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第40話 ニート、危険に気付く

この言い知れようのない孤独感を紛らわすために無我夢中で洗った。

目の前には女性の裸や秘部が丸見えだというのに

全く微塵もいやらしい気持ちにはならなかった。

それほどまでに別の感情が心を支配してしまっていたのだ。


体も入念に洗い終わった俺はシャワーで体に付いた泡を完全に落とした。

そして、家にあるものとは比較にならないほど大きな湯に向かった。

もう温泉というしか表現できないほどの大きな湯舟が広がっていた。


俺はいつもはしない。というよりもあまり温泉に行く機会がなかったため、

作法はよく知らないが、一つだけ知っていることもあった。


それはタオルを湯船に付けてはいけないということだ。



タオルを外し、生まれたままの姿になり、足を湯船に近づけた。

「あっ・・・。」

あまりにもいい湯加減のお湯が足を通して体に伝わったためか、

あられもない声が出てしまう。

「気持ちいい」

そして、そのまま足を動かしてみる。


単純に気持ちが良かった。

先ほどまで感じていた寂しさや不安といった負の感情が

ほんの少しだけど和らいだ気がする。


もう足湯だけでも満足はしていた。

だけど、なぜか奥の方に呼び寄せられているようなそんな変な感覚がして、

俺はそのまま、湯舟の中へと足から腰までを浸けると、奥の方へと進んでいった。


お湯をかき分けながら、前へと進んでいくと

そこには不自然としか言いようがない大きな石が置かれていた。


(こんなところまで温泉を再現しているのかな)


その大きな石はよくマンガやアニメとかの温泉回で見るようなそんな石だった。

その石に触れると表面はひんやりと冷たくて、

下半身に感じるお湯の暖かさと比例してすごく気持ちがよくて、

無意識のうちに顔をくっつけってしまっていた。


「ふぅ~。なんか気持ちいい・・・。」


俺の心の中を占めていた負の感情はいつの間にか消え去っていた。

今はこの気持ちのいい温泉に心を癒されていた。



石にもたれ掛かって数分が経とうとしていた頃。

俺は何か違和感を感じていた。


というのも、このお風呂の中にいるのは自分だけだというのにもかかわらず、

なぜか人の気配がどこからか伝わってくるのだ。

よくよく考えれば、この湯船の中に足を付けた時から

小さくではあったものの波のようなものが立っていた。

これは他にも人が浸かっていることに他ならない。


たださっきまで負の感情に支配されていた俺はそのことに気付けなかった。


しかし、もしも俺以外にも人がいるのだとすれば、この状況は危険でしかない。

ここは男性用浴場なのだ。ということは俺以外に入っているのは間違いなく男


こっちは今は女であり、なおかつ全裸である

男湯に女がそれも全裸で入っているというのはどう見ても不自然だし、

襲われてもいいと思われても仕方がないのではないか。

俺がもしそんな状況に直面したら、何かを勘違いしてしまうかもしれない。


間違いが起きてもおかしくない状況に置かれてしまっているのだと。

今更ながら気づいてしまった。


(やばい。ここから早く逃げないと・・・。犯される!!)


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