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第43話 ニート、張り合う

「ど、どうかしましたか?」

俺が自己嫌悪に陥っていることに気付いたのか、

それとも動きが止まってしまったのを不審に思われたのかは分からないが、

彼はそう問いかけてくる。


「あ、いや、なんでもないです。それじゃあ行きましょうか。

滑ると危ないので気を付けてくださいね。」

一度頭を振って、一旦この胸を覆っている負の感情を取り払い、歩を進めた。


彼の手は本当に男性らしい手だった。

数時間前まで俺も同じような手をしていたわけだが、

女性の手とは違って骨ばっていて固かった。

けれども彼から感じる温もりはさっきまで

お風呂に浸かっていたということもあってなのか、

心地よい暖かさがあって、さっきまで自分の中にあったはずの

さびしいという感情だけはいつの間にか溶けていた。



「そ、それにしても本当に助かりました。

こ、の時間にお風呂に入る人ってぼくと俊にぃしかいなくて・・・。

でも今日は俊にぃは出張とか何とかでここにはいなくて・・・。」

彼は俺が沈黙しながら、歩を進めていたことに気を遣ってなのか、

ぼそぼそとそんなことを言い始めた。


「あ~。そうだったんですね。」

なるべく女だということがバレないように相槌を打った。

少し、投げやりな相槌な感もあったけど、こういう他なかった。


それにしても、また知らない名前が出てきてしまった。

俊にぃか・・・。

にぃとつくということは男の人だとは思う。

そして出張という言葉から社会人であることも間違いない。


ただ、ここから一刻も早く逃げようとしている

俺にとっては些末なことではあるが・・・。


「あ~。でもなんかさっきのシチュエーション。

Twinkle-maginaの温泉イベントでの

康一とあずねぇのシーンに似てたなぁ。」

彼はまたしてもぼそぼそと言葉を紡いでいった。

ただ、今回の言葉に関してだけは、相槌で終わらすことはできない。


「いやいや、今のはプールイベントの時に康一がリカに

眼鏡を踏まれた後のシーンだと思いますけどね。」

言葉を発してしまった瞬間、後方で息をのむ音がしたのと共に、

俺はしまったと思った。


「ご、ごめんなさ」

「え、あなたもTwinkle-magina遊んだことあるんですか!?

あ~。でもそうですよね。貴方の言う通りかもしれません。

ここがお風呂であるという背景にばかり目を取られてしまいましたが、そうですよ。

これはあのトィマジの中でも名シーンの一つにも数えられる康一の眼鏡を

リカがビーチバレーで熱くなりすぎて、踏んじゃって壊してしまって、

康一の手を引きながらロッジに戻っていくあのシーンの方が似ています!!

あれの後くらいから康一とリカの距離がどんどん近づいて・・・。って、あ」


俺はついつい口を出してしまったことを謝ろうと思ったのだが、

彼の突然の饒舌っぷりにその言葉の続きは潰されてしまった。

先ほどとはまるで別人のような彼に俺は開いた口が塞がらなかった。


ただ、そのことに彼も気付いたのだろう。

彼もまたやってしまったと言わんばかりの表情を取った。


「す、すみません。ボ、ボクの他にTwinkle-maginaを

遊んでいる人が周りにいなかったので、ついつい興奮しちゃって・・・。

は、恥ずかしい。」

彼はその言葉を言うや否や顔を赤くしてしまった。

それほどに恥ずかしかったのだろう。


だけど、そんな事よりも俺は彼に言わなければいけないことがあった。


「いや、リカと康一の距離が近づいたのはその前日に康一が言った

「お前の水着姿なんて見たところで何も思わねぇよ」っていう台詞に対して、

リカが今まではただの友達だと思っていたはずの康一に

なぜかその時怒りが沸いてピンタを繰り出したという伏線があって、

その回収のために両方にお互いを異性だと認識させるための

あのシーンという解釈に立つと、あのプールシーンの時からではなく、

その前の会話自体が距離が近づくことになった要因なのではないかと思いますけど・・・。」


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