審な行動には気づかない。
(あ、あれ???)
まさかなとは思いながらも触り続ける。
(む、胸の感触が全くない。)
もしかしたらこの子は絶壁の貧乳なのではとも思った。
そうだとしたら、すごく失礼なことをしている。
けれどもこの少女のこの固さはなんだろうか。
手に触れる彼女の胸は少しの出っ張りもなく硬かった。
俺はいけないことだという自覚はあったが、
どうしても気になってしまった。
覚悟を決めよう。
俺の彼女を抱きしめていた手は無意識のうちに、ある場所へと向かう。
少女はそんな俺の行動にまだ気づいていない。
(これは確認。確認のため。なにもやらしい意図はない。)
俺は自分の中で無意味な言い訳を繰り返し、その場所へと手を差し入れた。