第36話 ニート、脱ぎ始める
どうにか3人と別々の脱衣所に入ることのできた俺は安心していた。
中はもう温泉の脱衣所と変わりなく、
たくさんの棚の上にかごとタオルが置かれている。
(なんでこんな家の中にこんな大量の人が来ても
大丈夫そうな浴場があるんだ)
そんな疑問を抱える俺。
しかし、俺としては、それよりももっと急を要する問題点があった。
お風呂に入るということ。
それはつまり服を脱いでしまわなくてはいけないということ。
至極、常識的なことではあるが、今の俺にとってこのことを
実践するのはひどく困難を要する。
体育の着替えの際も思っていたことだが、俺は女性の体に対する耐性がない。
それは今自分が入っているこの体といえど、例外ではない。
それに加えて、この体は俺の理想の胸のサイズを持っており、
ただでさえ、女性の体が苦手な俺がそんなものに直面した時に
受ける刺激に耐えられるはずがないのだ。
さっきの体育の時は下着の上からでも気絶しかけたというのに、
今度はその下着さえもを取り払わなくてはならない。
どう考えても、詰んでいた。
しかし、先に女性用に入っていた3人のことを考えると、
そんなことも言っていられない。
きっと彼女たちの事だ。
心配して待ってくれているに違いない。
俺は目を閉じて、覚悟を決める。
とりあえず、制服のシャツのボタンをはずしていく。
プチ、プチと外していく内に、遮断している視界とは別に
聴覚と触覚が敏感になってしまう。
音がよく聞こえる。
ボタンを外していく音、シャツの衣擦れする音、全てが耳に届く。
言いしれようのない背徳感が俺の心を襲う。
プチ
なんとか全てのボタンを外し終えた俺は、制服のシャツを脱いだ。
(これでやっと第一関門はクリアだ。)
そして、そのままの勢いで、シャツの裾を持ち上げていき、
シャツもなんとか脱ぎ去ることに成功した。
ここまでは順調だった。
しかし、最後の関門が俺の目の前に悠然と立ちはだかってきた。
そう、ブラジャーである。
目を閉じたまま、慎重にブラジャーに手を触れる。
「あ、ん」
思わず、自分の手が乳首の辺りに触れてしまい、情けない声を上げてしまう。
そんな反応を浮かべてしまった自分がひどく恥ずかしかった。
しかし、そんなところでやきもきしている場合ではない。
さっきの刺激のおかげでなんとかブラジャーの輪郭を捕えることができたため、
俺はその端を掴んで、シャツにした時のように脱ごうとした。
しかし・・・。
(あ、あれ?)
なんと、何かが引っ掛かって、ブラジャーを脱ぐことができないのだ。
強引にやろうとも思ったが、そんなことをして壊れでもしたら洒落にならない。
俺は何か脱ぐためのヒントはないものかと、ブラジャーを弄った。
乳首に触れないようにと細心の注意を払いながら。
(あ、これかな・・・。)
弄りながら、あるものを見つけてしまった。
それはブラジャーの中央付近に付けられていて、留め具のような感触があった。
俺はその留め具のようなものに手をかける。
しかし、目が見えていない俺にはそこからどうするのが最善なのか分からない。
(う~ん、どうしようか・・・。)
俺は悩んだ。
このままではいつまでたってもブラジャーを脱ぐことができない。
だからと言って、目を開けて確認しながらするというのもいかがなものか。
だが、よくよく考えてみれば、このあとお風呂に入るということは
否が応でもそれは目に入るわけで、俺は覚悟を決めた。
目を開き、その先にあったのはブラジャーに覆われた理想の大きさの胸と
女性らしさを表現している綺麗で柔らかそうな上半身だった。




