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第34話 ニート、お風呂に向かう(強引)

妙に4人の様子が優しくなったことに不気味ささえ感じてしまったが、

今はそれどころではない。

早く家に帰らねばならない。そうしないと瑠美さんの家族に心配をかけてしまう。


だけど、その選択肢は許されなかった。


「それじゃあ、まあ自己紹介も一応は終わったことだ。

この家の中を案内するよ。と言いたいところだが、もう時間も遅い。

明日改めて案内させてもらうことにしよう。

今日は女の子同士お風呂に入って、親睦を深めてくるといい。」


「え?」

青年のそんな突拍子もない提案に思わず、驚きの声を上げてしまう。

(お、お風呂って!・え・・・。いやいやいや。

俺今は女になってはいるけど男だし、そんなことしていいわけがない・・・。

それにお風呂になんて入ってしまっては絶対に家に帰ることができない。)


女の子と一緒にお風呂に入ることだなんて、

幼稚園の頃に親と温泉に行った時から全くない。

そのことに加えて、先ほどの体育前後の着替えの時もそうだが、

俺は女性に対する耐性が全くないのだ。

そんな俺が女の子、それもこんな年の近い女の子たちと

一緒に入ることなどあってはならない。


俺の心の中には一層、

この屋敷から即刻抜け出さなくてはならないという使命感が生まれた。


しかし、そんな俺の心中とは裏腹に

3人の女子たちは楽しそうな笑みを浮かべている。

いや、むしろ俺のことを楽しい気分にしてくれようとしているようにも見える。


(美咲ちゃんは別としても、この二人のこの豹変ぶりはどういうことなのだろうか。)

俺の心にはひたすらに疑問符が浮かぶ。


「それじゃあ、お姉ちゃんお風呂行こ♪」

美咲ちゃんが立ち上がったかと思うと、俺の腕を引く。

そしてそれに続くかのように梓さんと楓さんも立ち上がる。


ここは美咲ちゃんの手を振りほどいてでも、この場から逃げ出さなくてはいけない。


しかし、こんな可愛らしい笑みを浮かべながら手を引いてくれる

美咲ちゃんの手を強引に振り解けるほどに俺は非情になることができない。


(くそ、こんな幼い少女にまで洗脳をして、こんな風に操るだなんて・・・。

この青年、思ったより厄介だな。)

ついつい青年を睨みつけてしまったが、彼はにこやかに微笑むばかりで、

こちらの意図を気にはしていない様だ。


「こっちこっち~♪♪」

美咲ちゃんの柔らかい手が俺のことを導くように

ギュっと力を入れて握ってくる。


(仕方がないか・・・)

この状況を打開する術が現時点で何一つ思い浮かばなかった俺は

美咲ちゃんの進む先へ着いていく。

そして、それに同行するように楓と梓さんも後ろからついてきた。



「ついたよ~♪」

美咲ちゃんは満面の笑みを浮かべながら、こちらを振り返る。


そこにあったのは扉だった。

しかし、その扉は俺が知っている風呂場へ続く扉の大きさではなかった。

俺の家にある洗面所に続く扉の3倍・・・。いや5倍はあるだろう。

温泉にあるような扉よりもはるかに大きい扉。

この中に本当にお風呂があるのか・・・。


俺がその扉の大きさに躊躇っていると、後ろにいた楓さんが前に出てきていた。

「それじゃあ、まあ開けるわね。あ、すごく大きなお風呂だから

最初はびっくりさせちゃうかもしれないわね。

私も最初、すごくびっくりしたもの。」

楓さんはそう言いながら、扉を押す。


どうやらこの扉は押すことによって開く扉のようだ。


扉が開き、中が見えた瞬間。

俺は思わずため息とともに声を漏らしてしまった。


「え?なにこれ!?」


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