表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/69

第49話 ニート、お姉さまになる

「ふえぇすみませんすみません!わ、わたしがふがいないば、っかりに」

彼女は俺の手を掴んで起き上がったかと思えば、

凄い勢いで頭を上下に振りながら謝り続けた。

その姿はさながら、ヘトバンのようだ。


しかし、そんな風にされてしまうとこっちがものすごく悪いことを

したみたいでどうにもやるせない気持ちになる。

「あ、あの全然大丈夫ですから、謝るのやめて・・・。」


俺は彼女の肩に手を置いて、頭の振りをやや強引に止めた。

こうでもしないと、いつまでも続けそうで妙に怖かった。


彼女は俺の顔を見た瞬間、頬を赤らめた。

なんでそんな風な顔になったのか分からないが、

感情の起伏が激しそうだなとは思った。


「あ、やっと止まったのね」

そして遠巻きに見ていた。いや避けていた楓さんがこちらに近づいてきた。

梓さんは今俺になぜか熱い視線を向ける少女をちらっと見るが、何も言わない。


(あれ?この二人仲が悪いのかな)


「ちょっと、あなた達今は瑠美さんに部屋の案内をしている最中ですのよ」

そんな二人の無言の間を見兼ねてなのか、梓さんが声を上げた。

彼女は楓さんと違って、敵意はないようだ。


「ああ、そうだったわね。」

そして楓さんも当初の目的を思い出したようで、先ほどの明るい雰囲気に戻る。


少女はまだ俺に熱い視線を向けているが、なぜなのか本当に分からない。

というかこの子は誰なんだ??


俺はさっきまでの少女の奇怪な行動によって忘れていたが、

また新しい子が出てきてしまったことに驚いた。

(この屋敷にはいったい何人住んでいるんだ?)


見るからに大きな屋敷だから、人がいることは想定できる。

しかし、律を除けば、俺はこの屋敷に入ってから少女にしか会っていない。

彼女たちがあの優季と呼ばれた男性の娘ということは絶対にないだろうし、

家族というにはあまりにも似てなさすぎる。


だとしたら、彼は一体・・・。

そして彼女たちとの関係は何なんだろう。


「お姉さまお姉さま」

俺が少し考えを巡らせていると、さっきの少女が

俺の服の裾をくいくいと掴んでいた。

そして潤んだ瞳を俺に向けてくる彼女。


彼女は俺が視線を合わせると、また顔を赤らめた。

「お姉さま、可愛いです」


そのまま口にされた言葉を聞いた瞬間、俺は戸惑いを隠せなかった。

(お、お姉さまって・・・。俺の事!?)


ちらっと楓さんと梓さんを見ると、

梓さんは眉間をぴくぴくとさせ、少しだけ怒りを露にしていて、

楓さんはまた始まったと言わんばかりに頭を抱えながらうなっていた。


そしてそんな俺たちを遠巻きに美咲ちゃんはにやにやしながら見ている


(な、なんだこの状況!?)



その頃

優季はある場所へ向けて電話を掛けていた。


「あ~。また留守番か。いったいどうなっているんだ。

彼女の親御さんに一度連絡を入れようと思っていたのに、

なぜいつまで経っても出ないんだ。

もう家にどっちか帰っていてもおかしくないはず・・・。

いや共働きなのか。ただそうだとしても、

彼女と会った時のあの口ぶりからするに・・・。しょうがない。

風間、ちょっと。」

優季はスーツを着た男性を呼びつけ、紙を渡した。


「風間、悪いんだが明日この家に行って、事情を説明してきてくれないか。」


風間と呼ばれた男性は笑みを浮かべながら、頷きその紙をポケットに入れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ