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第27話 冷静な青年と漏れそうな少女

新キャラ2人 初登場回です


2人が今後、湊達とどう関わることになるのか、乞うご期待

湊が青年のタクシーで彼の家に連れて行かれている頃。


「はぁ、どうしようかなぁ。これ。」

青年は自分の姿を公衆トイレで見ながら、頭を傾げていた。

一見してみれば、よく見る光景に違いない。

男がトイレの鏡の前で身だしなみを確認することはデート前や

会社のプレゼン前など、はたまた緊張した時などに

取る行動として何らおかしなことはない。


ただ、彼に関してはその場所と姿勢がその日常を異常なものへと変えていた。

まず場所に関しては、男子禁制の女子トイレの鏡の前。

これは公衆トイレであり、今この時間は人通りが少ないということもあって、

彼と遭遇する女性がいなかったことが何よりの救いだった。

間違えたというわけでもない。

彼はここが女子トイレであることを示すマークを認識してから入ったのだ。

そして姿勢も少しおかしい。

彼の姿勢は完全に内股で手で髪の毛を触るしぐさなども完全に女子のそれであった。

ただまあ、この光景を見たものはオカマなのか

性同一性障害なのかもと思うかもしれない。

しかし、当事者の彼に起きた事象はそのどれとも

当てはまることのない異質なものだった。


ただ、一つ驚くべきは彼の冷静さであった。

自分に突如として降りかかってきたこの異変に関して、落ち着いていた。

普通であれば、もっと大騒ぎしそうなものだが、

感情の起伏が乏しいのかそれとも抑え込んでいるのか、

全くもって冷静にこの事態に対応、いや適応しようとし始めた。


「う~ん。これはどう考えてもなっているよね。

とりあえず、この体に一刻も早くなれなきゃね。

あ、女言葉を使っていたらオカマ認定されちゃうかも!

それは絶対にいや!!よし、」


「うん。まあ、どうにかなるだろう。

元に戻るまでは“私”は封印だな。うん、俺、俺」


彼はそう言うと、女子トイレから出ていった。




同時刻

今度は女子トイレにかなり焦りながら入っていった少女がいた。

「うっうっ。やばいやばいやばい。漏れる漏れる!!」

少女の口から洩れたのはそんな情けのない言葉だった。

しかし、焦りに焦っているためなのか、

少女はスカートのファスナーを降ろすのに手間取る。

スカートを脱がなくとももちろんトイレを済ませることはできるのだが、

少女は染みついた癖のようにスカートを完全に脱衣してから

トイレに挑もうとしている。


しかし・・・。

「ふぅふぅ、も、もう無理・・・。こ、こうなったら・・・。」

全然ファスナーが開いてくれないということに加えて、

尿意がもう限界寸前だったこともあり、

少女は自分のプライドを捨てるかのように。というか今更気付いた

とでもいうようにスカートをまくり上げると、パンツを勢いよく降ろした。

そして、そのままの勢いで便座に腰を下ろした。


瞬間、ダムが決壊するかの如く、少女の膀胱も限界を迎えた。

少女の体が小さく痙攣する。

シャーシャー。じょぼじょぼぉぉ

その音はすさまじいものだった。

トイレの外にも聞こえているのではないかと思うほどの音量。

それほどまでにため込んでいたのが恥ずかしかったのか少女は赤面しながら、

視線をあちらこちらへ向けていた。

音姫の存在を知らないのか、その放尿音だけがトイレの中にあった。


「ふぅ~。」

やっとため込んでいたもの全てを出し終えたのか少女は恍惚の表情を浮かべる

しかし、少女はそれで満足したのか、何もせずに立ち上がろうとした。


その瞬間

「ひゃう」

またもや情けない声を上げながら少女は上げかけた腰を便座に戻した。

少女が全部出し切ったと思っていた尿が

立ち上がった拍子に太ももを伝ってきたのだ。

これには少女も驚きの表情を浮かべていた。

というか、いつもしているはずの排尿後の処置を少女は

今知ったかのように、恥ずかしさを前面に出しながら、

トイレットペーパーを適当なサイズで切るとそれを自身の陰部に当てた。


「うっうっ。なんで僕がこんな目にあ、遭うの・・・。」

少女はそう涙を流しながら、後処理をした。




「さぁ、着いたよ。ここが俺の家。いやこれからは君の家でもあるのか。」


(はぁ、これからどうしよう・・・。)


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