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第31話 ニート、逃げられない

「むぐっ」

お嬢様風の少女だった彼女は青年の言葉を聞いて真っ先に口を噤んだ。

そしてつい10分ほど前と同じような穏やかな笑みを浮かべる


ただ、先ほどの彼女の変貌ぶりを見てしまった俺としては、

その姿が猫かぶりの偽りの姿だったのだと気づき、少々怖くなった。

(女の人って・・・。なんか怖いなぁ)


カチャン


青年は手に持っていたお盆を机の上に置くと、そのお盆に乗っていた

コップを5人に配置するように置いた。

「さてと、楓と梓、喧嘩はその変にしてお菓子でも食べような。

歓迎会も兼ねて。君も美咲のことをありがとうな。

それと連れてきてそうそう、変なものを見せてしまったすまなかったな。

二人とも悪い子ではないんだが、ちょっとな・・・。」

青年はけんかで気まずくなっている少女を席へ促しながら、

俺に対して感謝と謝罪の言葉を述べる。


ただ、俺はその言葉の一部分について、聞き逃すことができなかった。

「歓迎会・・・?」


歓迎会。

その言葉は聞こえはいい言葉かもしれないが、

今置かれているこの異様な状態から考えると、

いささかいい意味に捕えることができない。

誘拐された。

それなのに、こんな屋敷に住まわされることになってしまったとあっては、

本当にこの青年から逃れられない気しかしない。

そもそもこの体の本来の持ち主である瑠美さんや彼女の家族が心配しないわけがない。


それに歓迎会という言葉を聞いた瞬間くらいから、

先ほどまで喧嘩していた少女たちもまるでライバルが

現れた時の表情のような顔を浮かべている。

この流れは危ない気がした。


「いやいや。歓迎会なんて必要ないですよ。

私もうそろそろ家に帰りますので・・・。」

この状況から一刻も早く逃れるために出された言葉だった。

そしてその言葉の通りに遂行しようと立ち上がろうとした。


「まあまあ、そんなことを言ったって帰る場所がないんだろ。

遠慮をすることはないんだ。ここは今から君の家でもあるのだから。」

しかし、俺の思惑を完全に遠慮していると勘違いをしたのか、

青年は俺の手をまたしても強くつかむと、席に座り直させた。


(この人。さっきも思ったけどかなり強引だ)

掴まれている手を振りほどこうとするも、振りほどけない。


「それじゃあ、まあ歓迎会ということで自己紹介でもしていこうか。」

俺の思惑とは裏腹に歓迎会?は始まってしまった。



「それで誰から自己紹介する?彼女は少し緊張しているだろうから

最後にしてもらうとして、う~ん、やっぱりここは梓からしてくれるか?」

先ほどのことを反省してなのか、少し大人しくしていたお嬢様風の少女に

青年は初めに自己紹介をするように促した。

すると、彼女の表情筋はパァ~と明るくなり、

ほら、やっぱりねと言うような雰囲気を浮かべながら、姿勢を正す。

その際、地味にお姉さん風の少女にどや顔を向けていたが、見なかったことにしよう。


「優さまに“まず最初に”自己紹介するように勧めていただいた梓といいますわ。

好きなものは優さまと美味しい紅茶に美味しいケーキですわ!!

趣味はまあ、読書ですわね。まあ、このくらいかしら。

それじゃあ、次はそうですわね。“2番目の女”にふさわしい楓さん、どうぞ」

お嬢様風の少女、改め梓はお嬢様が言いそうな言葉を述べながら、

終始隣に座っているお姉さま風の少女を横目に見ながら、

最後はマウントを取っていた。


(あ、この二人仲悪いんだろうな・・・)

そんな確信を抱きながら、俺は楓と呼ばれた少女を見た。


傍から見ても分かるくらい、怒りを露にしていた。


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