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第35話 ニート、苦渋の選択をする

目の前に広がっていたのは、扉の大きさに比例するかのごとき大浴場だった。

昔行った修学旅行の時の温泉や大浴場よりも遥かに広かった。

俺の家の風呂の大きさと比べると、本当に規格外の大きさで思わず後ろに

仰け反ってしまう。

というか、軽く俺の家よりも敷地面積あるんじゃないのか。

そう思わせるような空間がそこにはあった。


それだけではない。

「お姉ちゃん、こっちこっち」

またしても、美咲ちゃんに手を引っ張られて連れて行かれたのは、脱衣所だった。

お風呂場の大きさに目を取られて気付かなかったが、

お風呂場に進むまでの道の端っこにそれはあったのだ。


目に映るのは、男性用、女性用という張り紙が貼ってある扉だった。

こういうところまでも温泉のようだった。


だが、今考えるべきはそこではない。

これは俺はどちらの脱衣所を使うべきなのだろうか。

いや、普通に考えれば、というか今の姿から

女性用に入らなくてはならないことはわかっていた。

だけど、その中身は男なのだ。

男である俺が男子禁制である女性用の脱衣所に入っていいものなのか。

いやいけない。


というか、同じことを学校の体育の時も考えてはいたが、

あの時はしょうがない。

女性用しか存在しなかったのだから。

だけど、今は確かに男性用も存在するのだ。

これはぜひとも男性用を使いたいところであった。


というか、本当はお風呂に入ることすら

嫌なことというかしてはいけないことなのだが、

この3人の様子からしてその選択をすることはどうも許されそうにない。


たとえ、お風呂の中が男女一緒になっていたとしても

女性であれば、タオルで体を隠してくれるはずだ。

気を付けるべきはむしろ脱衣所だ。

脱衣所ということは服を脱ぐことを強いられ、

そこでは生まれた時の姿になる。

そんな時にタオルを巻くことなどあまりしないはずだ。

それに彼女たちの下着を見てしまうことになるかもしれない。


なんとしてでも、男性用に入らねば・・・。

そんな想いに俺の思考は支配される。

しかし、どうやって説得するべきか。

女子高生が男性用を使いたがることなんて、絶対にない事だろうし、

下手に怪しまれかねない。

俺は頭を振り絞る。



「お姉ちゃん、入らないの?」

美咲ちゃんがくいくいと先を促すように手を引っ張ってくる。


俺は意を決すると、口を開いた。

「う、う~ん、私、こっちを使わせてもらえませんか?恥ずかしいので・・・。」


俺は男性用を指さしながら、もじもじとしてみた。

我ながら、その動作は気持ち悪いと思ってしまったが、苦渋の選択だった。

ここで、それはダメよ。とでも言われようものなら

“生理中”だから一人で準備したいとでも言おう。

そう意気込んでいた。


楓と梓さんは顔を見合わせる。

しかし、何かに思い至ったのか、少し悲しげな表情を取りながら口を開く


「ああ、うん、別にいいわよ。この時間だから誰も入っていないと思うし・・・。」


俺は驚いてしまった。

案外簡単に俺の提案を受け入れてくれたことに。

しかし、これは俺にとって好都合な展開だったため、

そのままそそくさと男性用脱衣所へと入っていった


ただ、そんな俺を見る楓さんと梓さんの目はどこか心配しているようだったが・・・。


瑠美が男性用脱衣所へ入っていった後、3人は普通に女性用へと入っていった。


「はぁ、あんなふうに言われたら断れないじゃない。

恥ずかしいってやっぱりあの方・・・。」

「うん、多分あの子、親に虐待か暴行を受けているんだわ。

それでその傷を見られるのが恥ずかしいんだと・・・。

あの子、大丈夫かなぁ。早く私たちのことを信頼してもらわなきゃね。」

珍しく、楓と梓は意見が一致したのか、頷きあっていた。


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