表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/69

第44話 ニート。忘れる

俺はまたしてもやってしまった。

ついつい自分のしていたゲームの話になると

雄弁になってしまう自分自身のサガを酷く恨む。


これのせいで俺は昔から人と溝が出来ていたのに、またやってしまった。

ニートになって人と話す機会も乏しくなっていたからなのか、

止まることが出来なかった。


おそらく、この青年も今ので完全に引いてしまったことだろう。

ただ、俺自身がそういう引かれるという印象を

持たれてしまうことにはもう慣れていた。

だけど、今のこの体は女子高生の少女のものだ。

そんな少女が見知らぬ青年に引かれる要因を作ってしまうのは

どう考えても良くはない。


罪悪感がまたしても胸に広がる中、俺は彼の表情を見ようと思った。

おそらく大いに引いているだろう。

そんな確信にも似た思いを胸に顔を上げる。


「えっ・・・・。」

顔を上げた先にあったのは、今まで馴れしたしんだ

あの冷たい表情ではなかった。

青年の瞳はまるで仲間を見つけた少年のようにキラキラとし、

表情からは楽し気な感じが見て取れる。

こんな反応をされるとは思ってもいなかった。


「あ、あの・・・。なんでそんな顔をしているんですか?」

恐る恐るその表情の真意を聞いてみた。


「なんでって・・・。だって嬉しいからじゃないですか!!

Twinkle-maginaのことをこんなにもよく知っている人が

ボクの目の前にいる。こんなにも嬉しいことが他にありますか!!

ボク、この屋敷に来てから俊にぃとしか話さなくて、

そんな俊にぃもゲームのことは全然知らなくて、

ボクはTwinkle-maginaのことを

ずっとほかの人と話し合いたかった。

そんな人をボクはずっと探していました!!

そんな時に貴方は僕の前に現れてくれました!!

これを運命の出会いと言わずして、なんというんですか!!」


青年は本当に嬉しそうにその真意を語ってくれた。

それは俺が今まで味わってきたような侮蔑などではなく、

純粋な喜びを表すもので、俺の目からはなぜだか涙が零れていた。


「あ、でも勘違いしないでくださいね。

運命の相手とはいってもボク達は男同士なので、

恋愛的な意味ではないですから!!」


そしてそのまま、青年は言葉を続けた。

そんな訂正普通は必要がないはずことだが、

Twinkle-maginaのことを知っている俺は、

それもあのゲームのセリフの一つだということにすぐに気づいた。

だから俺は、目を擦り涙を拭い去りながら、満面の笑みを浮かべながら口を開く。


「もちろんだよ。俺と君は運命の出会い方をしたのかもしれない、

けれどもそれは恋ではない。友情の運命だ。俺と友達になってくれるか?」


青年はその言葉を聞いた瞬間、やはり思った通りという表情を取り、笑った。


「はい!こちらこそよろしくお願いします。ボクの名前は紫峰 律です。」

青年、もとい律は握手を求めるように、握っていない方の手を差し出す。


俺はそんな彼の手をぎゅっと握りしめた。

「よろしく。俺の名前は鈴村湊。

後敬語じゃなくてタメ語で大丈夫だよ。友達になったわけだしさ。」


「あ、はい、わかりました。いや、わかったよ。湊」


青年は真面目なのか途中で言い直したが、

それがまた俺にとっては良かった。

高校以来初めての友達。

それもゲームの話ができる友達なんて今までいなかった。

そんな俺に今、久しぶりに友達ができた。

こんなにも嬉しいことは他にはないだろう。



俺と律はそのまま楽し気にTwinkle-maginaのことを

話ながら、脱衣所の扉までたどり着いた。




あまりにも嬉しすぎて俺はすっかり忘れていたことがあった。

今の自分の体が女性だったということを。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ