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第33話 ニート、またもや心配される

ただ、そうだとしたら、この青年は本当に危ない人間なのかもしれない。

3人を誘拐しておいて、この笑顔を浮かべることができ、

かつこの3人の態度や言動から察するにかなり心酔させているようだ。

誘拐された被害者が加害者を心酔することなんて、一つしかその理由はない。


洗脳だ。

以前、俺がよく遊んでいたゲームでも同じシチュエーションがあった。

あの時はもっとたくさんの人間が誘拐されて、

洗脳されて心身ともに手籠めにされていた。


やばいな。

俺は先ほどの言葉から青年の異常性を再確認した。

というか、既にもうこの状況は詰みなのではないか。

こんな青年の領域とも取れる屋敷の中に連れてこられて、

逃げることなんてできるのだろうか。

それにこの洗脳された3人にも俺が逃げようとしたら

止めるように指示しているのだとしたら、もう万策が尽きている。


このままでは本当に犯されてしまう。

どうにかして、逃げなければ・・・。

そんな思考が俺の心を支配していった。



思わず、握られていた手にも力が入ってしまう。


「ハハハ、そんな緊張する必要はないよ。

さぁ、次は君の自己紹介の番だ。

落ち着いて君のことを皆に話してくれないか。」


俺は逃げることを考えるのに精一杯でそのことを忘れてしまっていた。

楓と梓さんは依然として敵対視のような表情を浮かべているが、

美咲ちゃんはウキウキワクワクという心理がひしひしと伝わってくる。


洗脳された末の表情だとは分かってはいても、

こういった表情を向けられることに慣れていない。


「え、え~と速見瑠美です。」

つい9時間前まで鈴村湊だった俺に、

即座に偽名を打ち出すことはできなかった。


俺が発したのは多分、瑠美さんのフルネームだった。

というか、それしか俺は現状何も知らない。

趣味も好きなものも何も俺には分からない。


だからこそ、自己紹介もそうと呼べる情報を並べることなどできずに、

名前だけしかいうことしかできなかった。


ただ、この簡素過ぎる自己紹介は、彼らに心配を与えることになった。


(え、この子、名前しか言うことがないということなの?

いったい、どういう風に生きてきたら、そんな風になるの!?)

(こ、この方、本当にそれだけしか言うことがない

みたいな表情をなさっているわね。なんだか悪いことをしちゃったわ)

(この子の親は本当にどんな生活を強いていたんだ。

そんな親のところに帰したのでは、我が神橋家の名が廃れてしまう。

それに俺自身この子の将来が心配になってきてしまった。

この子の不安を早く取り除いて早く俺たちが

この子の新しい家族になってあげなければ!!)



いつの間にか、楓さんと梓さんの俺を見る目が優しくなっていることに気付く。

さながら妹を見守る姉のようなそんな慈愛に満ちた表情。

そして青年もなぜか覚悟を決めたような表情を取っている。


その上、なぜか先ほどから美咲ちゃんが俺の頭を優しく撫でていた。


(え、な、なんだ・・・。何が起こったんだ?

ってそんなことはいい。俺はここから早く逃げなきゃいけないんだ。)


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