第23話:ニート、謝罪する。そして・・・。
俺が寝ている間に彼と茜は仲良くなっていたのか、今も前で話しをしている
しかし、俺は先ほどから胸にのしかかっている
この罪悪感のせいで顔をあげることができずに、
二人の後ろをとぼとぼとついていくしかできなかった。
後悔先に立たず。とはよく言ったもので、遊びに来たのに爆睡をしてしまい、
そのせいで二人の遊ぶ時間を削ってしまった。
おそらく、俺にずっとついていてくれたに違いないのだから。
はぁ・・・・。
ついついため息も出てしまう。
「お~い。瑠美ちゃん。そっちじゃないよぉ」
俺が下を向いて考えている間に二人は先へ行っていたのか、
それとも違う方向へ進みかけていたのか、俺の方へ向かって声をかけてきた。
「あ、本当にごめん!!」
その声にびくっと驚いた俺はやや駆け足になりながら、二人を追いかけた。
「よいしょ。出口にも着いたし、ここで解散しよっか」
ラウンドセカンドから出た途端に茜からそんな提案が持ち上がった。
あたりはもう夕焼けのオレンジ色が照らし、
あと1時間もすればこの辺は暗闇に包まれるだろう。
だから、この茜の提案は正しいものであり、反論する余地などはなかった。
2人は別々の方角が帰路になっているのか、その方向に向かおうとしている。
だけど、2人が帰ってしまうその前に俺には言わなくちゃいけない言葉が残っていた。
彼とはもう再会することはないかもしれない。
だけど、この言葉を言わないまま別れてしまっては、
消えないもやもやが残り続けてしまう。
意を決した。
「ち、ちょっと待って!!」
帰ろうと歩を進めようとした二人に向けて、俺はやや大きめの声を出した。
振り返る二人。
どうしたの?と言わんばかりの心配そうな表情が目に映る。
そして・・・。
「今日は本当にごめんね!!二人とも私のせいで遊ぶ時間を減らしちゃって!!」
精一杯の謝罪を言葉に乗せながら、頭を下げた。
二人の顔は見えない。
だけど、近付いてきてくれる音がした。
「る、瑠美ちゃん・・・。それでさっきから元気ない様子だったのぉ。
大丈夫だよ~。そんな気にしてないし、それに私の方こそごめんね~。
元々、瑠美ちゃんを置いていった私が悪いんだからぁ。」
「そうですよ。瑠美さん、僕の方こそごめんなさい。
友達と一緒に遊びに来ていたのに僕が誘って連れ回してしまいました。
瑠美さんは全然悪くないです!!悪いのは僕なんですから・・・。」
俺が謝罪したはずなのに、なぜか2人からも謝られた。
今の俺に体力がなく、睡魔に抗おうとする意志が足りなかったがために
こんな事になってしまった。
罪悪感が膨れ上がった。
もう頭をあげることができない。
しかし・・・。
「本当はね。今日瑠美ちゃんを誘った時にいつも通り拒否されると思っていたの。
だけど、瑠美ちゃんは嫌な顔を一つもせずに遊びに一緒に来てくれて嬉しかったんだぁ。
だからね。ちょっとはしゃぎすぎちゃって・・・。
あんなことになってしまったの。本当にごめん。
そして今日は一緒に遊んでくれてありがとう♪卓球、すっごく楽しかったよ!!」
茜のその言葉は俺のこの罪悪感を拭い去るために言ってくれた嘘かもしれない。
だけど、俺の中のもやもやとした罪悪感に一筋の明かりが差し込んできたのも確かだった。
俺はほんの少しだけ、顔を二人に向けた。
そこにあった茜の表情は不満などなに一つもなかったと示すかのような満面の笑みで、
その表情を見た途端、もやもやは完全に消え去った。
「二人とも、本当にありがとう。」
謝罪をして、された後に感謝の気持ちを述べることなんて普段はあまりしない。
だけど俺の中にあふれるこの感情を伝えるにはこれしかなかった。