第48話 ニート、部屋を案内される。
「ここがこれからあなたの部屋になる場所ですわ。」
お風呂から出た俺は3人につれられ、部屋の前まで来ていた
部屋にはカギがかけられていたが、
梓さんがパジャマのポケットから鍵を取り出すと、それを差し込んだ。
ガチャ
鍵が開く音がしたのを確認した梓さんは俺の手にその鍵を乗せる。
「はい。これからはこの鍵はあなたが持っていて。
無くさないようにしてくださいね。」
どうやら俺にこの部屋の鍵をくれるようだ。
「あ、ありがとうございます」
素直に感謝を述べた俺を見る梓さんは笑顔を浮かべる。
その表情には優しさが滲んでいた。
そして俺は促されるがまま、部屋の扉を開けた。
部屋の中はすごく綺麗で整理整頓が為されていた。
ベッドに大きめのタンス、クローゼット、
さらには勉強のための机かと思しき机。
生活に必要であろう内装がそこには広がっていた。
(お、俺の部屋よりもいい内装でなんだこの広さは・・・。)
お風呂の時も思っていた事ではあったが、
この家の中の部屋の規模は普通のモノとは比較にならないものがある。
今だって、目の前に広がっている光景はまるでドラマやアニメに
出てくるようなお金持ちの部屋そのもので、
おそらく自分の部屋の5倍くらいの広さはあるのではないか。
ただ、その部屋は女子高生が使うためにあしらわれたのであろう。
ベッドの脇には可愛らしいぬいぐるみが3匹鎮座し、
それが置かれているベッドはピンクと白色という感じの色合い。
クローゼットやタンスもカラフルな色彩や模様があしらわれていて、
机の上にはカラフルなペンやキャラ消しと呼ばれるものが置かれていた。
そしてどことなく漂うこの甘い匂い。
まるでついさっきまでこの部屋に女子がいたような・・・。
とそこまで考えて、はっと気づく。
(この部屋は誰かが使っていたのではないか・・・)
そう考えれば、全てのことに納得がいく。
誰か別の女性がこの部屋に住んでいたのだとしたら、
こういう内装になっていてもおかしくはない。
だけど、もしそうだとしたら、この部屋にいた女性はどこへ行ったんだ
まさか俺のために追い出されたとかそんなこと、ない・・・。よな?
この体になってから、ついつい悪い方向に物事を考えるようになってしまった。
これは俺が女子高生の精神に振り回されているということなのかもしれないが、
今はそんなことは別にどうでも良かった。
この部屋についての真相を知らなければ・・・。
「あ、あの梓さん、この部屋って・・・。」
梓さんにこの部屋のことを聞こうとしたその時、
ドアの隙間から俺たちのことを覗いている人に気付き、びっくりしてしまう。
そんな俺の反応に覗いていた方もびっくりしたのか、
驚いて後ろに下がろうとしたのだろう。
しかし、彼女は無残にも自分の足につまずいて、
凄い音を立てて倒れてしまった。
「ふ、ふえ!?痛いよぉ。恥ずかしいよぉ」
彼女は尻もちをつきながら、自分の今の状況を嘆き始める。
それほどに恥ずかしかったのか、顔は真っ赤に染まっていて、
こちらと目線を合わせようとしない。
俺はなんだか悪いことをしてしまったなと思いながらも、
こかしてしまった原因を作ってしまったこともあり、
彼女へ近づくと手を差し伸べる。
「え、え~と、大丈夫ですか?」